カルロ・クリヴェッリ作  1480年 -

 カルロ・クリヴェッリ(1430頃-1495)は、イタリアのヴェネツィア出身であるルネサンス初期の画家です。
 弟にヴィットーリオ・クリヴェッリがおり、たまに共同制作を行いました。Jacobello del Fiore を師匠にしていたと言われ、アルヴィーゼ・ヴィヴァリーニやアンドレア・マンテーニャなどの影響を受けていました。彼はヴェネツィアで学んだ後、フランツコ・スクワルチーネの工房で働き、1457年に既婚女性と不倫関係となり、6か月の懲役を科せられました。その後様々な土地へ移り住み、イストニアに滞在、1495年にマルケで亡くなるまで絵を描き続けました。
 フィレンツェで起こった自然主義な作風とは異なり、クリヴェッリは煌びやかで象徴的な作品を手がけ、遠近法やだまし絵的手法などを積極的に取り入れていました。当時、油彩画の技法がフランドルより伝わっていましたが、彼はテンペラ画と金箔の金打ちという古風な作風にこだわり続けました。ルネサンス期に古典的な作品を描くことに対する批判もあったそうです。それでも、彼が手掛ける気品漂う冷厳な聖母の姿は、多くの模倣者を生みました。
 「多翼祭壇画の詩人」と謳われているカルロ・クリヴェッリの作品、13点をご覧ください。


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「マグダラのマリア  1480年」
キリストに救済された娼婦の女性で、聖書では重要な位置に
います。一説にはキリストの妻と考えられていますが、
真相は闇の中・・・。クリヴェッリは彼女をミステリアスで
気高い女性に描きました。上着は全て金打ちされています。
Mary Magdalen, 1480

「聖ゲオルギウス  1472年」
竜を倒した逸話がある聖ゲオルギウス。
まだ少年のように見える聖人が持つ槍は折れており、
足元にいる竜の頭に突き刺さっています。鎧の装飾や
巻き毛がレリーフのように美しいです。
Saint George, 1472

「聖ゲオルギウス  1470年」
こちらは青年の姿の聖ゲオルギウス。足元に落ちた槍は同じデザインで、
彼は竜にとどめを刺そうとしています。この絵画は1935年にガードナー美術館に
よって修復をされたそうです。金箔のきらめきが復活です!
→ 聖ゲオルギウスの絵画をもっと見たい方はこちら
Saint George 1470

「聖母子像   1460年」
初期の方の作品なので、聖母子の様相が他と違うように見えます。
なんだか全体的にぽっちゃりめ?上で音楽を奏でている天使、下で
祈っている信仰者たち(?)がかなりミニマムに描かれています。
The Virgin and Child  1460

「聖母子像  1472年」
冷ややかな表情にも見えるマリア様。神聖な宗教画に感情はいらない、
という中世様式を踏襲して描いたということが分かります。
下の台には花と一匹の蠅が。これはだまし絵の技法です。
Madonna and Child Enthroned 1472

「聖母子像  1480年」
こちらのマリア様は気高い雰囲気はあるものの、柔らかい表情になって
います。とても上品な若いお母様と言った感じです。こちらの絵画にも
蠅がいます。クリヴェッリは絵画に蠅をさり気なく描き込んでいます。
→ 絵画に描かれた蠅について知りたい方はこちら
カルロ・クリヴェッリ作  1480年

「聖母子と聖フランシスコ、聖セバスティアヌス  1491年」
クリヴェッリ晩年の作品。彼の絵画の多くには果物が描かれています。
聖母子の両側には二人の聖人。聖フランシスコは動物、聖セバスティアヌスは
兵士や黒死病の守護聖人と考えられています。
→ 聖セバスティアヌスの絵画を見たい方はこちら
The Virgin and Child with Saints Francis and Sebastian, 1491

「受胎告知  1486年」
クリヴェッリの最高傑作と言える作品。上にはペルシャ絨毯と孔雀が
描かれ、手前には野菜が置かれています。装飾や人物は非常に
細かく、描くと気が狂ってきそうです。それでいて完璧な遠近感と
なっているので、彼の才能をひしひしと感じる作品です。
→ 受胎告知の絵画をもっと見たい方はこちら
Carlo Crivelli 1486

「聖フランシスコと傷跡を示すキリスト  1490年頃」
キリストと同様の傷跡が浮かび上がってくる「聖痕」という事象が始めて
起きたのが、聖フランシスコと言われています。彼はキリストの幻視を
見て、聖痕の出血により弱り、命を落としました。
 1500

「トマス・アクィナス  1476年」
学校でも習った、イタリアの神学者&哲学者。代表作は「神学大全」。
彼はキリスト教的観念と、哲学的思想を統合させたと言われています。
絵画でのアクィナスは、教会と哲学書を持っています。
St Thomas Aquinas, 1476

「聖ステファノ  1476年」
石打ちの刑で殉教した聖ステファノ。様相や洋服の装飾はとても
精巧で、神々しい雰囲気が出ていますが、どうして真ん丸の石を
くっつけてしまったのでしょう。・・・不思議です。
→ 聖ステファノの絵画をもっと見たい方はこちら
Saint Stephen, 1476, with three stones Carlo Crivelli-

「ピエタ  1476年」
マリア、マグダラのマリア、聖ヨハネがキリストの死に嘆き悲しんでいます。
肖像画の俗を完全に排した冷厳な表情と違い、こちらの聖人は感情が
よく表れています。ヨハネの悲しみ方が白目で物凄いです。
1476 pieta

「ピエタ  1485年」
聖ヨハネさん、悲しみすぎて胸がはだけて台に足を掛けてしまいました。
この激しい悲しみを観ていると、鑑賞者の私達まで胸を揺さぶられて
しまいそうです。でも、頭上の果物がとってもフルーティ。
→ ピエタの絵画をもっと見たい方はこちら
Pietà Panciatichi  1485 john

 クリヴェッリは煌びやかで古典的な宗教画を手掛けていた為、「不倫の罪で6か月の禁固刑」という事実には驚きました。フラ・アンジェリコのような真面目な修道僧のようなイメージを持っていました。詳しい理由が分からないので一概にいう事はできないと思いますが、俗を排した絵画を描いたクリヴェッリはどちらかというと、人間味溢れた悩める人だったように思います。宗教的な浄化の理想というか、自ら思い描く美のイデアをどこまでも追い続けた画家だったのかもしれないですね。



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