Mikhail Petrovich 1835-1914 Ivan Terrible  Souls  Victims -

 「幽霊(ゴースト)」と聞くと、あなたは何を思い浮かべるでしょうか。日本人なら、白い着物を着て足が透明で、頭に三角の布を付けている姿を想像する人が多いのかもしれませんね。幽霊を描いた日本画は葛飾北斎、歌川国芳などが有名どころで、背筋がぞっとするような不気味な作品が数多くあります。
 しかし、幽霊を描いた西洋絵画はどんな作品があるだろうと考えると、あまりピンとこないのではないでしょうか。気になって、調べてみると西洋の幽霊は「戯曲や歴史、聖書に登場する幽霊」が多くを占めていました。誰かに何かを伝えようとする幽霊が多く、呪ってやるぞみたいな幽霊はあまり見られませんでした。しかし、中には不気味な幽霊絵画も・・・。
 では、幽霊にまつわる絵画13点をご覧ください。

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「Alexandre Bida 作  19世紀」
プルタルコスの著書によると、フィリッピの戦いの数か月前、暗殺した
ブルータスの元に、カエサルの幽霊が現れます。「私はお前の悪霊だ。
フィリッピでまた会おう」と言い残し、悪霊は消えます。ブルータスは
その戦いにおいて、自害してしまうのでした。
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Alexandre Bida ghost of Caesar with Brutus19th

テオドール・シャセリオー作  1819-56年」
シェイクスピアの四大悲劇「マクベス」より。王権の為にバンクォーに
暗殺者を放ったマクベス。しかし、宴の席にバンクォーの亡霊が
座っているのを目撃し、彼は正気を失っていくのでした。
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Macbeth Seeing the Ghost of Banquo by Théodore Chassériau

「ウィリアム・ブレイク作  1806年」
こちらはシェイクスピアの「ハムレット」より。弟に暗殺された王は
その事を伝えようと、息子ハムレットの元に亡霊となって現れます。
ハムレットは父親の復讐を果たそうと、狂気の道を歩んでいくのです。
William Blake Hamlet and his Father's Ghost 1806

ベンジャミン・ウィルソン作  1768–69年」
父親の亡霊に会うハムレットのシーンは人気で、多くの画家に描かれて
おります。甲冑をまとった立派な亡霊の影はちゃんとあり、あまり「幽霊
らしさ」という点は考慮されていないようですね。モデルになった俳優は
ウィリアム・パウエルのようです。
→ ハムレットについての絵画を見たい方はこちら
Benjamin Wilson, William Powell as Hamlet  1768–69

ニコライ・ゲー作  1857年」
「口寄せの家でサウルに現われるサムエルの霊」という題。
旧約聖書のサムエル記より。イスラエル王サウルは口寄せの女を訪ね、
サムエルの霊を呼び起こすよう求める。霊は「神はお前を見捨て、
ダヴィデが後を継ぐだろう」と予言し、サウルは恐怖におののくのです。
Nikolai Ge, depicting King Saul encountering ghost  Samuel 1857

ジョン・ダウンマン作  1781年」
アイスキュロスの悲劇「オレステイア」より。アガメムノンの妃である
クリュタイムネストラは夫を殺害し、息子オレステスに復讐の為に
殺されてしまいます。彼女の亡霊は復讐の女神達を呼び覚まして
息子を追いかけますが、アテネの裁判によりオレステスは助かるのです。
ghost of clytemnestra awakening furies   john  downman 1781

ヘンリー・ジャスティス・フォード作  1900年」
アテネに「鉄枷をはめた老人の幽霊が出る」といういわくつきの家が
ありました。家を借りた哲学者アテノドロスの前に、噂通り老人が
現れます。彼を外へといざない、中庭と掘ってみると鉄枷をはめた
白骨死体が発見されたという話は、記録に残る最も古い幽霊話です。
Athenodorus and the Ghost, by Henry Justice Ford, 1900

「作者不詳  1804年頃」
1803年、ロンドンの墓地付近で白い頭巾を被った幽霊が現るという
騒動が起きました。自警団が設置され、その中のフランシス・スミスと
いう人物は幽霊を発見し、発砲しました。しかしそれは間違いで、幽霊の
ふりをしていた人間だったのです・・・。この事件は瞬く間に世界中に広まりました。
magazine published in 1804-Hammersmith_Ghost

「作者不詳  1911年頃」
物が勝手に動いたり、扉が空いたり、ラップ音がしたり・・・。
幽霊が起こす現象の一つとされているポルターガイスト。
16世紀辺りの書物が名前の初出とされています。18世紀頃に
「フランケンシュタイン」「ドラキュラ」などのホラー小説がブームに
なったのは無関係ではないかもしれませんね。
Poltergeist-Therese_Selles

「Artur Grottger 作  1837-67年」
「幽霊」という題名。戦争か事故で亡くなってしまったのでしょうか。
夫の幽霊は愛する妻と我が子を心配そうに眺めています。
ただ唯一、犬だけが存在に気付いているようですね。
やはり西洋にも日本と同じような幽霊観がありますね。
 Artur Grottger

「フェリックス・ブラックモン作  1860-70年」
ランタンを持つ人に忍び寄る女性の幽霊・・・。詳しい内容は
分かりませんでしたが、霊の表情からあまり守護霊には見えませんね;
この後起こる事件を予期し、ほくそ笑んでいるのでしょうか・・・。
1860s-70 フェリックス・ブラックモン

「Mikhail Petrovich Botkin 作 1835-1914年」
「犠牲者の霊に怯えるイヴァン四世」という題名。雷帝という異名で
「ロシア最大の暴君」として恐れられた彼でしたが、晩年に息子を怒りに
任せて殺害した後、罪の意識にさいなまれて精神的に病んでしまい
ます。今までに処刑、殺害した人々の幽霊を見ていたのでしょうか・・・。
Mikhail Petrovich 1835-1914 Ivan Terrible  Souls  Victims

ミハイ・ジチ作 1880年」
「霊の刻」という題名。日本で言えば午前二時(丑の刻参り)が最も
幽霊が出やすい時間とされていますが、西洋ではどうなのでしょうか。
夜中には、悲劇の王女や斬首刑にされた人、白骨遺体が悲し気に
歩き回っているのです・・・。
Mihály Zichy - A kísértetek órája (The Ghost Hour), 1880

 こうして見てみると、心残りや怨念を持って「恨めしや―」と出てくる日本の幽霊像とは違い、予言者的な役割を担わされている幽霊が多いですね。カエサルは直接ブルータスを呪い殺さず、「お前は戦争の地で果てる」と親切に言いに来てくれています。サムエルの霊も予言をしてくれており、北欧神話にも主神オーディンが予言の巫女を蘇らせて神々の行末を聞くシーンがあり、西洋での幽霊は「霊体となったことで、未来が見えるようになった存在」と考えられるのでしょうか。(そういえば日本のイタコも予言をするのだから、似た思想なのかもしれません)
 妻を心配して出る夫の幽霊や、自分の埋められた場所を示す老人などは日本でもありそうな話ですね。守護霊や地縛霊と言った類なのでしょうか。ですが、ただ一つ言えることは、西洋よりも日本の幽霊の方が数倍怖いということですね・・・^^;



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