Konstantin Kalinovich -

 ティル・オイレンシュピーゲルは14世紀の北ドイツに実在したとされる、伝説のトリックスター的人物です。
 ティル・オイレンシュピーゲルと明記するのは長いので、ティルと書かせていただきます。彼はブラウンシュバイクのクナイトリンゲン村に生まれ、子供の頃から悪戯やひっかけが大好きで、人々に数々の迷惑行為や下品な行動を繰り返しました。1350年に病死する瀬戸際までそれは続けられました。
 ティルは数々の職人になりすまし、行く先々で人々をからかいました。彼の十八番は言葉を真っ向から受け取り、本当にそれをやってのけること。例えば暴言で「屋根から出ていけ!」と言われれば、実際に屋根を突き破って出ていくし、暴言で「糞でもしてな!」と言われれば、本当にその場でしちゃうという感じです。相手がびっくりして「やめろ!」というと「え、だってそう言ったでしょ?」という感じな反応をするので質が悪い。
 彼の伝説話は口頭で伝えられ、「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」という一冊の本に纏められました。創刊されるとその本は大人気となり、今でもドイツで愛読されています。
 トリックスター、ティルの挿絵11点を見ていきましょう。


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「都市ストラスブールの木版画  1515年」
オイレンシュピーゲルは「フクロウと鏡」を意味し、彼のサインにもなっており、
ティルを描く際はほとんどそれが描かれています。
Woodcut from an edition of 1515, Straßburg

「ストラスブールの本の挿絵  1515年」
小さい頃から悪ガキで、父親の背に乗っている時に
尻をつき出して振り、通りすがりの大人たちをからかっていたそう。
'Till Eulenspiegels

「作者不詳  1856年」
籠に乗って運んでもらっている時、前の男の髪を引っぱって
「後ろの男がやったよ!」と言って、前後の男達を喧嘩させたこともありました。
日本でも聞いたことがあるような悪戯のような。
TILL CARRIED IN BASKET 1856

「ロンドンで創刊された本の挿絵  1860年」
「壺の中に金貨があるから好きなだけとってくれ」とティルは
聖職者に持ち掛けます。聖職者は「少しだけ・・・」と言いながら、
がばりと金貨を掴もうとし、その下にたっぷり詰まっていた糞をしこたま
触ってしまったという話。聖職者の強欲を痛烈に皮肉っています。
London, 1860

「リヒャルト・シュトラウスのオーケストラのパッケージデザイン」
「綱渡りしながら面白い事を見せるから左の靴を貸して」
とティルは言い、人々から120足の靴を借りました。
靴を籠に入れ、彼はそれを綱渡りの上からばらまきました。
自分の左靴を探そうと人々は押し合いへし合いし、ティルはそれを見て笑ったそう。
Richard Strauss Till Eulenspiegels Lustige Streiche

「ドイツのシュレンバーグの本の表紙 1949年」
フクロウの数が半端ない挿絵。フクロウは邪悪や英知を象徴し、
鏡は自己の真実の姿を象徴します。
ティルは本当の世界を顕現させる、映し鏡のような存在だとも言えます。
Till Eulenspiegels 1949 Schulenburg

「1881年に創刊された本の挿絵」
ティルの物語には頻繁に「排泄物」が登場します。
主にティルが出したもので、相手を迷惑がらせるのに使います。
この下品さを受け止められるか否かで、彼の物語の評価ががらりと変わります。
'Till Eulenspiegels  1881

「Georg Paysen Petersen 訳の1904年の本表紙」
なんか凄く優しそうにみえるティルの挿絵。実物はこんなん
じゃないような気がします。彼は道化師の姿で描かれることが
多いですが、職業は道化ではなくニート。町を巡って
様々な職業をとっかえひっかえやっているマルチな存在です。
Petersen, Paysen Georg 1904

「Karl Blosfeld 作? 19世紀後半-20世紀前半」
寒いドイツでニートで生きている為、ティルは常に飢えていました。
他の人に食事をとられないよう、鍋の中に自分の鼻水を入れたほど。
日本人だけではなく全国共通でドン引きです。
Karl Blosfeld

「Konstantin Kalinovich 作  21世紀」 edited by Konstantin Kalinovich
明治38年に日本でこの物語が児童向けにアレンジされ、
児童書として出されたそう。題名は「みみずく太郎」。
みみずく太郎!か、かわいい!
Konstantin Kalinovich

「Karlheinz Goedtke 作  1951年」
ポーズをとってにやりと笑うティル・オイレンシュピーゲル。
これ、うちの庭に飾りたい・・・。そんな場所ないけど・・・。
Karlheinz Goedtke Till Eulenspiegel (1951)

 物語のラストでティルは病気で他界し、棺桶のトラブルで立った姿のまま埋葬されてしまいます。最期までトリックスターらしい、あべこべでひねくれた性格のティル・オイレンシュピーゲルでした。日本ではマイナーで、下品な物語としてあまり好かれていない印象がありますが、ドイツではティルは人気者で、アニメや映画も作られているほど。また紹介したいです!
 「神をも騙す―中世・ルネサンスの笑いと嘲笑文学」という本もティルについて言及があり、なかなか面白かったので以下に紹介します。トリックスター的な人物は当たり前と思っていることをはぎとり、世界の認識をずらしてくれるので魅力的に思います。道化のような人がいるからこそ、社会のバランスがとれているのではないかとも感じます。ティルは貴重な逸材ですね。
 いや、実際にいたら迷惑千万ですけど・・・。

→ 道化師について知りたい方はこちら


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