Lorenzo Lotto 1549 -

 ヴェローナの聖ペテロは13世紀に殉教した聖人です。
 イタリアのヴェローナ出身の聖ペテロはペトルス、ピエトロとも呼ばれ、ドミニコ会の修道士でした。ある日、彼が仲間のドミニクと共にミラノで布教をしていると、背後から暗殺者たちが現れました。首謀者はカリーノ・ピエトロ・ダ・バルサモで、異端者だった彼はカトリック教の者を憎んでいたのです。暗殺者たちはドミニクを攻撃し、ペテロの胸にナイフを突き刺し、上頭部に鉈(斧という説も)を一撃させました。ペテロはドミニクの膝の上に倒れ、「私は神を信じます」と血文字で書きながら息絶えたとされています。彼の遺体は教会へ運ばれ、多くの奇跡が起こりました。その一年後にペテロは列聖されました。
 聖ペテロのアトリビュートは頭の鉈と、胸の短剣。暗殺された武器そのままが彼の持物になってしまいました。悲惨な殺された方をした為に、シュールになってしまった聖人の姿をご覧ください。
→ アトリビュートについて詳しく知りたい方はこちら


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「Bernardino da Asola 派の画家作  16世紀」
ペテロの胸を今にも刺そうとしている暗殺者。
彼は頭上を仰ぎ、天界へ向けて手を伸ばしています。
Attributed to Bernardino da Asola  16

「Giovanni Gerolamo Savoldo 作  1530-35年」
背後から現れた暗殺者が、両手に持った武器を今にも振ろうとしています。
修道衣の黒と、赤い上着の対比が光る作品。
Gerolamo Savoldo 1530-35

「ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ作  15世紀前半」
頭にぐさっ。
中世の絵画は動きが様式的で、かなりシュールに見えます。
Gentile da Fabriano (1370–1427)

「作者不詳 イコン」
そうしたら、こうなっちゃいました。
立派な武器が、頭と胸に見事に突き刺さっています。
st+peter+of+verona

「ロレンツォ・ロット作   1503年」
聖母子の前にだって、この姿で現れます。
至極真面目な表情をしているだけに、シュールさは倍増です。
st+peter+of+verona 2

「Ambrosio Bergognone 作  1494年頃」
お顔は神妙なのに・・・。鉈が大きすぎる。
こんなの振り下ろされたら、血文字書く暇もなく即死状態になりそう。
Ambrosio Bergognone (circa 1494)

「Andrea da Murano 作  1475年」
左手に持っているのは棕櫚(シュロ)。殉教者のアトリビュートです。
棕櫚を持っている事によって、私は信仰の為に命を落としました。と
鑑賞者に伝えているのです。
Andrea da Murano 1475

「Pedro Berruguete 作  1493年」
ペテロ=武器二つという姿は様式化され、鉈がとってつけたようになってきました。
このペテロさんは背中から刺されたようで、刃が突き出ています。
(Pedro Berruguete - 1493

「ロレンツィオ・ロット作  1549年」
こちらも凶器というより、アクセサリーにみえるアトリビュート。
誰なのかが鑑賞者に伝わればいいわけで、
生々しい描写を控えたのでしょうか。
Lorenzo Lotto 1549

「ヴィットーレ・カルパッチョ作  16世紀前半」
このペテロさんも刃物アクセサリー状態になっています。
お顔は凛々しいですが、刃物が気になって仕方がありません。
Vittore Carpaccio

「カルロ・クリヴェッリ作 一部分 1476年」
ペテロさん、白目、白目っ!
st peter of verona

 一神教のキリスト教ですが、列聖に数えられている聖人はかなりの数にのぼります。宗派によって認められている聖人は違うものの、その数は一万人以上と推定されています。それに、2016年10月に新たに7名が聖人として認定されているので、聖人の数は増加の一途を辿っていくように思われます。(参考元サイト)
 そうすると、絵画で誰が描かれているのか分からなくなりそうです。聖ペテロのような個性的なアトリビュートがあった方が、目立って良いかもしれませんね。聖人の世界もなかなか奥深いです。



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