
キリスト教の聖母子像の中で、母マリアが幼児キリストに授乳している絵画があります。
その多くは慈愛に溢れ、母と子のほほえましいものであったり、神秘的な雰囲気をたたえているものであったりしますが、たまに「あれ、女性の胸ってこんな位置だっけ?」と思うものがあります。胸を象徴として捉えているか、リアルじゃいかん!という中世時代の禁欲的な考えなのか。
神聖な聖母子像だけど、女性の胸がなんだか違うという作品をご覧ください。
PR
「Andrea Solario 作 16世紀」
ダ・ヴィンチを思わせる顔立ちのマリア様が、立ち膝をしている
キリストに授乳中。まだ納得できる位置にあります。

「Bernardino Fungai 作 15世紀後半-16世紀前半」
聖人二人を背後にして、キリストはがっちりカメラ目線。
人体は半立体的ですが、お乳は普通の位置にありそうです。

「ハンス・メムリンク作 15世紀」
北方ルネサンス特有の輝くような色彩で、美しい聖母子像です。
ですが・・・ちょっとずれているように見えるのは気のせいでしょうか。

「ヨース・ファン・クレーフェ作 16世紀」
クラーナハを思わせる様相のマリア様。おじさんや百合、
手の描写は素晴らしいのに、胸はこんな位置に!

「Maestro della Maddalena 作 13世紀頃」
1200年頃の中世絵画にしては、あまりずれていないように思います。
キリストの顔も凛々しく、神聖な感じが出ております。

「ロベルト・カンピン作 1400年」
他の方よりふくよかで描写はしっかりとしているものの、
形は象徴的で、位置もずれております。

「ディルク・ボウツの工房作 15世紀頃」
これは、位置うんぬんより小さいような・・・。左右のバランスやいかに。

「ジョヴァンニ・アントーニオ・ボルトラッフィオ作 15-16世紀」
服が縦に割れているのか、それともお団子状になっているのか・・・。
摩訶不思議な胸となっております。

「ヨース・ファン・クレーフェ作 16世紀」
これは胸うんぬんよりも、キリストの顔が険しすぎます。
将来強面のダークサイドの人になりそうです。

「Donato de' Bardi 作 1435-40年」
これは胸うんぬんよりも、マリア様の顔が険しすぎます。
キリストを見下す目が冷え切っています。

色々と品の無いことを言ってしまい失礼しました。
身体のバランス、洋服のしわや手の表現などは卓越しているのに、女性の胸だけが抽象的。中世~初期ルネサンスに見られたこの現象は、やはりキリスト教の禁欲に関係していそうです。母と子を顕著に表す授乳というシーンを描きたいけれど、あまりリアルに描いたら教義に反してしまう。その矛盾を解決するために、こういった手段を用いたように思われます。
→ 美しい神秘的な聖母子像を見たい方はこちら
→ どうしてこうなった?と思える聖母子像を見たい方はこちら
PR
>> オバタケイコ様へ
こんばんは^^
教義を表現しようと抽象と写実の狭間で揺れ動いた結果、胸の位置が変わってしまうのは興味深いですよね。
幼子イエスやマリア様のお顔が厳しい作品があるのも、人から卓越している神々しさを表現する為であると思いますが、現代の私達からしたら「あくどい顔をしている…」と感じてしまうのも面白いです。
美しさと神々しさとおかしなところを併せ持つ作品。
だから私は中世ルネサンスが好きなのだと思います(笑)