Peter Paul Rubens, Prometheus Bound, 1618 - コピー

 プロメテウスはギリシャ神話に登場するティタン族の男神です。
 彼は主神ゼウスの命令に背いて神々の火を盗み、人類に与えました。それによって人々は飛躍的に文明を伸ばしたものの、ゼウスは怒り狂い、プロメテウスを捕まえてカウカーソス山脈に張り付けにしました。山脈には獰猛な鷲がおり、不死であるプロメテウスは生きながらにして肝臓をついばまれるという責め苦を受けました。夜中には傷口が再生し、また同じ拷問が繰り返されるのです。残酷な罰はヘラクレスが救出するまで続けられ、プロメテウスは毎日想像を絶する痛みを受け続けていたのでした。
 画家たちはその残酷なシーンを描き、プロメテウスの苦悶する表情、よじれた身体で痛みを表現しようとしました。見るだけで痛そうな作品をご紹介いたします。一部閲覧注意です。


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「ピーテル・パウル・ルーベンス作   1618年」
喰われる内臓が肝臓オンリーというところが、ゼウスの意地の悪さが
出ているような。鷲がプロメテウスの頭にとまり、肝臓をつんつん。
Peter Paul Rubens, Prometheus Bound, 1618


「カラヴァッジョの追随者   17-18世紀?」
あれ、肝臓ってそこ?というツッコミは置いておきましょう。
歪んだ表情、握り絞められた手が痛みを最大限に表現しています。
Prometheus Attributed to Caravaggio

「ルカ・ジョルダーノ作  1650-60年」
なかなか可愛らしいサイズの鷲。
わき腹をちょこちょこ突っついています。それにしてもきわどいポーズ。
Prometheus, by Luca Giordano (1650-60)

「ルカ・ジョルダーノ作  1660年頃」
ルカさん二枚目。
今回は飛来してきたばかりの鷲と、緊張感が漂うプロメテウス。
Prometheus Bound, by Luca Giordano (~1660)

「ルカ・ジョルダーノ作  1666年」
ルカさん三枚目。プロメテウスの顔が可愛らしく見えるような・・・。
首を伸ばした鷲に腹を大穴開けられています。
Prometheus, by Luca Giordano (1666)

「グレゴリオ ・ マルティネス作   1590年」
ギリシアの美青年風のプロメテウスに忍び寄る黒い影。
どのプロメテウスも布を申し訳程度に乗せていて、
肉体美が強調されているような気がします。
Gregorio Martinez - Prometheus bound

「Jean Louis Cesar Lair 作  1819年」 
ギリシアの美青年風のプロメテウスに忍び寄る黒い影、パート2。
神話の再現というより、シチュエーションのセクシーさを表現していそうです。
The Torture of Prometheus, by Jean-Louis-Cesar Lair (1819)

「Gioacchino Assereto 作  17世紀前半-中盤」
痛みに身をよじるプロメテウスですが、セクシーさが前面に出ていて、
こちらも聖セバスティアヌス現象が起きているような気がします。
色々ときわどすぎるでしょうよ、この絵画。
  1600-1649

「Theodoor Rombouts 作  17世紀」
以下から肉体美ではなく、グロくなります。
ぎゃぁーー!!という悲鳴が伝わってきそうな作品。
肉の引っぱり加減が相当痛そうに見えます。
Theodoor_Rombouts_(1597-1637)

「ヤーコブ・ヨルダーンス作  1640年」
プロメテウスの顔が非常にやばいことになっています。
みぞおちからこぼれ出る肝臓が地味に恐い。
背後で飄々とした様相で見ているヘルメスさんがもっと恐い。
Jacob Jordaens Prometheus Bound (1640)

「サルバトール・ローザ作  1648-50年」
肝臓どころじゃない!鷲さん内臓ひっぱり出しすぎでしょ!
The Punishment of Prometheus, Salvator Rosa 1648 - 1650,

 プロメテウスはティタン族の巨人の為か、おじさんという印象があるものの、後年の作品になってくるにつれてセクシーな肉体美路線のものが多くなっているように感じます。それはキリスト教の聖人、聖セバスティアヌスも同じことが言えます。彼は張り付けにされて矢を射られ、その物語の絵画が段々とセクシーになっていったので、状況は違えどもシチュエーションは両者よく似ているように思います。グロ路線へ行くか、肉体美路線へ行くか。画家の想像力の限り、プロメテウスは様々に描かれます。
 罰を受ける彼に、更に恐ろしい現実があるのかもしれません。

→ 聖セバスティアヌスについて知りたい方はこちら



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