Throne of the Lord 1400  vellum - コピー

 「ヨハネの黙示録」は新約聖書の最後に載っている物語で、人類の終末が語られています。
 ある日、ヨハネはパトモス島で神の預言を受け、今から話すことすべてを書き留め、後世に残しなさいと言われます。七つの教会へメッセージを送り、神の御座で七つの封印が解かれ、世界は死に覆いつくされる。天使たちがラッパを吹き、死の鉢を空け、千年王国の後に悪魔サタンが現れる。そして、全人類は最後の審判にかけられる・・・。
 ヨハネの黙示録の内容は恐ろしいもので、人類の終わりを語るものでした。中世ルネサンス時代の人々はこの物語を事実だと信じ、ちょうど節目の1000年の頃には天変地異、神の裁きが起こると思って恐慌に陥ってしまった人もいました。
 ギリシャ語では「アポカリプス」と言い、黙示録は現在でもよく知られています。そんなヨハネの黙示録の物語を18点の絵画を交えながら見ていきましょう。


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「ヒエロニムス・ボス作  1488年以降」
ヨハネは神に「これから見ることを記述しなさい」と言われます。
神の姿は白い髪、目は炎のよう、足は真鍮、声は洪水、右手に7つ星を持ち、
口から鋭い剣が飛び出ており、顔は太陽のように照り輝いていたとか。
比喩表現だとしても凄まじい御姿!
patmos bosch

「パリ国立図書館の写本挿絵  1400年頃」
7つの教会にメッセージを残した後、神はヨハネに神の御座の
幻視を見せました。四体の生物と24体の長老を従わせ、
神は玉座に座っていました。その手には7つの封印をした巻物が。
Throne of the Lord 1400  vellum

「ヴィクトル・ヴァスネツォフ作  1887年」
神は一つずつ封印を解いていきます。順番に白、赤、黒、青と
馬に乗った者が現れ、彼等は世の人々を順に殺していきました。
四番目の青い者は「死」そのもので、黄泉を連れていました。
ヴィクトル・ヴァスネツォフ作(1887年)

「Matthias Gerung 作  1500年頃」
第五の封印が解かれた時、信仰の為に亡くなった殉教者が
現われ、「我々を殺めた者に復讐を」と告げます。殉教者は
白い衣が与えられ、世界は天災が起こり始めます。
matthias gerung 1500 5seal

「Matthias Gerung 作  1500年頃」
敬虔なイスラエルの子らは額に神の刻印を押され、天災から
逃れることができました。彼等はもう飢えることも乾くこともなく、
御座の前での平和を約束されました。
matthias gerung 1500

「Matthias Gerung 作  1500年頃」
今度は七名の天使が順番にラッパを吹いていきます。
地上の三分の一の木が焼け、海と地上の生物が死に、
星々が暗くなります。
Ottheinrich_Folio

「Escorial Beatus 写本  10世紀頃」
第五のラッパの災厄は「怪物いなご」が出陣し、五か月間神の印を
持っていない人々を苦しめるということ。
さそりの尾でぐさりと人間を刺して、半殺しの目に合わせるとか・・・。
The Escorial Beatus is a 10th

「フランスの彩色写本の挿絵  1220-70年頃」
いなごは馬のような姿で、頭には金の冠を付け、人間の顔をしており、
髪は女のように長く、歯は獅子のようで、羽音は戦車の響きのよう。
更に、その尾にはサソリのような尾があるそう。
どこら辺がいなごなんだ!?
Fifth trumpet of the Apocalypse, France 1220-70

「Miguel Cabrera 作  18世紀」
第七のラッパの後、太陽を着て月に乗った女が出現しました。
彼女は子を宿しておりましたが、横から9つの頭を持った
赤い竜が現れます。女は男の子を無事に産み、赤い竜はミカエルに
よって地の底へ投げ落とされます。
Miguel Cabrera 18c

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1623-24年」
今度は角が十本、頭が七つあって666の刻印を持つ獣が現れ、
世界を支配しようとします。獣は多くの国を制圧し、人々の信仰を
集めます。神は獣と闇に落ちた人々に罰を与えることに決めます。
Rubens woman of apocalypse

「フランスの彩色写本の挿絵  中世時代」
赤い竜と7つ頭の獣。竜は「俺の代わりに世を支配してくれ!」
と言った感じに、獣に自らの力と権威をすべて渡したとされています。
二人分の力を手に入れ、最強の獣になりました。
manuscript of The Apocalypse, France,

「彩色写本の挿絵  中世時代」
獣は悪しき印を持った人間とも考えられ、「アンチキリスト」という
偽りの指導者が世界を掌握し、人類を闇に陥れるとされています。
Apocalypse manuscripts

「Matthias Gerung 作  1500年頃」
天使らが災害入りの七つの鉢の中身を、順番に落としていきます。
悪性の腫物ができ、海が血に変わって生物が死に、太陽は人を
焼き、獣や罪深き者の口から蛙のような霊が出てきます。
the seven bowls of wrath ottheinrich bibel

「Matthias Gerung 作  1500年頃」
悪しき王(アンチキリスト)らはハルマゲドンへ集まります。
その時、激しい雷が落ち、大地震が起こりました。
Ottheinrich_Folio Matthias Gerung

「Ottheinrich Bible の挿絵  15-16世紀」
バビロンにいる淫婦の母は七つの頭をした獣にまたがり、
赤い衣を着て宝石で身を飾っています。
彼女は罰を受け、繁栄したバビロンは滅亡してしまい、
また、獣も生きながら硫黄の炎に投げ込まれます。
Ottheinrich Bible, 15th-16th

「中世写本の挿絵」
赤い龍(サタン)はもう一度地へ落とされ、神が地上を統治しました。
それはミレニアムと呼ばれ、平和は千年間続きました。
Bamberg Apocalypse 1

「ドッソ・ドッシ作  1562年」
千年語、地上の底からまたもやサタンが現れ、大暴れをしたものの、
ミカエルによって地の底へと戻されました。今度は永遠に。
サタンを倒すミカエルを見たい方はこちら
 1562

「ハンス・メムリンク作  15世紀」
天国か地獄かをジャッジする「最後の審判」。
いのちの書に名前が書いていない者は地獄へ落とされます。
ミカエルが審判者となり、死者だった者も含めてすべての人類が
神の裁きを受けることになります。
最後の審判について知りたい方はこちら
Das_Jüngste_Gericht_(Memling)

 選ばれた者のみが助かり、他はみんな苦しめられて全滅、地獄行きとか選民思想丸出しのエピソードですが、ヨハネの黙示録は象徴や暗号がちりばめられていて、魅力ある物語です。獣の数字である666も古くから研究され、皇帝ネロとかナチスの数字とか言われています。「オーメン」も666が登場する超有名映画ですよね。



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