Ubaldo Gandolfi 1770-1775 -

 ギリシャ神話には、百目の巨人アルゴスをヘルメスが退治する話があります。
 ある日、主神ゼウスとニュムペーの女性イオは恋の戯れをしていました。しかし、そこに恐妻ヘラが現れます。ゼウスは慌ててイオを牝牛に変えますが、ヘラはそれが愛人だと気付いていました。ヘラはその牝牛を欲しいと夫に頼んでまんまと手に入れ、巨人アルゴスに牝牛を厳しく監視するよう命じました。アルゴスは百の目を持つ巨人で、決して眠ることがなく、死角もありませんでした。
 ゼウスは牝牛になったイオの現状を悲しみ、使者のヘルメスにアルゴスを退治するよう命じました。彼は早速羊飼いに身を変えて巨人に近付き、物語を聞かせ優しく葦笛(あしぶえ)を吹きならしました。すると、百の目が全て閉じて眠りこけてしまったので、ヘルメスは一刀の下にアルゴスの首をはねて殺してしまいました。(諸説あります)
 ヘルメスのアルゴス退治の絵画、16選をご覧ください。



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「Jacobus Magnus 作  1360-1425年」
アルゴスが百目という事で、中世の画家はそれを忠実に表現しようと
頑張りました。ヘルメスが超絶ミニスカートなのが気になりますし、
鶏がいるのもミステリー。牡牛はどこ!?
Jacobus Magnus (1360-1425)

「Abraham Hondius 作  17世紀」
ルネサンス以降は、アルゴスを通常の人物と同じように描く画家がほとんど
でした。百目にすると芸術にしてはキモすぎると思ったのでしょうか。
背後には牛になったイオがいます。
Abraham Hondius

「Alejandro de la Cruz 作  1773年」
ヘルメスは葦笛を吹き、アルゴスに美しく柔らかい音楽を聴かせます。
始めこそはぱっちり目を開けていた巨人でしたが、物語を話したり、
音楽を奏でているうちに順番に目が閉じていきます。
Alejandro de la Cruz

「Nikolay Andreyevich Koshelev 作  1840 – 1918年」
ついに、百すべての目が完全に閉じ、アルゴスは眠り込んでしまいます。
ヘルメスにチャンスが訪れました。
Nikolai Andreyevich Koshelev

「作者不詳 中世写本の挿絵 1450-75年」
アルゴスの耳に笛を突っ込んで奏でるヘルメス(しかも半身浴)と、
凶暴な牛と化しているイオさん。ツッコミどころ満載すぎて、
中世の作品はやはり面白いです。
1450-1475

「作者不詳 中世写本の挿絵」
こちらのヘルメスさんは上空からどろんして、アルゴスの耳元で
笛をぴゅーぴゅー。顔部分の目は閉じましたが、まだ身体の目は
開いています。ヘルメスはちゃっかりイオの手綱を握っています。
Mercury lulls Argus

「Corrado Giaquinto 作  1700–1765年」
巨人アルゴスが超絶美青年と化しています。
登場人物を美青年に描く風潮はルネサンス以降起こり、
それは聖セバスティアヌスを筆頭に、様々な人物が描かれています。
→ 聖セバスティアヌスについて知りたい方はこちら
Corrado Giaquinto (ca 1700–1765)

「ディエゴ・ベラスケス作   1659年」
ベラスケスがギリシャ神話の作品を描いているとは、個人的に意外でした。
アルゴスが完全に眠っているかどうか、確認中。
「んー・・・大丈夫そうかな?」
Diego Velázquez  1659

「ローマ工房の画家作  17世紀」
「念の為、もうちょっと吹いとこう」
このヘルメスの姿勢と近距離にウケました。私のツボなのか、
この絵を見つめていると、徐々に笑いが込み上げてきます・・・(笑)
roman_school_17th_century_mercury_argos

「ヤーコブ・ヨルダーンス作  1678年」
相手が完全に眠ったことを認識したヘルメスは、そっと笛から剣に
持ち替えます。背後に牛さんが大量にいる…。イオさんはどれ?
Jacob Jordaens  1678

「Jacopo Amigoni 作  1682-1752年」
そーっと、そーっと剣を抜いて・・・。
頭上でゼウスが見物をしています。見にくるなら自分でやりなさいよ!
と突っ込みたくなるのですが、こういった頭脳戦は部下ヘルメスにしか
できないことなのでしょう。
Jacopo Amigoni

「Ubaldo Gandolfi 作  1770-1775年」
個人的にこの構図がとても好きです。鑑賞者に向けて「しー…黙ってて、
今首を斬るから」とヘルメスが語りかけているように見えます。
見上げるような視点なのも、斬新で素敵です。
Ubaldo Gandolfi 1770-1775

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1577-1640年」
今だ! ヘルメスは、勢いよく剣を振り上げた!
Rubens - Mercury and Argus

「Johann Michael Rothmayr 作   1690-95年」
一刀の下に首を斬り落とされたアルゴス。ヘルメスはイオを解放し、
自らの任務を終えます。ヘラに監視を命じられ、仕事を行っていただけで
殺されてしまったアルゴス。ご愁傷様。
 Austrian  1690-95

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1577-1640年」
アルゴスの死後、ヘラは自ら飼っていた孔雀の尾羽に百の目を取り付けた
とされています。それ以来、孔雀の尾羽にはたくさんの目が付いたとか。
目玉がきゃっきゃと楽しそうにくっつけられています。
Peter Paul Rubens

「Orazio Riminaldi 作  1617年」
こちらのヘラさんはアルゴスの身体を踏み付けながら目玉をつかみ、
かなりワイルドに孔雀に取り付けようとしています。上空のヘルメスが
「うわぁ・・・ひでぇ。ちょっと罪悪感?」と言った感じに見下ろしています。
 1617

 巨人というとティタン神族や北欧神話の巨人族を思い浮かべ、神々の敵というイメージがありますが、アルゴスはヘラの忠実な部下で、神々の味方でした。
 一説によればアルゴスは女の怪物エキドナを倒したり、アルカディアの牡牛の怪物を倒したり、悪どいサテュロスを倒したり、王を殺害した犯人を倒したりと、華々しい活躍をしています。(参考HP) それなのに、ゼウスの不倫問題に巻き込まれ、主神直属の使者ヘルメスに退治されてしまったアルゴス。そしてヘラに目玉を抜かれ、孔雀にワイルドに取り付けられたアルゴス。
 あなたの勇敢なる物語は、孔雀の中で永遠に生き続けることでしょう・・・。←ぇ



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