Mary Magdalene as Melancholy  Artemisia Gentileschi  1621-22 -

 メランコリーは日本語で「憂鬱(ゆううつ)」であり、気分が優れない落ち込んだ気分のことを指しますが、メランコリアは古代ギリシア医学の学説「四体液説」に由来します。
 四体液説は「人体は血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁の4つで構成される」という考え方であり、人間の性格もそれらのバランスによって決まるとされています。その中で黒胆汁が多い者が「メランコリア(憂鬱気質)」と考えられており、現代で言えばうつ病に近いメランコリアの性質は余り良いものではないとされていました。しかし、哲学者や詩人、芸術家などの人物はメランコリアである比率が高いとされ、ルネサンス以降、メランコリアは芸術、創造を生み出す霊感の根源であると思われ、学者の文献、画家の寓意画に盛んに描かれることになりました。
 メランコリアの様子を描いた作品、12点をご覧ください。

PR
 

「アルブレヒト・デューラー作  1514年」
メランコリアの作品の中で、これが一番有名でしょう。不機嫌な様子の
天使はペンを手にし、深く何かを考え込んでいます。
作品は様々な寓意に満ちており、憂鬱は芸術の出産であり、
霊感を生み出す手段とされています。
Albrecht Dürer  1514

「Sebald Beham 作  1539年」
こちらの天使も頬に手を付いて考え込んでいますが、どこか嬉しそうに
みえます。手にはコンパス、足元には球体と砂時計。世界の尺度や
時間を表しているのでしょうか。背後にはメランコリアの文字が。
Melancholia 1539

「フレデリック・サンディーズ作   1829-1904年」
メランコリアとメメント・モリが複合的になったような作品。
死を象徴する骸骨が、憂鬱そうな男性を迎えに来ています。左の花の
花瓶には道化のような人物が描かれているように見えます。
→ メメント・モリの作品を見たい方はこちら
Anthony Frederick Sandys  1829-1904

「Henri Simon Thomassin 作 1729年」
女性は髑髏を抱きかかえ、深く何かを考え込んでいます。
砂時計や世界を表す球体が塞ぎ込んだ心に負担をかけていますが、
足元の犬や魔方陣の描かれた本が創造の啓示を表していそうです。
Henri-Simon Thomassin (1729)

「ルーカス・クラナッハ(父)作  1532年」
クラナッハは何枚もメランコリアの作品を描いています。羽の生えた
女性は何かを削っているように見えるのですが・・・。ごぼう?
子供たちは一人がぶらんこに乗っていて、羨ましそうに見ています。
ドイツの民間伝承にある、ワイルドハントのようなものが空を飛んでいます。
Lucas Cranach · 1532

「ルーカス・クラナッハ(父)作  1532年」
描かれたモチーフはほぼ同じで、構成もよく似ていますが、
こちらの絵画は子供たちが円を転がしています。世界は子供たちが
遊ぶように気まぐれに転がっているという意味でしょうか・・・。
Lucas Cranach dÄ - The Melancholy [1532]

「ルーカス・クラナッハ(父)作  1532年頃」
今度は子供が大量発生しました。この少し不気味な作品を見ているだけで、
どことなくメランコリーになりそうです。子供は踊っている組、寝ている組、
音楽組に分かれ、異次元の人々は船や馬に乗っています。
首だけの存在は創造神?私には解読ができません・・・。
lucas cranach i melancholia

「Bartholomaus Hopfer 作  1643年」
バロックに入ると、肖像画の表現の一つとしてメランコリアは使われました。
この作品はメランコリア+ヴァニタスといった感じですね。
→ ヴァニタスの絵画を見たい方はこちら
Bartholomeus Hopfer-Melancholia 1643

「ヘンドリック・テル・ブルッヘン 作  1627年」
女性が髑髏を手に持ち、深く考え込んでいます。蝋燭の弱い光と強い闇。
テネブリスムを用いることで、より一層女性の悩ましさを深めています。
→ テネブリスムの絵画を見たい方はこちら
Hendrick ter Brugghen, Melancolia, 1627

「フランソワ=グザヴィエ・ファーブル 作 1795年」
女性は壺によりかかり、呆然と上を見上げています。
「あぁ・・・どうしよう」という女性の声が聞こえてきそうです。
Francois-Xavier Fabre Mélancolie 1795

ゲルハルト・フォン・キューゲルゲン作  1815年」
こちらの女性は壺を持ち上げ、こちらに訴えかけているように見えます。
壺は一体何を表しているのでしょうか。負の感情が詰まっている
「パンドラの壺(箱)」を象徴しているのですかね?
→ パンドラの絵画を見たい方はこちら
Franz Gerhard von Kugelgen  Grief 1815

「アルテミジア・ジェンティレスキ作  1621-22年」
マグダラのマリアの憂鬱さを描いた作品。キリストの死があった直後を
描いた作品なのでしょうか。彼女は疲れ果てたかのように椅子に
よりかかり、目を閉じています。
Mary Magdalene as Melancholy  Artemisia Gentileschi  1621-22

 芸術や哲学、文学においてメランコリアは霊感を与える崇高な手段となっていますが、現実におけるメランコリーはとても厄介な感情です。気分が沈んでいる時は何もやる気が起きないし、一体私は何をやっているんだろう。こんな事をしていていいのかな、と色々悩んでしまいます。それも自分の考えが生み出したことかもしれませんが、現代では本当に色々な問題事が溢れているように感じてしまいます。
 深いメランコリーの渦に溺れず、パンドラの箱に残った唯一の希望のように、人生に絶望せずに楽しく過ごしていきたいですね。どれかと言えば、私は黒胆汁が多めのような気がするので・・・(汗)



  PR