Jean Roux,1718-1720

  オルフェウスはギリシャ神話に登場する吟遊詩人です。竪琴の技術が非常に優れており、彼が竪琴を演奏すると動物たちだけではなく、木や石までも耳を傾けたと言われています。
 ある日、彼の妻エウリュディケが毒蛇に噛まれて死んでしまいます。オルフェウスは嘆き悲しみ、冥府へ下って冥界の王ハデスと妃に、妻を返してくれるよう懇願します。彼の悲しみと竪琴の調べに心を打たれた二人は、それを承諾します。ただし「冥界を出る間は、絶対に後ろを振り向いてはならない」と条件を付けて。オルフェウスは妻の手を引いて冥界を歩き、振り向きたいという欲求を必死にこらえました。けれど、後ろを向くなと言われたら振り向いてしまうのが人の常。オルフェウスはついに欲望に負け、妻の方を向いてしまいます。その瞬間が、エウリュディケの姿を見た最期になったのでした。
 この劇的なシーンは画家の創作意欲をあおり、多大な作品を生み出しています。その作品たちをご覧ください。

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「エドワード・ポインター作  1862年」
「目をつむっているんだ。行くぞ」「恐いわ、オルフェウス」
Edward_Poynter_-_Orpheus_and_Eurydice

「Gaetano Gandolfi 作 18世紀」
「もう少しの辛抱だ」「もう大丈夫かしら」 振り向くどころか寄りそってます。
Gaetano Gandolfi - Orpheus and Eurydice

「Jean Roux 作  1718年頃」
「ちょっとだけなら・・・」 夫より妻の方ががっつり振り向いてます。
Jean Roux, Orphée quitte les enfers avec Eurydice, 1718-1720,

「Carlo Cignani 作  17世紀後半‐18世紀前半」
「エウリュディケ!」「きゃっ!?」 冥界の住人達がやってきました。
Carlo Cignani - Orpheus and Eurydice_Jpeg

「Michel Martin Drolling 作  1820年」
「あぁー!エウリュディケ!」「約束だからね。冥界へ戻ってもらうよ」
何故か使者の神ヘルメスがさらっています。文献にはないのですが。
Michel Martin Drolling, Orphée et Eurydice, 1820

「Elsie Russell 作  1994年」
「行くなぁー!」「きゃー!」「オルフェウス、もう諦めるんだ!」
ヘルメスパート2。今度はオルフェウスを引き留めています。
文献にないことをしまくりです。それにしても全裸は、なぁ・・・。
Elsie Russell, The Loss of Eurydice, 1994

「Jacopo Vignali 作  1625年頃」
珍しいちょびヒゲのオルフェウス。
仲よく脱出しかけていますが、背後から悪魔の影が・・・。
Jacopo_Vignali_-_Orphée_et_Eurydice

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1636年頃」
出発したばかりの二人。横目で見たくて仕方がないオルフェウスに、
謎の笑みを浮かべるエウリュディケさん。不気味です・・・。
P_P Rubens - Orpheus and Eurydice 1636-38 Prado

「ヤン・ブリューゲル(父)作  1594年」
悲しい音色を奏でているシーンですが、画面の半分以上が怪物。
オルフェウス物語 < 怪物 と言った感じです。
Jan Brueghel The Elder -1594

 画家の方はストーリーにこだわらず、結構自由に描いていることが分かりました。ヘルメスはオルフェウスがアルゴ遠征に行った際、サポートする側で登場するんですけど、冥界下りの物語で描かれるのは何故でしょう。絵柄がいいから?トリックスター的性質だから? うーん・・・不思議です。
 物語の流れから行くと、最初のポインターさんが一番準じていそうです。ああいった感じで一歩一歩、一生懸命歩んでいったのに、最後の最後で無に帰してしまう。ありがちな物語ですけれど、人生に置き換えるとかなり深い主題を含んでいるように思えます。
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