Bernardino Mei  1655 -

 常に冷静で温厚なキリストだってブチ切れる時はあります。新約聖書において、キリストが大暴れする衝撃的なお話があるのです。
 キリストと弟子たちはイスラエルへ行った際、「過ぎ越し祭」が賑やかに行われていました。祈りを捧げる神殿内も人でごった返しており、動物たちの鳴き声が響いていました。イスラエルでは罪を清める為に動物を生贄として奉納する習慣があり、神への捧げ物ですから無傷の動物が必要とされていました。その為、境内には牛や羊、鳩が売られていました。また、ローマの硬貨をお賽銭にするのは罰当たりな行為とされていたので、イスラエルの古い硬貨に変える両替屋も商売に精を出していました。

 その光景を見て、キリストは激怒しました。落ちていたロープを結んで鞭を作り、振り回しながら動物たちを追い散らし、両替屋の台を蹴り倒して金を飛び散らかしました。憤怒像の如く怒り狂う姿は誰も止められません。そして、「こんなものはここから出せ!私の父の家を商売の家にしてはならぬ!」と怒鳴りました。神への真摯な祈りを捧げる場、神への誠意を示す奉納が「金儲け」という俗性に穢されたことにどうにも我慢がならなかったのです。商人たちはキリストの激しい行いに文句を言うことができず、神殿を後にしました。
 「神殿から商人を追い出すキリスト (Christ Drives Money-Changers from the Temple)」という主題である、キリストが大暴れをする作品15点をご覧ください。

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「ジョット・ディ・ボンドーネ作  14世紀」
神殿の前で、鞭を手に持ったキリストが地味に机をひっくり返し、
商人に攻撃しようとしています。左側に弟子達が、右側に商人たちが
おり、右側隅のお爺さんズは「なんだあいつは」と囁き合っている
ようにみえます。
Giotto  14th

「エル・グレコ作  1570年」
青い色調で統一されたグレコの作品は、中央でキリストが攻撃乱舞
して人々を蹴散らしています。ロープの鞭で殴りつけられると
結構痛いような・・・。
El Greco 1570

「エル・グレコ作  1600年」
グレコさんパート2。30年後に描かれた作品ですが。どちらかと言うと
キリストの激しさは減じ、激怒で攻撃と言うよりも罰を与えている
ように見えます。人々も「うわっ!ごめんなさい!」と言っているかのよう。
El Greco  1600

「作者不詳  1570年頃」
画面中央で地味ー・・・にキリストが鞭を振り上げています。人物の
描き方や構図などブリューゲルの影響を受けたことが伺えます。
動物より怪しい物が売られていそうですね・・・。
 Unknown artist  1570

「ガロファロ作  1540年」
ロープを掲げ、峻厳と立ち向かうキリスト。机が倒されて避難している
人もいますが、心なしか人々の反応がクールです。左側では男性が
「なんだこいつ」と言わんばかりに指を指しています。
ca1540, Garofalo

「Jan Sanders van Hemessen  作  1556年」
ひときわ大きく描かれたキリストが凄まじいスピードで鞭を振るい、
打ち倒された人々の屍の山(?)が築かれています。
キリスト無双ってゲームが出そうですね・・・。(罰当たり)
Jan Sanders van Hemessen  1556

「Giuseppe Passeri 作  1712-14年」
発光しているキリストはサイヤ人の如く、人々に突撃しています。
神殿の柱にしがみつく青年の恐怖が伝わってきます。
キリストに触れた者は塵と化しそうですね・・・。
Giuseppe Passeri 1712-1714

「Scarsellino 作  1580-85年」
鳩を持つ女性を標的にし、鞭を振り上げるキリスト。我が父の神殿を
商売として利用した者は老若男女問わずブチ叩きます。
Scarsellino 1580-1585

「レンブラント・ファン・レイン作  1626年」
表情が仁王像様の如く。レンブラントは人物をアップにした迫力ある
作品を描いています。キリストの父ヨセフの職業は大工であり、
もし仕事を手伝っていたのだとしたら、上腕二頭筋はムキムキですね。
Christ Drives Money-Changers from the Temple

「ヤーコブ・ヨルダーンス作  1650年」
こちらはお祓いをするが如く、右から歩いてきたキリストが直立不動で
ロープを振るっています。商人たちだけではなく、祭司たちまでもが
「何事じゃ!?」と様子を見に来ているようです。
Jacob Jordaens  1650

「Nicolas Colombel  作  1682年」
魔力(?)でピンと張ったロープを振ろうとする救世主。
足元では落ちた金を拾う男性がおり、中央の男性がそれを示して
います。キリストによって罰せられても欲に負けてしまう、浅はかな
人物を描いています。
Nicolas Colombel  1682

「Theodoor Rombouts 作  17世紀」
無表情で鞭をふるうキリスト。鬼気迫る迫力があり、マジ切れしている
のが伺われます。こんな時に冗談の一つでも零したら、恐ろしい結末が
待っていそうです・・・。
Theodoor Rombouts 17th

「Valentin de Boulogne 作  1618年」
カラヴァッジョ風の暗闇の中、キリストが机を持って鞭を叩きつけようと
しています。左の男性や右の老人はあまりの恐怖に腰を抜かして
しまったようです・・・。
Valentin de Boulogne 1618

「カール・ハインリッヒ・ブロッホ作   1834-90年」
商人らに「お前は本当に救世主なのか?」と疑われた際、キリストは
「この神殿を破壊してみせよ。三日で建て直して見せる!」と宣言した
そうです。46年かけて作った建物が3日で作れるかよ、人々は馬鹿にしたの
ですが、これは自分が三日後に復活するという比喩だったそう。
カール・ハインリッヒ・ブロッホ 1834-90

「Bernardino Mei 作   1655年」
おばあちゃんを虐めちゃ駄目よキリスト!とりあえず標的は白鳩
のようですが、白い鳩の象徴は聖霊ではなかったですか・・・?
鳩に罪はないし、見逃してあげてください・・・。
Bernardino Mei  1655

 この主題を始めて知った時、「キリストでもこんなアグレッシブなことをするんだ!」」と思いました。慈悲や救済を象徴し、娼婦であるマグダラのマリアを助け、嘲笑する民衆や裏切者のユダにも怒らず、「右の頬を叩かれれば、左の頬を差し出しなさい(汝の敵を愛せ)」と言っているお方が、鞭を振り回して暴走されるとは・・・。聖なる地で金儲けをされることに余程腹が立ったのですね。キリストは神の子でありますが、感情豊かな人の子でもありますね・・・。



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