Pelt Merchant of Cairo  Jean-Léon Gérôme 1869 - コピー

 オリエンタリズムは西アジア周辺への憧れや関心を軸にした、西洋近代の芸術風潮です。東方趣味、異国趣味などと訳せます。18世紀頃に始まったとされ、19世紀頃に最盛期となりました。
 「オリエント」という語は「昇る」という意味から来ており、東側から日が昇る為にその名が付きました。西洋では長い間、東側に属するオスマン帝国と戦争を続けておりましたが、航海技術の発達と共に様々な異文化に触れる機会が増えてきました。東方世界は野蛮で不気味なものではないと分かり、進んで異国を調査する者も多く現れ、異国に対する興味が次第に高まっていくようになります。東方と言うとかなりの数のアジア圏の国が入ってしまいますが、イスラム文化圏の作品が多く見られたり、文化様式が混在したりしている作品があったりします。画家たちはエキゾチックで珍しい文化や風景、人物を、憧憬や興味の念を込めて描いたのです。
 では、オリエンタリズムについての絵画14点をご覧ください。

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「ウジェーヌ・ドラクロワ作  1834年」
有名な作品「アルジェの女たち」。アルジェリアのハレムの女奴隷&寵姫
であるオダリスクが描かれています。女性達がくつろぐ姿はセクシー
であり、どこか禁忌的な雰囲気を漂わせています。
ドラクロワ アルジェの女たち 1834

ジーン・ジョゼフ・ベンジャミン・コンスタント作 1845–1902年」
こちらもイスラム君主の側女オダリスクを描いた作品。
鮮やかな地中海(?)を背にして、セクシーに横になる姿が描かれています。
織物や衣服の紋様も異国的ですね。
The Favorite Of The Emir  Jean Joseph Benjamin Constant

ジーン・ジョゼフ・ベンジャミン・コンスタント作 1876年」
フラミンゴとたわむれる女性たち。フラミンゴはアラブやインド周辺に
生息しているので、その辺りをモデルにしているのだと思いますが、
色彩的に中国を思わせる作品ですね。
Jean-Joseph Benjamin-Constant, Le Flamant rose, 1876

ウォルター・チャールズ・ホースレイ作  1883年」
老人と女性はかつての若かりし頃を思い出し、過去に思いを馳せている
ようです。「かつてワシはこの剣で敵を300人めっためたに倒して・・・」
「あー私が若い頃は君主とねんごろな関係だったのに・・・」
と言った感じでしょうか。
1883  Walter Charles Horsley, Women and an Old Man in the Harem

「テオドール・シャセリオー作  1819-56年」
モンゴルや中国系の遊牧民を思わせる服装をした二人。
鑑賞者をじっと見つめる表情が、彼等の民族としての誇りが
感じられます。鹿が可愛いです^^
Théodore Chassériau - Constantine with a Gazelle

ジャン=レオン・ジェローム作  1879年」
インドっぽい雰囲気を称えている作品。右端で老人が笛を吹いており、
裸の少年が大蛇を操っています。背後の鮮やかな青、観客の
やる気なさそうな感じがインドっぽいです。
 1879

「Theodoros Rallis 作  1852‐1909年」
こちらも三匹の大蛇を操る女性が。しかし、こちらは全員が女性
であり、ハレムのオダリスクであると思われます。
異国風+蛇でエキゾチック感がアップですね。
Theodoros Rallis

ジョゼフ・オースティン・ベンウェル作  1864年」
ラクダに乗って移動する人々。アラブの異国情緒あふれる感じが
出ていますね。商人たちが物を売り買いしている場面でしょうか。
The Meeting Place 1864, Joseph Austin Benwell

モリッツ・シュティフター作  1857 -1905年」
新しいオダリスクの女性をスルタンに紹介している場面でしょうか?
それにしてもスルタンが不満顔だし、傍らの女性が含み笑いをして
います。もしかして、三角関係に陥ったとか!?
The Rhamazan Bride - Moritz Stifter (1857 -1905 )

「Jean Discart 作 1856-1944年」
「タンジールの陶芸工房」という題の作品。タンジールはモロッコの
都市で、画家は実際に足を運んで描いたものだと思います。
数多く並んだ壺に皿、釉薬は陶芸家の腕の素晴らしさを物語っています。
Jean Discart タンジールの陶芸工房( 1856-1944)

ルドルフ・スヴォボダ作   1859–1914年」
こちらも現地取材で描いたと思われる、絨毯職人の作品。
野外で埃にさらされながら一針一針縫っていく職人の姿は、
画家の心に深く刺さったに違いありません。白い鳩に餌をあげている
女性は平和の象徴なのでしょうか?
Rudolf Swoboda _carpet-menders

「Edouard De Jans 作 1855-1919年」
旧約聖書はユダヤ人の物語にも関わらず、オリエンタリズムになると、
このような姿で描かれました。うーん、アラブ系だけど、ユダヤ人
じゃないような気がする・・・。
→ 放蕩息子の帰還についての絵画を見たい方はこちら
Edouard De Jans - The return of the prodigal son

「Egisto Sarri 作 1837-1901年」
髭の立派なおじさんがゆったりと寝転がっています。
女性が主流のオダリスクですが、男性が描かれる場合もあります。
黒タイツが微妙にセクシーですね・・・w
Egisto Sarri (1837-1901) Orientalism - Elegant male Odalisque

ジャン=レオン・ジェローム作  1869年」
兜と虎の毛皮を持ち、こちらを見つめるイケメン系の異国風男性。
「カイロの毛皮商人」という題名なので、エジプトの作品でしょうか。
エジプトはアフリカなので東方とは呼べないような気がしますが、
オリエンタリズムは自由なのです・・・。
Pelt Merchant of Cairo  Jean-Léon Gérôme 1869

 オリエンタリズムが人気を催している19世紀の中頃、幕末の日本の工芸品がヨーロッパの万国博覧会で注目され、フランスを中心にしてジャポニズム(日本趣味)が興りました。日本の小物や洋服をとり入れたり、独創的な日本画の様式を真似たりするジャポニズムは、オリエンタリズムの進化系と言えそうです。
 その頃、日本でも西洋絵画が急速に入り込み、明治時代になると洋画が美術会の中心的な存在を占めるようになってきました。オリエンタリズムは異国の美術交流の入り口というか、双方の橋渡し的な役割を担っていたとも言えそうですね。



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