Anne-Louis Girodet de Roussy-Trioson  1819 -

 ピュグマリオンはギリシャ神話に登場する彫刻家です。(一説にはキプロス島の王)
 女性嫌いである彼は「一生結婚しない」と誓っていました。しかし、ある日ピュグマリオンは大理石で乙女像を彫ってしまいます。その出来栄えは実に見事で、美しく滑らかで、今にも動き出しそうな姿をしていました。彼はこの像に一目惚れをしてしまいます。ガラテアと名付けた像に優しく触れたり抱きしめたりし、綺麗な洋服を着せ、ネックレスやイヤリング、指輪などを付けてあげました。そうするとより人間らしく感じるようになり、ますますピュグマリオンはガラテアを愛するようになりました。いつしか彼女を妻にしたいと切に願うようになります。しかし、ベッドで添い寝をしていると、ガラテアの身体は硬く冷たいまま。彼は深く悲しみました。

 その後、キプロス島でヴィーナスの祭りがありました。ピュグマリオンは祭壇で「どうか私にあの乙女をお授けください」と強く祈ります。ヴィーナスはその愛を汲み取り、願いをかなえてやりました。彼が帰宅して乙女に接吻をすると、なんと柔らかく温かいではありませんか!驚くピュグマリオンを、ガラテアは恥ずかしそうに微笑んで応えます。こうして二人はヴィーナスの祝福の下で結婚し、パポスという子供を産んで幸せに暮らしました。
 究極の愛を求めるピュグマリオンとガラテアの絵画15点をご覧ください。

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「13世紀のフランス写本、薔薇物語の挿絵」
ピュグマリオンの物語が順番に描かれ、左上からジグザグに
進んでいます。ドレスを縫うピュグマリオンのるんるん♪という感じが
何とも言えず・・・。ガラテアさんも中世風の洋服をしていますね。
Miniature illuminations   Le roman de la rose

ジョゼフ・ワーナー作 1637-1710年」
女性嫌いであったはずのピュグマリオンは、自分の作った完璧な姿の
大理石像に恋してしまいます。絵画ではガラテアに首飾りをプレゼント
しようとしているのでしょうか。傍らで黒人が複雑な表情で見ています。
Pygmalion And Galatea by Joseph Werner

「Laurent Pecheux 作  1784年」
「ああ、愛しのガラテア。美しいガラテア!」と言った感じですね。
背後で子供たちが「あの人大理石像に愛してるって言ってらぁ~」
「うわ~変なの」と会話していそうです。
1784   Laurent Pecheux

ジャン=バプティスト・ルニョー作  1786年」
こちらのガラテアは珍しく座って鳩を持っていますね。
「ねぇガラテア、どんな宝石が欲しい?ダイアモンド?ルビー?」
という風に彼は話しかけ続けます。返答はないと知りつつも・・・。
 Jean Baptiste Regnault

ゴッドフリード・シャールキン作  1643-1706年」
暗黒主義風の暗闇の中、ピュグマリオンはうっとりと彼女の容姿に
見とれています。ガラテアさんが胸像なんですが、人間化した時に
大丈夫なのでしょうか?生えてくる・・・?
→ テネブリスム(暗黒主義)についての絵画を見たい方はこちら
Godfried Schalcken

「Louis Gauffier 作  1762-1801年」
「お願いです。妻ガラテアを授けてください!」という
ピュグマリオンの真摯な願いを聞きとどけ、ヴィーナスはガラテアに
命を吹き込みます。白い衣をまとってぶわっと登場!
絵画では魂の象徴である蝶を与えていますね。
Pygmalion and Galatea - Louis Gauffier

「ジャン・ラウー作  1717年」
こちらの女神は額にそっと触れ、三人がかりで命を与えています。
青年はエロス、子供はクピドでしょうか。
(両者は同一視されておりますが、合っているのかな・・・?)
Jean Raoux 1717

「ドイツの画家作  18世紀」
貝型の椅子に座ったヴィーナスが頭をがしっと掴んで命を与えています。
ガラテアが何とも言えない表情をしております・・・。
なかなか個性的な作品ですね。
German School   18th

アーニョロ・ブロンズィーノ作   1570年」
こちらのガラテアも表現しがたい無表情でこちらを見つめています。
後ろの牛の祭壇はヴィーナスを祀るものでしょう。
人間にはなれたようですが、ちゃんとハッピーエンドになれたのかしら・・・?
Bronzino Agnolo - Pigmalione e Galatea 1570

アーネスト・ノーマンド作   1886年」
大半の絵画は上半身は人間、下半身は彫像として描くことで、奇跡の
変化を表現しています。一説にはヴィーナスの容姿を真似て造った
とされています。ピュグマリオンは超絶美女がお好みか・・・。
Ernest Normand  1886

ジャン=レオン・ジェローム作  1890年」
ピュグマリオンの絵画の中で一番有名な作品。彫像ではできない
しなやかな動きが、人間となった感動を一層強めています。
ダーク好きな私としては右隅のマスク的なものが気になってしまい
ます・・・。演劇に使われる仮面なのでしょうか?
Jean-Léon Gérôme  1890

「Louis-Jean-Francois Lagrenee 作  1725-1805年」
ほぼ完全に人間となったガラテアに縋りつくピュグマリオン。
さり気なくクピドがガラテアの布を触り、二人を祝福しています。
Louis-Jean-Francois Lagrenee

アンヌ=ルイ・ジロデ=トリオソン作   1819年」
幸せの絶頂である両者を、クピドがニヤニヤして結び付けようとして
いますね。表情も色彩も柔らかく、美しい作品です。
Anne-Louis Girodet de Roussy-Trioson  1819

「ヘンリー・ハワード作   1802年」
フュースリ調の暗闇の構図で描かれた奇跡の変化。
おじさんの像が支えている貝型の椅子の上で正座をしているという、
独創的なガラテアさん。ヴィーナスを意識してでしょうかね。
Henry Howard   1802

ジョゼフ・デニス・オデバイア作  1882年」
二人は結婚し、パボスという子供が産まれました。パポスは立派に
成長し、その子供が父の名を継いだ国パポスの王となり、
ヴィーナスを祀る立派な神殿を築いたそうです。
Joseph-Denis Odevaere  1882

 彫刻の乙女を妻にしたいと強く願い、期待通りとなったピュグマリオン。この物語は教育心理学にも用いられ、教師や親の期待度が強いと、学習者や子供の成績が向上するという現象を「ピグマリオン効果」と呼んでいます。逆に期待が全くないと成績が低下することを「ゴーレム効果」と言うようです。これはユダヤ教のラビが用いる人造人間ゴーレムに由来していそうですね。創造した者の期待を裏切ってゴーレムさんは暴走したからでしょうか・・・。
 ピグマリオン効果は現代においては疑問視されているものの、私はありそうに思います。褒めてばかりではいけませんが、期待度が高ければ熱意が伝わり、その分やる気が出て成績に影響してきそうですから・・・。また、ちょっと違うと思いますが、植物は「元気よく育ってね!」「綺麗だね~」と声をかけてあげると、成長スピードが速くなったり、長持ちしたりするそうです。
 やはり生物はネガティヴな感情よりも、ポジティヴな感情を受けた方がやる気が出て、期待通りの結果が出せるのかもしれませんね。



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