A jester with a cat, by Studio of Jacob Jordaens -

 宮廷道化師は中世~近代の西洋において、王や貴族などの支配者層に仕えたエンターテイナーです。
 古代エジプトやギリシャでも、様々な芸を披露して裕福層を楽しませた道化師はいたとされ、ローマ帝国では身体や精神に障害を持つ者を、魔除けとして奴隷にする習慣がありました。中世時代から宮廷道化師(ジェスター)という概念は生まれ、王や貴族に雇われた道化師は、王を楽しませる為にパフォーマンスをしたり、他者がはばかるような言動を進んで言いました。基本、身分は低くペット同然に扱われますが、宮廷道化師にも本当の愚者や、愚人のふりをした賢人など色々なタイプがおり、後者のタイプは良い待遇が与えられる場合もあります。国によってまちまちではあるものの、宮廷道化師は国王の権威が崩れた17~8世紀頃、姿を消していきました。
 では、第二弾である宮廷道化師の絵画16点をご覧ください。

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「作者不詳  17世紀」
いきなりのドアップ道化師。詳細不明の絵画ですが、インパクトに
負けて掲載しました。なんか夢に出てきてうなされそうです・・・。
A Jester 17th unknown


「作者不詳  17世紀前半」
問題児トム・デリーと棍棒のジョンという名の道化師らしい・・・。
題名は「We Three Loggerhead(我ら三匹のウミガメ?)」で、
理解力のない私はさっぱり分かりません(笑)
道化杖の顔が無表情すぎて、じわじわ来ます。
We Three Loggerheads early 17th (prob Tom Derry and Muckle John)

「フランドルの画家作  1550-75年」
二人の宮廷道化師は派手な服装をしておらず、一見一般人の
ようですよね。手前の人は日本で歩いていても、なんか違和感が
ないように見える・・・。何を話そうとしているんですかね?
Two Jesters, , Flemish School  1550-75

ウィリアム・ホルブルック・ビアード作  1825‐1900年」
スタンチクのような賢い高名な道化師はまれで、道化師は基本、
猿などの動物と同じ扱いをされていました。猿の姿をした道化師は
猫(?)の尻尾を掴み、のんびりとしていますね。
William Holbrook Beard - The Jester

「A.L. Grace 作  19世紀」
クリスマスカラーをした道化は、恰幅の良い貴族に何か話している
ようですね。笑顔でビールを飲んでいるということは、けなしては
いなそうですが、この後けなしモード発動するのかも・・・?
 Grace (British, 19th Century) - Court scenes

Eduardo Zamacois y Zabala 作 1841-71年」
楽器を持ってふんぞり返る小人の宮廷道化師。衣服が豪華で、
貴族にも敬意を表されているように見えますが、右側には犬がおり、
彼の身分は犬と同等という事が分かります。貴族の悪ふざけですね。
Eduardo Zamacois y Zabala The Favorite of the King

「Adriaen van de Vennen 作  1630年」
ご婦人のお着替えに乱入する道化師。あられもない姿で靴下を
履いており「きゃー!」となるかと思いきや、ご婦人は至って冷静な
表情。道化はペット同然で、気にする必要はないと言った感じですか。
Adriaen van de Venne Woman and a jester 1630

クロード・アンドリュー・キャルスロップ作  1871年」
肖像画に向かってべろべろ~とやっている道化師。
ソファーに座っている修道僧っぽい人物は嬉しそうにしているので、
肖像画の王が嫌いなのでしょう・・・多分。この王様見たことがある
ような気がするんだけど、思い出せない・・・。
CLAUDE ANDEW CALTHROP The Court Jester

「イタリア出身の画家  19世紀」
疲れて寝てしまった貴族の隣で、べべんと奏でる宮廷道化師。
歌っているのは、子守歌か、彼の武勲の歌か、はたまた彼をこけ下ろす
歌か・・・。もしかしたら周囲で他の人々が笑っているかもしれませんね。
Drunk Warrior and Court Jester, Italian Painting of 19th

「ヤーコブ・ヨルダーンスの工房作  17世紀頃」
ペットは飼い主に似るといいますが、道化師のふてぶてしい表情に
そっくりな、いかつい顔の猫ちゃんですねw
童話の物語に出てきそうな、迫力のあるお二人です。
A jester with a cat, by Studio of Jacob Jordaens

「ダフィッド・テニールス(子)作  1640年」
道化のアイテムとしてほぼ絶対に持っている道化杖。
この起源は判然としませんが、王が持つ王笏を模しており、笏杖を
道化が持つことで、あべこべの面白さを狙っているのだと思います。
杖との腹話術、曲芸、叩いて攻撃などに用いられます。
David Teniers (II) jester   1640

「フランドル出身の画家作  17世紀初期」
「わっしゃあまだ現役じゃーい!」と言った感じの、元気な笑顔を
見せる道化師のおじいちゃん。そう言えば、女性の宮廷道化師は
物語でしか見たことがありません。歴史上にいるのでしょうか?
フランドルの画家 Jester with a flag 17世紀初期

「ドイツのミュンヘンの画家作   1920年」
この満面の笑みが何とも言えません。マンドリンらしき楽器を弾いて、
皆を虜にするぜ!という意気込みが感じられます。
頭の孔雀の羽がイカしておりますw
By Munich School,   Court Jester Playing a Mandolin Circa 1920

「作者不詳  19世紀」
こちらもマンドリンを弾き弾き、犬と一緒に音楽ターイム。
なんだか楽しそうですね。それにしても、道化師の衣装は着るのが
大変そうに見えます。まぁ、ご婦人よりは着やすいかもしれませんが・・・。
The Court Jester Original Regency Period 19th

ウィリアム・メリット・チェイス作   1875年」
絵筆を持って、道化杖を見つめる道化師。道化杖って、ハンドメイド
なのでしょうか!?確かに売っている訳ではなさそうだし、王や貴族が
作ってくれないのなら、自分で作るしかなさそうですね。
William Merritt Chase - The King’s Jester, 1875

ジョン・ワトソン・ニコル作 1856‐1926年」
昔話を聞かせてくれそうな、素敵な道化師のおじいちゃん。
こんなおじいちゃんが欲しいですw
この方も道化杖のハンドメイド中なのですね。
John Watson Nicol - The court jester

 今気づいたのですが、王冠「crown」と道化「clown」はRとLが違うだけで、同じ読みなんですね。そこも「王がいつか道化にひっくり返るかもしれない。王権はずっとあるとは限らないもの」という真逆であべこべな皮肉が込められているように感じます。
 現代では宮廷道化師の文化は失われてしまいましたが、中世を模すお祭や、イベントで道化師の姿はしっかりと生きております。これからも伝統は無くさないでいて欲しいですね。

 下の写真は現代における素敵なおじいちゃんの道化師。ドイツのヴァインガルテンでパフォーマンスをする、道化ギルドに属する道化師さんのようです。外国版の宮廷道化師のwikiからお借りしました。(wikiはこちら)

VSAN_Wgt_2015_476_Markdorf

→ 宮廷道化師の【第一弾】を見たい方はこちら
→ スタンチクについての絵画を見たい方はこちら


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