
ファン・エイク兄弟は初期ネーデルラント絵画を語る上で、最も重要な存在です。
兄フーベルトと弟ヤンは優れた画家で、特に弟の技術は「神の手を持つ」と称されたほどでした。また、二人は油彩画を発明したとして有名です。当時はテンペラ画が主流で、油絵具は定着率も悪く、あまり用いられていませんでした。テンペラは不透明水彩によく似た感じで、乾きやすく不透明という欠点がありました。ファン・エイク兄弟は油絵具を研究し、改良して絵画に用いました。油彩を薄く重ねてゆき、光源の部分はテンペラで描くという技法があみ出され、それにより、輝くような色彩と美しい透明感を手に入れました。こうして彼らが生み出した油彩技法は他国へ伝播していき、他の画家に使われるようになったのです。
兄フーベルトは志半ばで亡くなってしまいましたが、弟がその後を引き継ぎ、沢山の傑作を生みだしました。絢爛たるファンエイク兄弟の作品をご覧ください。
PR
「ゲントの祭壇画 1425-32年」
ファン・エイク兄弟の最高傑作。兄は完成の日の目を見ずに死去。
弟が後を引き継ぎました。細密な描写に絢爛な装飾、鮮やかな色彩は
油彩画ならでは。シント・バーフ聖堂に飾られています。

「ゲントの祭壇画 中央部分」
神と両脇にマリアとヨハネ。下部は「子羊の礼拝」と言われる描写で、
子羊はキリストを表しています。

「ゲントの祭壇画 翼を畳んだ状態」
中央は「受胎告知」で、天使ガブリエルとマリアが描かれています。
グリザイユ(セピア部分)には聖人が描かれ、その両脇は依頼主です。

「アルノルフィーニ夫妻 1434年」
プーチンそっくりと名高い作品。ジョヴァンニさんとジョヴァンナさんの結婚式。
中央の鏡には仲人である画家本人がちゃっかりと映っています。

「ジョバンニ・アルノルフィーニ 1435年頃」
旦那さん。肖像画でもプーチンによく似ています。銀行家だったそうで、
持っているのは紙幣でしょうか。

「キリスト磔刑と最後の審判 1430-1440年頃」
エイクの卓越した繊細さがよく分かる作品。キリストを嘲笑する人々や
地獄から溢れ出した怪物たちの細かさは圧巻です。
→ 最後の審判の絵画をもっと見たい方はこちら

「ヴァン・デル・パーレの聖母子 1434-36年頃」
パーレさんがエイクに注文し、自らを登場させた作品。
右の白服がパーレで、左右二人は聖人、中央にマリアとキリスト。
守護されている感満載の絵画です。

「宰相二コラ・ロランの聖母子 1435年頃」
ロランさんがエイクに注文し、自らを登場させた作品。
左がロランで、右に聖母マリアとキリスト、天使が描かれています。

洋服の装飾、床の模様などを見ると、本当に細かく描かれています。肌や洋服の質感も、半透明の油彩を何層も重ねた結果生まれたものです。ボス、ブリューゲル、メムリンク、ウェイデン、グリューネヴァルトなど北方ルネサンスのほとんどの巨匠はこの技法を使っています。それだけ美術界では大革命だったのでしょう。
PR
>> 季節風様へ
こんばんは^^
兄弟二人で協力して絵画を描いていたのも良いですよね。
自分の結婚式を最高の画家に描いてもらえ、後年まで傑作だと称えられるなんて、夫妻は幸せですよね。
wikiによると、遠景中央の二人はファン・エイク本人とその助手である可能性があるそうです。
絵画に画家本人を描きこむと「自己主張」と捉えがちになりますが、ファン・エイクのやり方はさり気ないので「素敵な工夫」に感じます^^