harmen-steenwijck-vanitas

 ヴァニタスはラテン語で「空虚」という意味であり、人生の虚しさ、虚栄の無意味さを静物画で表した寓意作品のことを指します。16~17世紀の北ヨーロッパ(フランドルやネーデルラント)で盛んに描かれ、多大な影響を周囲に与えました。描かれる静物は頭蓋骨、腐りかけの果物、枯れかけの花、時計、楽器などすべて死や空虚の象徴とされるものばかりです。
 日本にも諸行無常という言葉があり、それに似ています。人生はいつかは終わるもの。永遠に変わらないものなどない。というニュアンスです。ただ、ヴァニタスの方はキリスト教の観念があるので、「罪」といったものと結び付けられ、世の中の財産や物欲は罪づくりなだけで、死んでからは徳にならない。地獄に落ちるだけ。虚しい足掻きはやめて神に祈るがいい。という考えの方が近いと思います。
 虚しさの盛り合わせ作品を見ていきましょう。


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「17世紀 ヨハン・フリードリヒ作」
今の世が楽しくても、レモンの皮のように剥がれるのだ・・・。
Grueber,_Johann_Friedrich_-

「17世紀 Franciscus Gysbrechts作」
いずれは朽ち果て、蜘蛛の巣が張るのだ・・・。
gysbrechts_vanitas

「17世紀 フィリップ・ド・シャンパーニュ作」
刻々と時は近づいている・・・。

philippe-de-champaigne-vanitas-1671

「17世紀 ピーテル・クラース作」
ガラスは割れやすく、煙はあっという間に消えてしまう・・・。
pieteclaesz_vanitas

「17世紀 シモン・レナルド・デ・セイント‐アンドレ作」
知識も骨になってしまえば空虚なだけ・・。
vanitas_saint_andre_

「17世紀 シモン・レナルド・デ・セイント‐アンドレ作」
快楽の味もシャボン玉のように弾けてしまうのだ・・・。
Simon_Renard_de_Saint-André_-_Vanitas_(1)

「Vincent van der Vinne 作   17世紀」
名声や物を勝ち得ても、露となって消えてしまう・・・。
Vincent Laurensz Van der Vinne  17th

「Juriaen van Streeck 作  1670年」
甘美な勝利の味も、死と隣り合わせ・・・。
 1670

「Edward Collier 作  1680年頃」
それは王冠も同じこと。王権は直ぐに入れ替わる・・・。
1680s   Edward Collier

「B. Schaak 作(?)  1675-1700年頃」
蝋燭の火はまたたく間に溶けていき、何も残らない・・・。
 Schaak 1675-1700

「ホアン・デ・ヴァルデス・リール作  1660年」
最後の審判の日は近い。知識や権力、勝利を得ても一時的なものだ・・・。
Vanitas 1660  Juan de Valdés Leal

「Henri Leys 作  1869年」
後に残るのは、しゃらこうべ。それもいずれは土に還る。
HENRI JAN AUGUSTYN LEYS  19

「17世紀 アントニオ・デ・ペレーダ作」
ねぇ、この世はヴァニタスだいうことが分かったかしら?
Antonio_de_Pereda_y_Salgado_002

 中世におけるヴァニタスの鑑賞者は「ああ、今が花のように美しくても、いつかは枯れてしまうのだな」などと思い、世の暗黒さに嘆き、死後の楽園に思いを馳せたのかもしれません。でも、たとえこの世が虚しくとも、一生懸命生きていきたいものだと私は思います。

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