Christian Kohler, 1859 -

 「オセロー」はシェイクスピア作の四大悲劇の一つであり、部下の奸計によって妻を殺めた指揮官の物語です。
 オセローはムーア人のヴェニス指揮官です。尊敬されていた彼はデスデモーナと愛し合い、結婚します。幸せな日々が続くと思いきや、部下イアーゴーは昇進させなかったオセローを憎んでおり、陥れようと企んでいたのです。
 イアーゴーは副官であるキャシオーを煽り、地位を解任させてしまいます。イアーゴーはキャシオーに「デスデモーナに復権を頼みな」とアドバイスし、その通りにします。そして、彼はオセローに「キャシオーとデスデモーナは密通しているぞ」と嘘をついたのです。始めは信じなかったオセローも「あいつは彼女のハンカチを持っていた」と聞くと、段々と妻が疑わしく感じてきます。そして、キャシオーの情婦ビアンカがハンカチのことを話題に出し、オセローはその嘘を信じ込んでしまうのです。イアーゴーはロダリーゴにキャシオーを暗殺させようとしますが、彼は一命を取り留めます。

 怒るオセローは白状しろと暴言を言うものの、濡れ衣のデスデモーナは無実を訴えます。聞く耳を持たないオセローは、寝室で彼女の首を締めてしまうのでした。その後、イアーゴの妻エミリアはハンカチを拾って夫に渡したのは自分であり、不貞の噂を流したのは夫であると告白します。イアーゴーは身の危険を感じ、妻を刺して逃走してしまいます。全ては策略であったことを知ったオセローは、深い後悔と絶望に襲われ、デスデモーナを殺めてしまったことを嘆きました。彼はヴェニスの使者たちに事件をありのままに話すよう告げ、短剣で自らの胸を刺し、愛しい妻の隣で息を引き取るのでした。
 愛と懐疑と裏切。愛憎に満ちたオセローの絵画16点をご覧ください。

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テオドール・シャセリオー作  1849年」
ムーア人で、ヴェニスの指揮官であるオセローと、元老院議員の娘
であるデスデモーナは人種や宗教を越えて、深く愛し合っていました。
Théodore Chassériau  1849

ウィリアム・パウエル・フリス作  1819-1909年」
ムーア人は北西アフリカに住む、イスラム教徒である人々です。
彫刻のような浅黒いオセローが、美しい妻をガン見しておりますね。
この作品ですと、結構な年の差婚なのかしら?
William Powell Frith

ウィリアム・マルレディー作  1786-1863年」
ムーア人は本来ならベルベル人の事を指しますが、15世紀以降に
なるとイスラム教徒全般を指すようになったそうです。
上記の作品とは違い、この絵画はアフリカ系の容姿になっていますね。
ムーア人といっても、画家の想像する人種はまちまちのようです。
Othello by William Mulready

トーマス・ストーサード作  1755-1834年」
幸せ絶頂のオセローに、不満を抱きまくる部下がいました。
旗手イアーゴーです。副官にしてもらえずに恨みを抱いており、
陥れてやろうと虎視眈々と狙っておりました。右端におりますね・・・。
Thomas Stothard - The Return of Othello

「ウジェーヌ・ドラクロワ作  1850-54年」
オセローはデスデモーナの父の了承を得ずに、黙って結婚をしました。
イアーゴーはまず手始めに、その事を父親ブラバンショーにチクります。
彼は怒り狂い、オセローとデスデモーナを罵倒します。ドラクロワの
作品では、追いすがる娘にキレまくっていますね。
Eugene Delacroix 1850-54

チャールズ・ウェスト・コープ作  1868年」
怒り心頭の父に、オセローはデスデモーナへの愛を語り、やっとの事で
認めてもらうことができました。こちらは双方とも冷静な表情を。
Charles West Cope 1868

カール・ベッカー作  1820-1900年」
頭の固い議員である父に認めてもらい、オセローとデスデモーナは
公認の夫婦となりました。この絵画では、デスデモーナも疑いの
目を向けているように感じられるのですが・・・。気のせいですよね?
Carl Ludwig Friedrich Becker

