The Norns by Carl Emil Doepler -

 ノルンは北欧神話に登場する、運命を司る女神たちです。
 単数形ではノルン、複数形ではノルニルと言います。本来ならノルンは複数人数いますが、ギリシャ神話の三名の運命の女神モイラに影響され、北欧でも三名だと考えられるようになりました。ノルニルの中で比較的名の知れているウルズ、ヴェルザンディ、スクルドの三名がノルンの代表として選ばれることになったのです。ウルズは「起こった事、死」を、ヴェルザンディは「起きつつある事、生成」を、スクルドは「成されるべき事」を意味し、ヴァイキングの名誉ある死を象徴していると一説には考えられています。彼女らは人間や神々の運命の糸を編み、人生を紡いでいるのです。
 ミステリアスな運命の女神、ノルンの絵画12点をご覧ください。

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「Amalia Schoppe の著書の挿絵  1832年」
ノルンたちは毎朝泉の中から泥をすくってユグドラシルの枝や幹に塗り付け、
乾いたり腐ったりしないようにしています。この作業をおこたると、
ユグドラシルはすぐに痛んでしまうそうです。
Amalia Schoppe 1832

「C.E. ブロック作  1870‐1938年」
ウルズは過去、ヴェルザンディは現在、スクルドは未来を象徴している
と考えている人もいますが、その根拠はないようです。その説により、
彼女らは老婆、婦人、少女の姿で描かれる場合があります。
 Brock -

ヨハンズ・ゲールツ作  1889年」
ノルンたちはユグドラシルの根元の泉の中からやってきたとされ、
運命の糸で機織りをして、人の子らに人生を取り決め、運命を告げると
言われています。
Johannes Gehrts 1889

「Johan Ludwig Lund 作  1844年」
こちらはノルンの絵画として紹介されていましたが、天使や聖人の
ような姿で描かれ、天秤や石板など異なるモチーフを持っています。
縁にはルーン文字で名前が描き込まれています。
Johan Ludwig Lund  1844

「アーサー・ラッカム作  1867‐1939年」
透明なノルニルが火山の麓で運命の糸を作っているようです。
常に死と隣合わせで、戦死は名誉と考えられていたヴァイキング時代、
死は身近なものであり、神々の宮殿ヴァルハラへ行ける架け橋でした。
Arthur Rackham

「L.B. Hansen 作  19世紀頃」
彼女たちは勇敢なヴァイキングの運命を司り、時には名誉な死を与え、
時には無慈悲な現実を突き付けました。挿絵には蜘蛛や蛇、蚕、
虫など残酷や糸を連想させるモチーフが描かれています。
 Hansen

「 H. A. Guerber 作  1859‐1929年」
彼女たちは巨人族の出身だと言われていますが、スクルドは
ヴァルキリーの一人とされています。一番真ん中で鎧をまとって
いるのがスクルドです。
→ ヴァルキリーについて知りたい方はこちら
 Guerber

「Alois Delug 作   1895年」
アールヌーヴォーを代表する画家、アルフォンス・ミュシャを連想させる
作風ですね。泉のほとりで糸を編む三名は、美しくもあり残酷に見えます。
Alois Delug  1895

「エミール・ドプラー作  1855‐1922年」
こちらのノルンたちは穏やかで、無慈悲な運命を与えたりしなさそう
に見えますが、そういう風に見える女神こそ恐ろしいかもしれません。
The Norns by Carl Emil Doepler

「エミール・ドプラー作  1855‐1922年」
ユグドラシルのほとりでくつろいでいますね。
彼女たちは三姉妹だとされていますが、ノルニルは複数みえる為に
実際は数十姉妹の可能性もあります。
1905 arthur

「アンカー・エリ・ペーターセン作  2003年 (画像元)
デンマークのフェロー諸島で発行された郵便切手。
ヴァルキリーであるスクルドが馬に乗り、ウルズが木に何かを刻んでいます。
ルーン魔術を彫っているのでしょうか。この切手欲しいです。
アンカー・エリ・ペーターセン

 ノルンは文献に名前こそ登場するものの、彼女らが直接物語に出ることは滅多にありません。ただ、古エッダの「グズルーンの唄」において、ノルニルは夢の中でのみ登場します。妻に殺されるだろうという予言を、フン族の王アトリに与えたのです。このノルニルは名前がなく、予言を与えた「運命」そのものと言えそうです。また、ノルンではなく、ノルニルとなっているので複数の女神が運命を動かしている印象なのだと思います。
 なので、ウルズ、ヴェルザンディ、スクルドという女神は、複数いる女神のごく一部であり、象徴的な存在なのだと私は思います。



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