怖い絵展2

  「怖い絵」展は2017年の夏~冬の間、兵庫と東京の二か所の美術館で開催されます。兵庫県立美術館は7月22日~9月18日、上野の森美術館は10月7日~12月17日の間に展示があります。
 「恐怖の絵画」を題材とした大ベストセラー本「怖い絵」は、ドイツ文学者である中野京子氏によって書かれ、大きな反響を呼びました。本書を読んだ事がある方は多いのではないでしょうか。かくなる私も読んだ一人です。「怖い絵」第一巻が発売されたのが2007年で、今年で10年目となるので、その記念として展覧会が催されることになったそうです。概要を見ていきましょう!


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上野の森美術館のチラシ。
男達を誘惑し溺れさせるセイレーンの絵画が、今回の展覧会のメイン。
怖い絵展


「ハーバード・ジェイムズ・ドレイパー作  ユリシーズとセイレーン」
ギリシア神話より。セイレーンの歌を聴いた者は溺死すると言われていますが、
英雄オデュッセウスは自らをマストに括りつけさせ、歌を聴いたのでした。
→ オデュッセウスの絵画をもっと見たい方はこちら
ハーバード

 この作品以外、どの絵画がやって来るのかはまだ分かっていません。
 ただ、視覚を通して恐怖が伝わる作品、歴史的背景や状況を知って始めて怖さを覚える作品など、様々な「恐怖」を存分に伝えるような展覧会になると思います。時代や国、様式はバラバラでやってきそうです。
どんな作品がやって来るのかが楽しみです!私好みの作品が来たらいいなぁ~と思います(笑)
 公式HPの更新を待って、またお伝えしたいと思います。


4月11日にチラシと作品が一部紹介されました!



やって来る絵画と版画は、約80点。そのどれもが「恐怖」をテーマにしています。ウィリアム・ターナーやギュスターヴ・モロー、ポール・セザンヌなどの近代の巨匠の作品もやって来るそうです!作品一つ一つに説明がされ、恐怖が紐解かれます。



「ポール・ドラローシュ作 ジェーン・グレイの処刑 19世紀」
策略によってイギリスの女王として祭り上げられた彼女ですが、
わずか9日で廃位に追い込まれ、ロンドン塔に幽閉され、
最期には処刑されてしまいます。政治の翻弄によって殺された、
彼女の身の潔白を訴えるかのような作品です。
→ ジェーン・グレイについての絵画をもっと見たい方はこちら
ジェーン・グレイの処刑

「ウィリアム・ターナー作  ドルバダーン城  1800年」
こちら一見すると普通の風景画に見えますが、どこが恐怖なのでしょうか。
私には分からないので、展覧会の答えを楽しみにします。
ウィリアム・ターナー

兵庫会場のチケットの先行予約も始まりました。
ぜひ予約するべしです!

→  <「怖い絵」展公式HPはこちら>


新 怖い絵の書籍紹介


新怖い絵

 一番最新である「新 怖い絵」の絵画を紹介したいと思います。これらの作品は残念ながら展覧会には来ないと思いますが、似たようなニュアンスの作品はやってくるかもしれません。
 「新 怖い絵」は時代もモチーフも様々な絵画、全20作品が掲載されています。この本の中から、10作品を選んで以下に載せさせていただきます。(順番は入れ替えがあります)



「ジョン・エヴァレット・ミレイ作  オフィーリア  1851-2年」
シェイクスピアの戯曲「ハムレット」より。父を殺されたオフィーリアは
気が狂い、川に落ちて亡くなってしまいます。
この絵画にはいくつもの象徴が潜んでいます。
ミレイ

「ジロデ・トリオゾン作  眠るエンデュミオン 1791年」
ギリシア神話に登場する人間エンデュミオンは、月の女神セレーネ―
に好意を抱かれます。ですが人間の寿命は短く、神は永遠。
そこで、月の女神が出した答えが・・・。
ジロデ

「ジャック・ルイ・ダヴィッド作 テルモピュライのレオニダス 19世紀前半」
テルモピュライの戦いはレオニダス王率いるスパルタと、
アケメネス朝ペルシアとの戦争で、映画「300(スリーハンドレッド)」の
モデルにもなりました。
ダヴィッド

「バルデス・レアル作  世の栄光の終わり」
教皇も権力者も貧者も、誰もが平等に命を落とす。
世の虚しさや死を想う用語、ヴァニタスメメント・モリを表した作品。
バルデス=レアル

「エリー・ドローネー作  ローマのペスト 19世紀」
黒死病と呼ばれる病気「ペスト」はヨーロッパを覆いつくしました。
栄華を誇ったローマも例外ではなく、恐ろしいペストの死に晒されたのです。
→ ペストの絵画をもっと見たい方はこちら
《ローマのペスト》エリー・ドローネー (1828-91) 1869年

「ウィリアム・アドルフ・ブクロー作  ダンテとヴェルギリウス 1850年」
見るからに恐ろしい絵。二人の人間が争い、喉笛に喰いついています。
こちらはダンテ・アリギエーリの「神曲」のシーンを描いた絵画。
ブクロー

「カラヴァッジョ作   洗礼者ヨハネの斬首  17世紀前半」
悪女サロメがヨハネの首が欲しいと王に言ったので、
ヨハネは斬首されることとなりました。首を斬られる直前の光景。
→ サロメの絵画をもっと見たい方はこちら
カラヴァッジョ

「ジャン・フランソワ・ミレー作  落穂拾い  1857年」
貧しい方々が田畑に僅かに残った穂を拾おうとしています。
貧者はこうでもしなければ、日々の暮らしができなかったのでしょう。
ミレー

「ジャン・オノレ・フラゴナール作  ぶらんこ  1767年」
一見平和そうで可愛らしい絵ですが、その背後にはどろどろとした
関係が・・・。男女の問題って恐ろしいですよね。
フラゴナール

「フリーダ・カーロ作  折れた背骨  1944年」
事故にあって全身大怪我を負った、画家本人の無念さを描いた作品。
繋がっている眉毛がどうしても気になってしまう・・・。
フリーダ・カーロ

 絵画の裏には、悲しい、不気味な、恐ろしい、背筋も凍る背景が隠れています。楽しい絵画もいいですが、恐怖に染められた絵画も特有の魅力があります。私もその怪しい美しさに魅入られてしまった一人です。
 興味が湧きましたら、ぜひ覗いてみて下さい。



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