ソロモン・ハート作  1855年」
オセローを破滅させようと、イアーゴーは副官キャシオーと
デスデモーナは通じていると嘘をつきます。イアーゴーは善人を
取り繕っており、信頼も得ていたので、オセローは段々と妻を疑う
ようになりました。
Solomon Alexander Hart  1855

ダニエル・マクリース作  1806-70年」
悩みのせいで頭痛が酷いオセローに、デスデモーナはハンカチを
頭に巻いてあげようとしますが、それを拒否します。そのせいで
ハンカチは落ち、イアーゴーの妻エミリアが拾ってしまうのです。背後に・・・。
Othello And Desdemona by Daniel Maclise

テオドール・シャセリオー作  1849年」
オセローの冷たい態度に「一体どうしちゃったのかしら?」と考え込む
デスデモーナ。エミリアは「男の正体なんて、一年や二年で分かる
もんですか」と言います。
Théodore Chassériau  1849-

「Hans Zatzka 作  1859-1945年」
ハンカチ事件により妻の不義を信じ込んでしまったオセローは
殺害を決意してしまいます。彼は寝室へやって来て、デスデモーナの
寝顔を見ながら葛藤に満ちた長い独白するのでした。
Hans Zatzka

「Antonio Muñoz Degrain 作  1880年」
こちらの作品は色味や向きこそ異なりますが、上記の作品と非情に
よく似ていますね。異国情緒あふれた幾何学模様の壁や床が美しいです。
Antonio Muñoz Degrain  1880

「ウジェーヌ・ドラクロワ作   1847-49年」
目覚めたデスデモーナに彼は「今のうちに罪を神へ懺悔しておけ」と
非情にも告げます。死が迫っている事を感じた彼女は必死に無実を
訴えますが、取りつく島もありません。
Eugene Delacroix  1847-49

アレクサンドル・マリエ・コリン作  1829年」
オセローは激情に任せ、妻の首を締めて殺してしまうのでした。
デスデモーナは夫に恨み言を言わず、身の潔白を訴えて息を
引き取りました。
Alexandre Marie Colin 1829

「ウィリアム・ソルター作  1857年」
エミリアが現れて事情を説明するうち、イアーゴーがでっち上げた嘘
だと判明します。妻は本当に無実だったのです。オセローは
主犯格に飛び掛かりますが、彼はエミリアを刺して逃走します。
その後、悪人イアーゴーは捕まったのでした。
William Salter 1857

「クリスチャン・コーラー作  1859年」
己の過ちを深く後悔し、オセローは短剣を取り出します。
デスデモーナに優しく口づけをし、彼は自らの命を絶ったのでした。
Christian Kohler, 1859

 ご存知かもしれませんが、オセローの名前はボードゲームのオセロの由来になっています。

黒人の将軍・オセロと白人の妻・デスデモーナを中心に敵味方がめまぐるしく寝返るというストーリーに、黒白の石がひっくり返りながら形勢が次々変わっていくゲーム性をなぞらえた。緑の盤面は、戯曲オセロの戦いの舞台、イギリスの緑の平原をイメージして作った。
――日本オセロ連盟のサイトより

 という理由からなるようで、1945年に日本で考え出されて以来、オセロは世界中でプレイされています。しかし、個人的に引っかかるのが「敵味方がめまぐるしく寝返るというストーリー」という部分。イアーゴーやロダリーゴは最初から腹黒であり、エミリアやキャシオーは騙された被害者ですし、立場が白黒入れ替わるというのは何となく違うような気がします。
 私が思うに、白と黒がめまぐるしく入れ替わっていたのは、オセローの心理だったのではないでしょうか。デスデモーナは潔白か、不貞か。信じるのか信じないのか。白か黒か。部下の進言と妻の愛に板挟みになり、苦しみ抜いたオセロー。最終的には盤面は全て黒に変えられ、オセローはデスデモーナを殺してしまいます。その後、妻は真っ白だったと悟るオセローは、絶望の内に自害してしまうのです・・・。
 そう考えると、もう平常心でオセロをプレイできないような気がします^^;



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