1312-1322) Origine

 ヨナは旧約聖書「ヨナ書」に登場するユダヤの預言者です。
 ヨナは強情張りの性格で、神に「町ニネヴェの人々の罪を悔い改めるよう言いなさい」と告げられても、無視して海へ出てしまいます。船に乗ったヨナは大嵐にあい、船員らに海中に放り投げられ、巨大魚(クジラともされる)に呑み込まれてしまいました。ヨナは反省し、魚の腹の中で神へ懺悔します。
 神は仕方がないな、と魚から彼を吐き出させました。ヨナはニネヴェへ行って、キリスト教へ帰依するよう町人へ言いました。すると、王も含めてあっさりと帰依し、罪を悔い改めたのです。神は町の人々の罪を許しました。ヨナはそれが信じられずに、どうして町に災いを起こさないのか問い詰めます。神はヨナに「たとえ罪があった所だとしても、人間や家畜を惜しまずにはいられぬ」と、説明しました。
 以上がヨナ書の大まかな概要ですが、中世の画家たちはヨナを表すために大魚に食われた場面ばかりを描きました。残っている挿絵は多く、そのほとんどが大魚=ヨナ状態になっています。
 魚の怪物の口から生えているように見えるシュールなヨナの姿をご覧ください。


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「ピーテル・ラストマン作  1621年」
うわあぁ~のみ込まれる~!神の怒りにより、大魚のお腹の中へ。
Pieter Lastman - Jonah and the Whale

「ヤン・ブリューゲル(父)作  1600年」
大魚から祈りながら脱出をする場面。魚のとぼけた表情が可愛いです。
Jan Brueghel the Elder 1600

「1400-1450年頃の絵画?」
これらの絵は大魚に呑み込まれるというシーンと分かりますが、
中世時代の挿絵では、ヨナの姿がシュールなものに・・・。
 1312-1322) Origine

「中世時代の写本」
船の乗組員から落とされているヨナ。
まだ聖書の物語を描こうという強い意思が伝わります。
jonas

「旧約聖書の写本の一部」
頭からにゅるりと魚にのみ込まれようとしているヨナ。
このサイズでは丸のみは難しいような。
 240r

「中世の写本一部」
手前はニネヴェの王と町人でしょうか。
奥の方で乗組員が魚の餌付けをしています。頭からごっそりと食われとる。
jonas2

「フランス国立図書館蔵書の写本」
ホホジロザメのような魚から頑張って片足を出そうとしているヨナ。
天上の神が呆れたような表情をしています。
Bibliothèque nationale de France

「時祷書の一部」
魚から脱出をしたら生まれたままの姿になってしまったヨナ。
 5v

「14世紀の中世写本」
巨大アロワナに完全にかじられちゃってます。
ヨナと魚が段々と一体化し始めております。
jonas 1360-1365

「カロリング朝の中世写本」
魚を越えてドラゴンみたいなものに食われています。
このままごっくんされたら、消化されてしまいそうです。
Carolingian miniature folio-147v

「15世紀の中世写本」
不機嫌そうなきもかわいい魚からにょっこりとヨナが。
頭上に神がいてヨナは祈っていますが、神はまだお怒りにみえます。
jonas 15th century

「中世写本」
この神妙な表情とヨガのようなポーズが個人的にツボ。
Jonah 4 by tony harrison, via Flickr

「聖書の写本」
クロール泳ぎをしているヨナ。すでに物語を超越し、新たな
ストーリーの開拓を!きっとニネヴェまでクロールするんですね。
 351v – Biblia Porta

「フランスの14-15世紀の写本」
魚にくわえられながら海上スキー!
魚を操縦する方法を完全にマスターし、高速でニネヴェへ行けるかも!
Bible historiale (Paris, 14th-15th century)

「中世時代の写本」
深海魚のラブカのような魚から半身を出してニネヴェへ到着。
中世の人が想像で考えた怪魚が実際にいると思うと、凄いですよね。
jonas 4

 ヨナ書は短い話ですが、ニネヴェの町の改心だったり、とうごまの木の話だったりと大魚以外にも話があります。それなのに古典的な絵のヨナを調べてみたら、魚に食われたものばかり。よほど大魚に呑み込まれた場面が衝撃的だったのでしょうか。それかアトリビュートとして使いやすいからでしょうか。また、中世の人は構成よりも一目でどんな聖人が分かるかを重視していたから、ヨナ+大魚=ヨナ魚になってしまったと考えられます。
中世の絵画で大魚に食われた人がいたら「あ、ヨナだな」と思っていただければ間違いないです。


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