崩れゆく聖堂に、朽ち果てた廃墟。白く浮かび上がる彫刻群は白々しく鑑賞者を見据える。燃え上る業火はすべてを焼き払い、世界を灰塵に帰す・・・。これが、モンス・デジデリオの作品イメージです。とにかく崩壊していく建物、廃墟の作品が多く、このような幻想建築を描いた作品は類をみません。作品からはメメント・モリやヴァニタスの哀愁が漂っているように感じます。
17世紀の廃墟の画家、モンス・デジデリオの作品9点をご覧ください。
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「偶像を破壊するユダ王国のアサ王」
左下にいる人物がアサ王でしょうか。彼の右側で聖堂が派手に崩壊しています。
デジデリオの作品は建物重視で、人物がおまけ程度となっています。

「トロイアの炎上」
ギリシア軍に敗北し、倒壊していく町。中央にトロイの木馬らしきものも
ちゃんとあります。

「トロイアの崩壊」
こちらは木馬、ギリシア軍、逃げるトロイア市民などがびっしり描き込まれています。
上の作品より緊迫感が増しているように思えます。

「ソドムとゴモラの崩壊」
快楽により堕落しているとして、神に滅びの炎を与えられた町。
もう町全てが焼け焦げています。

「ソドムの町から逃れるロトとその家族」
炎上している中を逃走中。ロト達は無事に逃げおおせられますが、
ロトの妻は町を振り返った為に塩の柱になってしまいました。

「バベルの塔」
人々は神に近づこうと、天よりも高い塔を作ろうとしたものの、
神が人類の言語を多様化した為に頓挫してしまった。

「聖堂のダヴィデ」
イスラエルの王ダヴィデですが、彼の周囲には朽ち果て気味の像や、
骸骨が取り巻いています。この先のユダヤの苦難を表現しているのでしょうか・・・。

「地獄」
手前にヴィーナスとネプチューンと思われる人物がいて、右に死神と悪魔、
奥には阿鼻叫喚の地獄が繰り広げられています。

左寄り中央のアップ。良い体をした死神さんが個人的に素敵です。

ソドムとゴモラ、トロイアの崩壊など聖書や神話の破滅シーンを繰り返し描いているデジデリオ。この画家は長らく謎の存在でしたが、20世紀に調査した結果、17世紀の画家フランソワ・ド・ノームとディディエ・バッラの共同ペンネームだということが濃厚となりました。一人の画家ではなく、二人で作品を創作していたのです。どこの部分をどちらが描いたなどはよく分かりませんが、バベルの塔が共同作品として一番際立っているようです。
世界の崩壊や破滅は恐ろしいことですが、同時にある種の美しさも感じられます。彼らはそれに魅入られてしまったのではないでしょうか。
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>> 季節風様へ
こんばんは。
紀元前10~6世紀頃、イスラエル王国は北と南に分裂してしまいます。
南はユダ王国と言い、アサ王は三番目の王となります。
その頃は民族の宗教は乱れており、偶像崇拝が蔓延しておりました。
「神を正しく信仰し、ダヴィデのように国を一つにまとめる」と思い立ったアサ王は、偶像崇拝の銅像や神殿を破壊したのです。
「思想が違う」というだけで、壮麗な建物が破壊されるのは哀しいですよね。
年月の風化により廃墟となるのは味が出てより美しくなるのですが、人間が介入すると完膚なきまでに破壊されてしまいますからね…。
第九の演奏会は良い考えだと思います^^(笑)
繁栄が謳歌すればするほど、その衰退は淋しいものになりますね。
廃墟を眺めると、「平家物語」の冒頭、「祇園精舎の鐘の声…(中略)…猛き者も遂には滅びぬ、ひとえに風の前の塵に同じ」という無常なフレーズが思い浮かびます。