Michelangelo 1508-1512 -

 イザヤは紀元前8世紀頃の預言者で、旧約聖書の「イザヤ書」の著者です。
 名前はヘブライ語で「ヤハウェの救済」を意味します。ユダ王国後期に生きた彼は、王国の不実性を批判し、神の激しい天罰と後の復興を預言しました。イザヤは神の裁きと救済を強調し、神への信仰と罪の悔い改めを繰り返し唱えました。また、彼はイザヤ書の中で救世主「メシア」の到来を預言しています。メシアはイスラエルに平和をもたらし、正義の統治者として君臨します。当時のイスラエル王国はアッシリア帝国からの攻撃を受けており、ユダ王国は傾いていました。イザヤはこういった社会状況に敏感に反応し、国家への警告としてこの「イザヤ書」を手掛けようとしたではないでしょうか。
 
 また、イザヤの死後については初期キリスト教の時代の書物に、伝説として書かれています。その書はイザヤの殉教、イザヤの幻、イザヤの昇天の3部から成っています。彼はユダ王国のマナセ王によって捕らえられ、のこぎりで身体を切られて殉教したと伝えられており、教会の建設や最後の審判、アンチキリストの出現を預言したとされています。第3部ではイザヤは天へ上昇し、キリストの受肉や十字架の死、辺獄降下とキリストの復活を語っています。
 預言者イザヤの絵画、12点をご覧ください。

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ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ作  1308-11年」
ひげを蓄えた立派な老人の姿で描かれたイザヤ。
手には預言がしたためられた巻物を持っています。
Duccio 1308-11

ジャン=ルイ=エルネスト・メッソニエ作  1838年」
現代の観点から言うと「イザヤ書」は一冊の書物を思い浮かべがちですが、
紀元前8世紀の事だから、書物ではなくて巻物調の紙が正しいんですよね。
イザヤ書は弟子達が口頭で話した言葉を、後年になって文章化して
纏めたものとされています。
Jean-Louis-Ernest - Prophet Isaiah ( 1838)

ベンジャミン・ウエスト作  1782年」
聖なる力を火に例え、天使が神の御告げをそっとイザヤの口元に
運んでいます。イザヤは巻物を持って天空を見上げ、それに応える
かのように口を開きかけています。
Benjamin West  1782 

「ミケランジェロ・ブオナローティ作  1508-12年」
システィーナ礼拝堂に描かれた大作にもイザヤはいます。赤と青の
おしゃれな衣服に身を包んだ初老の男性といった感じで、他の画家が
考える髭もじゃ的イメージとは少し違いますね。
Michelangelo 1508-1512

「ラファエロ・サンツィオ作  1511-12年」
ラファエロだってイザヤを描いています。こちらは筋肉質で髭豊かな
男性ですね。ミケランジェロよりたくましく厳めしい姿を描いているなんて、
少し意外に思いますね
Raphael  The Prophet Isaiah fresco  1511-12

フラ・バルトロメオ作 1472-1517年」
こちらは珍しい若い青年のイザヤ。バルトロメオは上記二人と同時期の
イタリアの画家です。ほぼポーズが一緒なので、誰かがどれかを参考に
して描いたのでしょうか。
 Fra Bartolommeo 1472-1517

「Maestro de Becerril 作 1525年」
こちらのイザヤは少し風体が違いますね。
イスラエルの異国情緒的な感じがよく表れています。
The Prophet Isaiah,  1525 Maestro de Becerril

ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ作 1726 - 29年」
イザヤは書物を指さし、天使に何かを伝えようとしています。
天使が向けているのは何でしょう。マイク・・・なわけないですよね。
The Prophet Isaiah, 1726 - 1729 - Giovanni Battista Tiepolo

「Antonio Balestra 作  17世紀」
こちらの絵画を見て、やっと分かりました。天使はやっとこの先に、
高熱の石(?)を持っているようです。これは神の火と同じ象徴として
使われているのだと思います。神の裁きはこの燃えさかる石のように
激しいぞ!というメッセージなのでしょうか。
Antonio Balestra - Prophet Isaiah 18th

ジェームズ・ティソ作  1896 - 1902年」
現代のイザヤは少し魔術師めいていて不気味です・・・。
衣服はイスラエルを意識していそうですが、書物や
巻物、天使などの象徴は何も描かれていません。
James Tissot 1896 - 1902

ファン・ヘームスケルク作  1599-60年」
イザヤはのこぎりによって殉教している為、彼のアトリビュートは
書物の他、のこぎりもあります。現代の取っ手と刃が一直線の
ものと違い、取っ手が二つでU字型になっていますね。
→ アトリビュートについて知りたい方はこちら
Maarten van Heemskerck 1599-60

「イタリアの写本挿絵  1425年」
マナセ悪王により、のこぎりの刑を受けるイザヤ。
長いのこぎりで頭からごりごりされています。うう、痛そう・・・。
中世の写本では、イザヤの殉教が多く描かれています。
Italy 1425

 イザヤ書はイザヤの弟子達が口頭で伝えたものを、後年の人達が文章化したと考えられており、実際にイザヤがそのように預言したのかは定かではありません。もしかしたら伝言ゲーム的に尾ひれ背びれが付き、とんでもない内容になっているかもしれません。
 初期キリスト教時代に書かれた「イザヤの殉教と昇天」が良い例で、イザヤは昇天した際にイエス・キリストの受肉や死、復活を預言したとされています。しかし、紀元後に執筆されたものなのだから、イザヤが預言者であることをいいことに、キリスト教本位な話を作ってしまった感が否めません。イザヤはもしかしてキリストの到来を予期していたかもしれませんが、その預言は時代の波に呑まれ、歪曲された複雑な内容に変貌してしまっているのかもしれませんね。

→ イザヤの殉教の絵画をもっと見たい方はこちら


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