18th century Austrian vanitas -

 メメント・モリはラテン語で「死を忘れるな」という意味の、宗教、美術的スローガンです。
 始まりはローマ時代とされていますが、キリスト教が普及するようなってから、このスローガンは重要視され、様々な作品形態が生まれました。それはヴァニタスであったり、死と舞踏や死の勝利であったり、死と乙女であったりします。今回紹介する「half man(ハーフマン)」もそうで、縦から真っ二つに半分人間、半分骸骨で表された人体のことです。人間はいつかは死に、骨になるという強烈なメッセージが込められています。
 生と死、栄枯盛衰を表す「ハーフマン」の絵画と彫刻、13点をご覧ください。


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絵画、版画作品


「ドイツの画家  18世紀」
貴族のような服を着た青年の右側の足元には、トランプやチェスなど
この世の遊戯が置かれています。しかし、(鑑賞者から見て)左半身の骸骨は
スコップを持ち、墓穴が掘られています。背後にはもう墓があります。
artist unknown [German] late 18th century

「ロバート・ダイトン作  1794年」
こちらの女性もほぼ同じ構造になっています。ただ、骸骨が死の象徴の
矢を持っています。次元が真っ二つにされてしまったかのような構図です。
1794 Robert Dighton

「ヨハン・マーティン・ウィル作  1727-1806年」
こちらは鏡を利用した作品。本や金品を持った女性の背後の鏡に、
ハーフマンが映し出されています。あの世へは知識も富も持っては
いけないというメッセージでしょうか。
Johan Martin Will 1727-1806

「作者不詳  18世紀」
左半身の女性は自らの胸に触れているので、快楽や出産を暗示している
のでしょうか。右側の骸骨はあまり骨らしくありませんが、矢を自分に
向けて、体内に潜む死を克明に伝えています。
18th century, unknown artist

「Tomás Mondragon 作   1856年」
19世紀の作品は構図的には他と同様ですが、レベルアップしています。
骨の腹部には虫や蛆がわき、背後には不気味な墓が連なっています。
頭上の神が持つハサミに注目です。糸が切られようとしています。
Tomás Mondragón’s   1856

「作者不詳  17世紀」
どんなに美しい女性でも、内部は他の人間と同じ骸骨。
頭の月桂樹(?)は枯れ、首元のネックレスが蛇の姿になっています。
gravure 17s

「ジュゼッペ・アルチンボルド作  1527-93年」
騙し絵の巨匠アルチンボルドは真っ二つではなく、半分腐敗していく
姿のように描きました。ぽっかり空いた眼窩と、ぞろっと並んだ歯が
不気味です。
Giuseppe Arcimboldo (1527-1593)

「オーストリアの画家  18世紀」
静物画のように、ハーフマンを描いた作品。右側は花が美しく咲き、
生命の最盛期を伝えていますが、右側はロウソクの火が消えています。
蛇がうねり、下側のメモには「メメント・モリ」と書かれています。
18th century Austrian vanitas

「イタリアの工房の画家  17世紀」
こちらもアルチンボルドの作品のように、腐敗が進んでいくような感じに
描いています。蛇とヒキガエルがくっつき、死のイメージを助長しています。
Italian School 17th



彫刻作品


「フランスの僧侶が持っていたペンダント 年代不詳」
白目をむいた僧侶の顔が、真っ二つに分かれています。僧侶の者達は
こういったメメント・モリのペンダントを持ち、現世で罪を犯さないよう、
自らに言い聞かせていたのでしょうか。
Pendant with a Monk and Death french

「ポール・エジェル作  1720-25年」
息絶えた老人の顔が、骨に変わる過程を彫ったかのような作品。
レリーフで半分出ている感じが、逆に土に埋もれているようで、死を
強く感じさせる作品になっています。
Paul Egell 1720-25

「ロンドンにある作品 作者不詳  18世紀」
精巧にできた若い男性の半分が骨と化しています。
右側から出る台座を掴む手が、とてもホラーです。
London A Vanitas 18th

同じ作品を異なる角度から!
骨の部分には蠅や蛆、蛇がくっついており、蛆のリアルな表現などは
見ていてぞわっとさせられます。下に置いてある貝殻は、割れやすい
ために死の象徴となっているのでしょうか。
18th memento mori

 素朴な疑問ですが、今回作品を調べていて、絵画でのハーフマンは女性が多く感じたのに対し、彫刻でのハーフマンは男性が多く感じられました。もちろん私個人が調べただけなので、思い違いかもしれません。しかし、画家と彫刻家の表現する感性、視点が微妙に違うように思えます。
 絵画は「現生の楽しさに溺れても死が待っているぞ!」というメッセージが強く、彫刻は「人間はいずれ死に、腐敗する」といったニュアンスが強いような気がします。絵画は微笑んでいる者が多いのに対し、彫刻の方が、みな寂しそうな、虚無の表情を浮かべているのです。
 そこを深く考えてみると、興味深い結果が出てきそうです。

→ メメント・モリの絵画をもっと見たい方はこちら



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