Guido RENI; 1640 - コピー

 サロメは1世紀頃に古代パレスチナで生まれた女性で、「ユダヤ古代史」や新約聖書の「福音書」にその存在が書かれています。父はユダヤの王子ヘロデ・ピリッポス、母は王の孫のヘロディア。

 ある日、サロメと母ヘロディアは義父の異母兄弟であるアンティパスの宴へ招かれました。屋敷の牢屋には洗礼者ヨハネがいました。ヘロディアとアンティパスが不倫関係であり、結婚をしようとしていることを糾弾したのが、捕まった原因です。祝宴は楽しげに催され、サロメはそこで極上の舞を踊ります。一説には服を一枚ずつ脱いでいくセクシーな踊りとも言われていますが、その踊りは定かではありません。妖艶な舞に大喜びしたアンティパスは「お前の望むものを褒美に取らせよう」と言います。サロメは間髪入れず「ヨハネの首を」と答えます。

 結婚を非難したヨハネを母アンティパスは強く憎んでおり、娘にそう言うよう仕向けたからです。アンティパスは祝宴の場だったので困りましたが、誓った手前、約束を破る訳にはいきませんでしたので、衛兵にヨハネの首を斬ってくるよう命じました。衛兵は牢屋へ行ってヨハネの首を斬り、盆に載せてサロメに渡しました。
 聖人の首を報酬として願ったサロメは悪女(ファム・ファタール)として中世から近代まで、多くの画家に描かれました。盆を持った姿は共通しますが、首に対する反応は様々で、喜んでいる姿もあれば顔をそむけている姿もあります。
 母の陰謀によって悪女にされてしまったサロメの姿を紹介します。一部閲覧注意です。


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「グイド・レーニ作 17世紀」
自信に満ちた様子でヨハネの髪を掴むサロメ。
悪女ぶりがにじみ出ています。
Guido RENI; 1640

「ティツィアーノ・ヴェリッチオ作 16世紀」
伏し目がちでためらうように首を見ていますが、口元は少し微笑んで
いるようにみえます。清楚に見えてあくどい女性な感じ。
ティツィアーノ「洗礼者ヨハネの首を持つサロメ」、1515年頃

「カレル・ファブリティウス作 17世紀」
けばけばしい飾りで、傲慢なクレーマーのように見えるサロメ。
衛兵がみすぼらしく、情けなく見えます。
Carel FABRITIUS

「ハンス・メムリンク作 15世紀」
異時同図法で描かれた作品。左の建物でサロメ達が祝宴をし、
手前で斬首しています。切り口がリアルです。
→ メムリンクの絵画をもっと見たい方はこちら
Hans MEMLING; 1474-79

「Fernando Gallego作 15世紀」
閲覧注意状態なヨハネ。首を嬉々として受け取ろうとしているのは、
サロメなのか、母なのか・・・。
Fernando Gallego

「モラッツィオーネ作 16世紀」
この首なぁに?といった感じのサロメ。純朴さが出ておりますが、
生首の生々しさ感は半端ありません。
 1620)

「ベルナルディーノ・ルイーニ作 16世紀」
ダヴィンチちっくなヨハネに、目を背けて微笑むサロメ。
ミステリアス風のようですが、「興味ないわ」と言った感じに見えます。
 1527

アンドレア・ソラーリ作 16世紀」
ダヴィンチちっくなサロメに、禿げそうなヨハネ。
何を考えているか分からないミステリアス感出てます。

Andrea Solari (1460–1522)

「Andrea Solari 作  1516-17年」
髪を掴んだ男の手だけを描いて、ヨハネの首を中心にし、それに
反応するサロメを描く。この構図の絵画が流行ったんでしょうかね。
SOLARIO, Andrea  1516-07

「ギュスターヴ・モロー作 19世紀」
サロメといったらモローは外せません。彼は何枚も描いています。
空中浮遊した斬新なヨハネは象徴主義ならでは。
 1874-76

 昔から女性は誕生と死を司る者として、崇拝と排斥を繰り返してきました。女性は男性にはない秘密性、幻想性を持ち、可憐な表情の裏にどす黒い闇を覗かせると考えられ、男性を虜にしてきました。サロメは女性の複雑さを顕現した存在のように思えます。そのイメージを画家がエスカレートさせ、妖艶で男を平気で殺すような悪女サロメを生み出してしまったのではないでしょうか。

→ 男を騙して殺す勇敢な女性ユディトの絵画を見たい方はこちら


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