怪物

 北方ルネサンスの画家ヒエロニムス・ボスの作品には、実に多くの怪物たちが存在します。
 ボスが描く独創的な怪物はある種の強い魅力を発し、フィギュアや洋服などのグッズが生まれています。快楽の園に描かれた木男や暴食の怪物(サタンとも)、甲冑を着たグリロスや、聖アントニウスの誘惑のレターバードや船になった魚の怪物、最後の審判の頭巾を被ったグリロスや教皇姿のグリロスが有名どころですね。しかし、怪物にも有名な者と、そうでない者が存在します。
 今回は、絵画の隅っこや目立たないところに生息する、マイナーだけど個性的な怪物たち13体+α をご紹介します。「快楽の園「」干草車」「最後の審判」「聖アントニウスの誘惑」の代表的な四つの祭壇画から抜粋します。なお、絵画の全体像は掲載しますが、表示の関係で画質を押さえさせていただいておりますので、ご了承ください。

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快楽の園



快楽の園 (4)


「中央パネル  左側中央辺り」
カブトガニみたいな甲羅を背負い、一生懸命歩く人と、
上に生えた植物に逆さまになる人。何を象徴している
のかは、ボスに訊かないと分かりません。
快楽の園 (3)

「右パネル  右下辺り」
やかんを被った暴食の鳥の背後に群がる修道女らしき
怪物たちと、下で眠る青年。怠惰や色欲を表しているの
でしょうか。額縁の端っこの方もボスは手抜かりがないですね。
快楽の園 (2)

「右パネル  左側中央辺り」
読書をしている怪物が人に座っており、カモノハシみたいな
口の怪物が指をさしています。知識で傲慢になるなという
意味なのでしょうか。右側の獣の怪物は画像からでは
分かりませんが、人の入った鐘を鳴らしています。
快楽の園



干草車



乾草車


「右パネル  上辺り」
レンガを積み立てて陶を作っている怪物。カエル色をした
怪物はなかなか真面目そうです。干草車は人の欲深さ
を示した作品なので、バベルの塔を示しているのでしょうか。
→ バベルの塔の絵画を見たい方はこちら
干草車1

「右パネル  中央下辺り」
塔の下側では牛に乗った男性が茶色の怪物に串刺しに
されています。奥には鹿の角をした者、左にはネズミと
蛾をドッキングしたような怪物がいます。手前の青い怪物は
何だかさすらっている雰囲気な背中です。
干草車2

「中央パネル  右側中央辺り」
ちょっと可愛らしくみえる怪物の一団。
干草を求める連中の先頭を成しています。罪深き者を
引きつれて地獄へレッツゴー!ですね。
干草車3



最後の審判



最後の審判 (4)

「中央パネル 中央辺り」
蛙の盾を持った騎士のような怪物。結構ど真ん中にいるのに、
最初存在に気付きませんでした。帽子から獣が出て、魚を
食っているなんて、ボスの怪物アイデアに脱帽です。
最後の審判 (3)

「右パネル  下側」
こちらは魚から人が顔を覗かせています。ボスの時代から、
「大きな魚は小さな魚を食う」というモチーフがあったんですかね。
こちらを見てにやりしながら剣山で突き刺している怪物も
不気味ですが、左の怪物がより不気味です・・・。
最後の審判 (2)

「中央パネル  中央」
髭の王様のような怪物に「郵便ですよ~」とお手紙を
届けるツチノコ型怪物。阿鼻叫喚とした作品の中では、
ちょっとほっこりする場面です。
最後の審判



聖アントニウスの誘惑



聖アントニウスの誘惑 (5)


「中央パネル 右上」
建設デザインではなく、きっと甲冑の怪物が乗っているのだと
思います。人の大きさを考えるとかなりのサイズですね。
こういう空飛ぶ船があったら、ぜひ乗ってみたいです!
帰りの保障はなさそうですが・・・。
聖アントニウスの誘惑 (2)

「中央パネル  中央下」
魚の船に乗っている怪物が漁をしているのを最近知りました。
大漁に網にかかっていますね。魚を横取りしようと鳥が
一緒に入っているのは、ボスの鋭い眼識を感じます。
聖アントニウスの誘惑 (4)

「中央パネル  右側中央」
馬に乗っている白黒の男と、ブリキのような甲冑男。
彼等は東方三博士を意味しているような、していなかった
ような。(画像内に三名いなくてすみません)
左下の老婆と子供はマリアとキリストのパロディです。
聖アントニウスの誘惑 (3)

「左パネル  左中央」
バグパイプを勢いよく吹き鳴らすグリロス型怪物。後ろ足は
鹿のような動物で、尻尾は鳥の止まり木になっています。
お尻からぴゅっと出ているのは、ボスのジョークですかね(笑)
聖アントニウスの誘惑


まとめ


 絵画では作品の中央部やメインに力を入れがちで、隅っこの部分やモチーフの隙間は手を抜きがちです。(私がそうです。隙間に何を描き込めばいいか悩むんですよね・・・。) しかし、ボスは隅っこや隙間にも、メインに負けず劣らずな、魅力的な怪物を敷き詰めています。しかもそれら全てに関連性があり、一つの大きなうねりの中で壮大な作品が作りあげられているのです。常人には真似できない、神業だと私は思います。

→ グリロス(頭足人)について知りたい方はこちら


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