sebastiano ricci 1659 1734 -

 ギリシャ神話に登場するパエトンは、太陽神アポロンとニュムペーのクリュメネーとの間に生まれた息子です。
 彼は友人から「お前は本当にアポロンの息子なのか?」と言われ笑われたので、それを証明するために日の出の方角へ旅をし、父親の宮殿へ赴きました。全身から光を発すアポロンに気圧されながらも、彼は「あなたの父親と証明できる何かをお授けください」と頼みます。アポロンは快く了承し、「何でも願うがいい」と答えます。しかし、パエトンが願ったのは「太陽の二輪車を一日御させてください」でした。父親はそれだけは命の危険があるから止めてくれ、自分ですら太陽を御するのは難しい時がある、と息子を説得しようとしますが、聞く耳を持ちません。結局アポロンは折れ、二輪車を貸すことにしました。

 しかし、それが悲劇の始まりでした。目を輝かせて二輪車に乗ったパエトンですが、発車した途端に引く馬のスピードと凶暴さに恐れ、やがて手綱を離してしまいます。太陽は大暴走し、そこら中を焼け野原にしてしまいました。山は焼け、川や海は干上がり、北アフリカ辺りは砂漠となり、エチオピア人は肌が黒くなってしまいました。豊穣神は「このままでは世界が滅んでしまう!」とゼウスに助けを求めました。最高神はやむなく雷霆を使ってパエトンを撃ち殺してしまいました。パエトンの遺体はエリダノス河に落ち、彼の姉妹のヘリアデスたちは悲しさのあまりポプラの樹になってしまい、樹が流した涙は琥珀になったそうです。
 血気にはやる余り命を落としてしまったパエトンの絵画、12点をご覧ください。

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「二コラ・プッサン作  1635年」
アポロンの宮殿は宝石がちりばめられ、非常に美しい建物でした。
そこで太陽神アポロンは日月の神、時の神、春夏秋冬それぞれの神
を従えて、玉座に座っていました。そこへパエトンが歩み寄ります。
Saturn and the Four Seasons  1635 二コラ・プッサン

「Nicolas Bertin 作  1720年」
「僕の父親であるという証明に、一日でいいから太陽の二輪車を
引かせてください」とパエトンは頼みます。アポロンは「それは危険
だから止めなさい」というものの、息子は「やりたい」と言ってききません。
1720  Nicolas Bertin

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1604年」
パエトンは念願の二輪車に乗ることができましたが、操縦することが
出来ずに暴走させ、世界中を焼け野原にしてしまいます。地上のみならず
天界の山川までもが被害を受けました。
豊穣神はゼウスに「どうにかして下さい・・・!」と頼みます。
Peter Paul Rubens1604

ジョゼフ・ハインツ・ザ・エルダー作  1564年」
ゼウスは他の神々を集めて審議をし、少年を打ち落とすことに
決めました。彼は高い塔に登っていき、自身の最強武器である雷霆を
使ったのです。鋭い雷がパエトンを貫きます!
HEINTZ, Joseph the Elder  1564

セバスティアーノ・リッチ作   1659-1734年」
パエトンは真っ逆さまに地上へと落ちて行きます。
彼についての絵画のほとんどが墜落をするシーンでした。やはり
一番ダイナミックで劇的、悲劇的な場面だからでしょうか。
sebastiano ricci 1659 1734

ヨハン・マイケル・フランツ作   1768年」
この作者はドイツの方ですが、ロココ調の作品ですね。雷霆を振り上げた
ゼウスの横にはヘルメスやヴィーナスと思われる神々がいます。
なんだか皆様目線がパエトンに向いていないような・・・。
Johann Michael Franz   1768

ジェームス・ワード作  1769‐1859年」
墜落寸前のパエトン。馬が「ヒヒーン!?」って感じに放り投げられていて、
ちょっと可哀想に見えます・・・。彼は河の中へ落ちてしまいます。
James Ward

Frans Francken the Younger 作  17世紀」
画面中央で小さく落ちているパエトン。風景と群衆画の一部になって
いますね。あと、右側で超巨大な岩のようなものを持っている人が気に
なるのですが…。岩を運ぶ罰を受けたシーシュポスでしょうか。

それにしてもでかすぎるような・・・。
Frans Francken II

「ルカ・ジョルダーノ作  1634-1705年」
河の神エリダノスは亡くなった彼を抱き留め、燃えている身体を冷やして
あげました。そして河のニュムペーたちは墓を立てて、
彼の失敗を怒るのではなく、その勇姿を称えました。
Luca Giordano - The Fall of Phaeton

ハンス・フォン・アーヘン作  1552‐1615年」
パエトンの姉妹たちは死を悲しんでいるうち、ポプラの樹になってしまい
ました。彼女らの涙は幹から絶えず滴り続け、琥珀となったのです。
Hans-von-Aachen  The-Fall-of-Phaeton

ヨハン・リス作  17世紀」
河の神エリダノスと思われる老人が「およ?」と言った感じで上を
見上げています。なかなかくつろいでいますね・・・。右側のニュムペー
たちは彼の勇気を称えていて、左側では妹たちが嘆き悲しんでいます。
あえて布を真っ黒にすることで、喪を伝えているのでしょうか。
Johann Liss  17th

「ジョヴァンニ・アントニオ・バッツィ作  1500年頃」
また、パエトンの母のクリュメネーも酷く悲しんだとされています。
画面中央の女性はクリュメネーでしょうかね。
ていうか、左下の白鳥の怪物は一体なに!?グリロスか!?
→ 頭足人グリロスについての絵画を見たい方はこちら
Giovanni Antonio Bazzi  1500

 ギリシャ神話において、パエトンと太陽に近付きすぎて墜落した少年イカロスの二人は「やるなと言われたことをやり、破滅した若者」として紹介されます。 大人の忠告を無視し、どちらも太陽によって自滅してしまいました。「若気の至り」という言葉もあるように、若い頃は自らの力を壮大的に考えがちです。そんな血気はやる年頃の若者を戒める為に、これらの話ができたのかもしれませんね。
 ですが、ニュムペーたちはパエトンの勇姿を誇り、彼の墓に「その高き望みは尊し」と刻み込んでいます。やるなと言われたことをやり、世界を破滅寸前に追いやった者を褒める。そこに神話ならではの深さがありますね。大人になったら社会の尺度に順応してしまい、自分の力量を「こんなもの」と断定してしまいがちです。断定をしてしまえば、成長はありません。人間の成長は失敗あってこそで、パエトンの行為は結果的に命を落としてしまったものの、その強い意志は現代においても尊いもののように私は思います。

→ イカロスについての絵画を見たい方はこちら


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