Thomas Willeboirts -

 ギリシャ神話に登場するアドニスは、女神ヴィーナスに愛された美青年です。
 ある日、ヴィーナスは息子エロスと遊んでいるうちに、恋の矢で自分の胸を傷付けてしまいました。彼女はすぐに払いのけましたが、傷は想像以上に深いものでした。その時、近くにアドニスが通りかかったのです。ヴィーナスは瞬く間に恋に落ちてしまい、アドニスのことしか考えられなくなりました。彼は狩人だったので、ヴィーナスはアドニスと共に森や山を歩き、野兎や鹿などを追いまわしました。ヴィーナスは「いいですか。狼や獅子、猪など危険な動物には決して近付いてはなりません。私がいない間に身を危険にさらしてはいけませんよ」とアドニスに忠告し、用事を済ます為に二輪車に乗って大空を駆けていきました。

 しかし、アドニスは気高く血気盛んな若者だったので、忠告を無視してしまいます。猟犬が猪を発見するやいなや、彼は槍を動物の脇腹に突き立てました。すると、猪はひるむことなくアドニスに突進し、逃げる隙もなく青年の脇腹に牙を付きたてたのです!アドニスは悲鳴を発し、野原に倒れ込みました。その叫びを聞いたヴィーナスはUターンし、血まみれになったアドニスの元へ駆け寄ります。あまりの悲しみに彼女は髪をかきむって胸を叩き、運命の女神を呪いました。「すべてを運命の女神に委ねるなんてできない。私はアドニスの死と悲しみを風化させないようにする。あなたの流した血は、美しい花となるのです」ヴィーナスはそう言ってネクタル(神酒)を彼に流しました。すると、ザクロのような赤色の花が咲き出し、この花はアネモネと呼ばれるようになりました。
 悲劇の青年アドニスとヴィーナスの絵画14点をご覧ください。

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ジャン=バプティスト・ルニョー作  1754-1829年」
息子エロスの矢によって、恋に陥ってしまった愛の女神ヴィーナス。
狩人アドニスは生き生きとした美青年で、プライドの高い人物でした。
Jean Baptiste Regnault 1754-1829

「Jacopo Amigoni 作  1740年」
いちゃいちゃするお二人。三名のエロスが「お二人お似合い~!
きゃっきゃ♪」とはやし立てているようです。
Jacopo Amigoni, Venus and Adonis  1740

セバスティアーノ・リッチ作  18世紀」
更にいちゃいちゃするお二人。ヴィーナスは花輪を作って頭に
掛けてあげています。左のエロスは狩りに出かけたい犬に「めっ!」と
しているようですね。愛は狩猟がお嫌いなのです。

Sebastiano Ricci, Venus and Adonis, 18th

パオロ・ヴェロネーゼ作  1580年」
もっといちゃいちゃするお二人。少しくどくなってきました。
ぐーぐーと膝枕で寝るアドニスに、ヴィーナスは謎の旗(?)を立てて
います。はがい絞めにされているワンコを見て「これは私のものよ。
危険な狩猟には行かせないわよ・・・」という執念でしょうか。
Paolo Veronese Venus and Adonis  1580

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  17世紀前半」
しかし、やはりアドニスは狩人です。危険な狩猟だってやりたいのです。
「兎や鹿とか、安全な動物は狩ってもいいわ。でもね、獅子や狼、
猪が出たら真っ先に逃げてちょうだい」とヴィーナスはアドバイスします。
Peter_Paul_Rubens_Venus_and_Adonis

「ティツィアーノ・ヴェチェッリオ作  1554年」
「分かったよ。じゃあ行ってくる」と言うアドニスに「ちょっと待って!
本当に分かった?ちゃんと私の言っていること守ってよ?」と念押しを
しているように見えます。胴体をがっつりと掴んでいますね・・・。
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ 1554

コルネリス・ファン・ハールレム作 1562-1638年」
「うん、分かったよ・・・」「なんか返事が弱々しいわね。まぁ、いいわ。
行ってらっしゃい。私は用事があるから、二輪車で天界へ行ってくるわ」
二人の間から、なんかもの凄い緊迫感が・・・。しかし、そこまで念を
押しても、アドニスは猪を追っかけてしまうのです。
Haarlem van Cornelisz Venus and Adonis

「Jacopo Bertoia 作  1560-66年」
悲鳴を聞きつけたヴィーナスは急いで戻りますが、目に飛び込んで
来たのは脇腹から大量出血をしている無惨なアドニスの姿。
「そ・・・そんな、あれだけ言ったのに!」エロスたちも悲し気な顔です。
Jacopo Bertoia s 1560-66

ベンジャミン・ウエスト作  1738-1820年」
「アドニスの馬鹿・・・。私を置いて行ってしまうなんて。彼を奪った
運命の女神なんて大嫌い。絶対に好き勝手にはさせないんだから。
せめて、あなたの血で真っ赤な花を生み出してあげる・・・」と
ヴィーナスは彼の耳元でささやきました。
Benjamin West

「Thomas Willeboirts 作 1642年」
こうして命を落としたアドニスは、ネクタルを与えられ、アネモネの花に
なったのでした。ぐったりと倒れるアドニスと、頭上を見上げて溢れる
涙をこらえようとするヴィーナスの姿。構成が美しい作品です。
 Thomas Willeboirts

ホセ・デ・リベーラ作  1591-1652年」
アドニスの死の絵画はまだ続きます。バロック期の暗黒主義の画家、
リベーラは少し不気味にも思えるシーンを描いています。ん?右側の
おじさんは一体誰?自画像だったりして・・・?
→ 
暗黒主義(テネブリスム)についての絵画を見たい方はこちら
Jusepe de Ribera - The Death of Adonis

ルカ・カンビアーソ作  16世紀」
むっちむちなお二人ですね・・・。なんかもう凄いポーズをとって
アドニスの死を嘆き悲しんでいます。

Venus y Adonis - Luca CAMBIASO

マールテン・ド・フォス作  16世紀」
ルネサンス期のヴィーナスさんはあまり悲しみを表現していませんが、
代わりにエロスが全力で悲しんでいるようです。
Marten de Vos, Venus and Adonis, 16th

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1614年」
ルーベンス二枚目。人体むっちむちです。アドニスとヴィーナスだけ
ではなく、謎の女性三名も駆けつけてくれたようです。
彼女たちは運命の女神モイラではないかという情報をいただきました。
1614, by Peter Paul Rubens
 
 自尊心や血気盛んな気持ちにより、命を落としてしまったアドニス。その化身とも言えるアネモネの花言葉は、「儚い夢」「儚い恋」「薄れゆく希望」「真実」「君を愛す」「恋の苦しみ」「嫉妬の為の無実の犠牲」「希望」「期待」です。
 ・・・なんか、まんまアドニス状態ですね。「嫉妬の為の無実の犠牲」というのは、冥界の女神ペルセポネも彼に恋し、嫉妬によって殺したという逸話もあるため。今回、私は「ギリシア・ローマ神話 トマス・ブルフィンチ著」の書籍を参考にさせていただいたので、それには触れていません。「君を愛す」「希望」などの花言葉が混じっていても、恋人には決してアネモネをプレゼントしない方が良さそうですね・・・。

(Wikiより)
anemone



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