Robert Campin, The Master of Flemalle, 1400 - コピー

 キリスト教の聖母子像の中で、母マリアが幼児キリストに授乳している絵画があります。
 その多くは慈愛に溢れ、母と子のほほえましいものであったり、神秘的な雰囲気をたたえているものであったりしますが、たまに「あれ、女性の胸ってこんな位置だっけ?」と思うものがあります。胸を象徴として捉えているか、リアルじゃいかん!という中世時代の禁欲的な考えなのか。
 神聖な聖母子像だけど、女性の胸がなんだか違うという作品をご覧ください。


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「Andrea Solario 作  16世紀」
ダ・ヴィンチを思わせる顔立ちのマリア様が、立ち膝をしている
キリストに授乳中。まだ納得できる位置にあります。
Andrea Solario (Italian Renaissance painter, 1495-1524)

「Bernardino Fungai 作  15世紀後半-16世紀前半」
聖人二人を背後にして、キリストはがっちりカメラ目線。
人体は半立体的ですが、お乳は普通の位置にありそうです。
FUNGAI BERNARDINO La Madonna

「ハンス・メムリンク作  15世紀」
北方ルネサンス特有の輝くような色彩で、美しい聖母子像です。
ですが・・・ちょっとずれているように見えるのは気のせいでしょうか。
Hans Memling 1435-1494 Virgin and Child

「ヨース・ファン・クレーフェ作  16世紀」
クラーナハを思わせる様相のマリア様。おじさんや百合、
手の描写は素晴らしいのに、胸はこんな位置に!
1540)

「Maestro della Maddalena 作  13世紀頃」
1200年頃の中世絵画にしては、あまりずれていないように思います。
キリストの顔も凛々しく、神聖な感じが出ております。
Maestro della Leggenda della Maddalena

「ロベルト・カンピン作  1400年」
他の方よりふくよかで描写はしっかりとしているものの、
形は象徴的で、位置もずれております。
Robert Campin, The Master of Flemalle, 1400

「ディルク・ボウツの工房作  15世紀頃」
これは、位置うんぬんより小さいような・・・。左右のバランスやいかに。
Workshop of Dirk Bouts

「ジョヴァンニ・アントーニオ・ボルトラッフィオ作  15-16世紀」
服が縦に割れているのか、それともお団子状になっているのか・・・。
摩訶不思議な胸となっております。
Giovanni Antonio Boltraffio  Madonna and Child 15-16

「ヨース・ファン・クレーフェ作  16世紀」
これは胸うんぬんよりも、キリストの顔が険しすぎます。
将来強面のダークサイドの人になりそうです。
Joos van Cleve, Madonna and Child

「Donato de' Bardi 作  1435-40年」
これは胸うんぬんよりも、マリア様の顔が険しすぎます。
キリストを見下す目が冷え切っています。
Donato de' Bardi Madonna del Latte 1435-40 ,

 色々と品の無いことを言ってしまい失礼しました。
 身体のバランス、洋服のしわや手の表現などは卓越しているのに、女性の胸だけが抽象的。中世~初期ルネサンスに見られたこの現象は、やはりキリスト教の禁欲に関係していそうです。母と子を顕著に表す授乳というシーンを描きたいけれど、あまりリアルに描いたら教義に反してしまう。その矛盾を解決するために、こういった手段を用いたように思われます。

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