Ludovico Mazzanti 1737 -

 ルクレチア(ルクレツィア、ルクレティア)は紀元前6世紀頃に王政ローマで生きた女性です。
 紀元前509年、ローマ人はルトゥリ人と戦争しており、ルクレチアの夫ルキウスもこの陣中に滞在していました。この時、王政ローマの王子、セクストゥスたちとルキウスが妻の節度について話し合った結果、実際に妻たちの元へ行くことになりました。彼等は陣を抜け出して妻の様子を見てみます。すると、王家の妻たちが宴会で遊んでいるのに対し、ルキウスの妻ルクレチアは自宅に留まり、夫の帰りを待っていたのです。
 それを確認して陣中へ戻った彼等でしたが、王子セクストゥスはルクレチアに恋をしてしまい、数日後の夜にこっそり一人で彼女に会いに行きます。彼はルクレチアを乱暴しようと剣で脅しましたが、彼女は脅しに屈しませんでした。しかし、執拗な脅しに遂にルクレチアは折れてしまいます。

 王子が去った後、彼女は父親と夫を呼びました。彼等は仲間であるプブリウスとブルートゥスを伴って駆けつけ、起こった悲劇を彼女から聞きました。ルクレチアはすべてを話し終えると彼等に「復讐をしてください」と頼み、短剣で自らの命を絶ちました。四人の男たちはローマの民衆を募り、力を合わせて王家を追放しました。こうして共和政ローマは誕生し、王ではなく民の国となったのです。
 王家を崩壊させるきっかけとなった女性、ルクレチアの絵画13点をご覧ください。


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「ジュセッペ・クレスピ作  1695-1700年」
王政ローマ王子セクストゥスはルクレチアに恋をしてしまい、力ずくで自らの
ものにしようとします。彼女は頭を掴んで全力で拒否しようとしています。
しかし、剣で「奴隷と一緒に殺すぞ」と脅され、遂に屈服してしまいます。
Giuseppe Maria Crespi 1695-1700

「ギャヴィン・ハミルトン作  1723-1798年」
ルクレチアの呼びつけに駆け付けた四人は事情を聞き、必ず王家に復讐
することを誓いました。四人は彼女の父親とその友プブリウス、
彼女の夫とその友ブルートゥスです。
Gavin Hamilton 1723-1798

「Henri Louis Marius 作  1884年」
ブルートゥスと言っても、時代が500年近く離れていますので、
カエサルを暗殺した彼とは別人です。
→ ユリウス・カエサルについての絵画を見たい方はこちら
1884, Henri Louis Marius

「Louis Adolphe Tessier 作  1883年」
節操を守る為にルクレチアは自らの胸に短剣を突き刺し、
息絶えてしまいます。
 Louis Adolphe Tessier

「Francesco Rustici 作  1624-25年」
現代の感覚で言えば「死ななくてもいいのに…」と思うのですが、
男性優位の時代において、他の男との関係は死罪に値するもの
だったのでしょう。
Francesco Rustici 1624-25

「Eduardo Rosales Gallinas 作   1871年」
ちょっと皮肉な言い方ですが、ルクレチアは男性社会における
女性の鑑的な存在と言えそうです。
Eduardo Rosales Gallinas  1871

「Maitre Francois 作   1470年」
あれ、三人ですけど・・・。欠席ですか?
ルクレチアさんの剣の突き刺し方が恐いです。
Maïtre François  1470

「グイド・レーニ作  1626年」
ルクレチアは美術的に大変人気のある主題で、彼女を単体で描く
美術作品もたくさん存在します。基本、ルクレチアは自らの胸を短剣で
刺そうとする、あるいは刺した女性として表されます。
Guido Reni 1626

「レンブラント・ファン・レイン作  1664年」
あのレンブラントもルクレチアを描いています。セピアの闇に溶けゆく
かのような儚い姿が、彼女の悲壮さを醸し出しています。
Rembrandt van Rijn  1664

「Ludovico Mazzanti 作 1737年」
頭上を見上げ、自らの胸に短剣を突き刺すルクレチア。
節操を守った節度ある女性の物語なのですが、画家の中には、
彼女を官能的な美女として描く者が現れます。
Ludovico Mazzanti 1737

「パルミジャニーノ作  1503-40年」
美しい女性の象徴として彼女を表現しているからでしょうか。
胸を露出した作品が多数存在します。その中には…。
parmigianino

「ルーカス・クラナッハ(父)作  1472‐1553年」
こんな脱げちゃった作品も存在します。
量産型の画家クラナッハはセクシーな裸体のルクレチアを
何枚も描いています。それを貴族が購入して「美しい・・・」と眺めていた
と思うと、なんだか複雑な気分になります。
Lucas Cranach the Elder

「Meester met de Papegaai 作  1525年」
お顔がちょっとホラーなルクレチアさん。ほとんどの絵画は短剣を
描いていますが、中には長剣も。いや、痛そう。めっちゃ痛そう。
Meester met de Papegaai (1525)

 ルクレチアと同じ名前で、1480-1519に生きたルクレツィア・ボルジアという女性がいます。
 上記のルクレチアと違って、彼女は「悪女(ファム・ファタール)」とされた人物です。非常に美しい容姿とされていましたが、節操とはほど遠く、政略結婚によって何名もの支配者と関係を持ちました。彼女の出生ボルジア家は冷酷な支配者とされており、政治的腐敗と不品行が横行していた時代でした。家柄を強力にする為に、彼女は自らの身体を利用していたと言えるかもしれません。
 節制を守る為に王家を崩壊させたルクレチアと、家柄を守る為に節制を売ったルクレツィア。二人の女性は対照的ですが、権力に翻弄された犠牲者とも考えられそうです。

→ ルクレツィア・ボルジアの絵画を見たい方はこちら


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