Sigurd and Brunhild   Harry George 1920 -

 シグルズは北欧神話の「ヴォルスンガ・サガ」に登場する英雄です。
 彼は英雄シグムンドとヒョルディースの間に生まれました。戦争で夫を失ったヒョルディースはデンマークの王子と再婚しました。シグルズはレギンの元で養育され、青年になるとレギンに「財を成したいなら竜ファヴニールを倒せ」と催促されます。「まずは父の仇を討たせてくれ」と返したシグルズは、鍛え直した名剣グラムを使って父を殺したフンディング一族を滅ぼします。次に彼は養父の言う通りファヴニールを退治して財を手に入れますが、竜の心臓の脂を舐めて動物の言葉が分かる魔力を手に入れたことで、シジュウカラが「レギンは宝を独りじめしようとシグルズを裏切ろうとしている」という会話が聞こえたのです。彼はレギンを殺し、財宝の一部を持って旅に出ました。

 シグルズは炎に守られた館でヴァルキリーのブリュンヒルデを発見し、恋に落ちて結婚を誓い合います。しかし、ギューキの宮廷に着いたシグルズは、王妃グリームヒルドの策略によって忘れ薬を飲まされてブリュンヒルデの事を忘れてしまい、王女グズルーンと結婚してしまいます。ブリュンヒルデもシグルズの手引きによって王子グンナルと結婚する事となりました。
 しかし、ブリュンヒルデは誓いを忘れ自分を欺いたシグルズに激怒し、復讐を考えます。シグルズはかつての記憶を取り戻し、ブリュンヒルデとよりを戻そうとしましたが時既に遅し。妻を失いたくないグンナルは弟にシグルズの暗殺を頼み、眠っているところを襲わせました。彼は暗殺者と相打ちとなり、息絶えてしまいます。ブリュンヒルデは悲しみの内にシグルズの遺体を炎で焼き、自身の身もその中へ投じたのでした。
 悲劇の英雄シグルズにまつわる作品14点をご覧ください。

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「アーサー・ラッカム作  1910年」
シグルズの父親のシグムンドの絵画。ヴォルスングとフリョーズの
間に生まれた彼は、毒が利かない程強健な身体を持ち、ヴァイキング
らしい誇り高い危険な人生を歩みました。
A depiction of Sigmund by Arthur Rackham 1910

ヨハンズ・ゲールツ作  1889年」
ジグムンドの妹シグニューとガウトランドの王シゲイルの結婚披露宴で、
最高神オーディンが身元を隠して現れ、「抜いた者にこれをやろう」と
木に剣を深々と刺したのでした。引き抜けたのはジグムンド。
しかし、グラムと呼ばれた名剣を巡って争いが起こってしまったのです。
Sigmund's Sword (1889)  Johannes Gehrts

「アーサー・ラッカム作 1911年」
亡き父から折れたグラムを託されたシグルズ。彼はドヴェルク(ドワーフ)
であるレギンによって育てられました。教養や戦い方などを教え、
良い養父に思えたレギンでしたが、彼は腹黒い野望を抱いていました。
Mime (Reginn)  Arthur Rackham 1911

ヨハンズ・ゲールツ作 1901年」
レギンは腕の良い鍛冶屋で、真っ二つに折れてしまった名剣グラムを
修復します。シグルズはその剣を使い、父親を殺したフンディング
一族を滅ぼして、復讐を果たしました。
Sigurd proofs the sword Gram 1901 Johannes Gehrts

「Hermann Hendrich 作 1854-1931年」
シグルズはレギンに「洞穴に住み、宝を独り占めしている竜
ファヴニールを退治して財を成せ」と言われ、退治に出かけます。
北欧なのにお尻全開なのが気になります・・・。寒そう。
Sigurd And Fafnir by Hermann Hendrich (1854-1931

「アーサー・ラッカム作  1911年」
ファヴニールを倒した方法は、地面に穴を掘って息を潜めて待ち、
その上を竜が通った時に思いっきり剣で心臓を突き刺したのです!
なかなかの頭脳戦ですね。
Rackham, Arthur 1911

「作者不詳  1900年頃」
財宝の中に呪われた指輪があり「それを持つのは止めておけ」と
死に際のファヴニールに忠告されるのですが、シグルズは無視して
しまいます。欲に目がくらんだレギンを切り倒し、シグルズは破滅へ
の道を歩んでしまったのでした・・・。
Sigurd slaying Fafnir  Old Norse stories 1900

「R. Bung(?)作  20世紀頃」
シグルズは道中に眠り続けるヴァルキリー、ブリュンヒルデと出会います。
彼女は最高神オーディンの命令を聞かず、敗戦するはずの人を
勝たせてしまったから、誰かが封印を解くまで眠らせられていたのです。
 Bung

「Harry George 作  1920年」
シグルズがやってきた事で封印が解かれ、ブリュンヒルデは
目覚めます。彼女はシグルズにルーン魔術の知識を教え、やがて
深く愛し合うようになります。
Sigurd and Brunhild   Harry George 1920

「アーサー・ラッカム作  1911年」
二人は結婚を約束し、永遠の愛を誓ったはずでしたが・・・。そこで
悲劇は訪れるのです。ギューキ王の元を訪ねたシグルズは、なんと
王妃に忘れ薬を盛らされて、全部を忘れてしまうのです。
そう来たか!?っていう感じですよねw
 Art by Arthur Rackham 1911

チャールズ・アーネスト・バトラー 作  1864-1933年」
ブリュンヒルデへの深い愛を忘れたシグルズは、ギューキ王の娘
グズルーンと結婚します。しかも義兄弟となったグンナルと密かに
協力し、ブリュンヒルデと彼を結婚させます。もう滅茶苦茶状態です。
Siegfried And Brunnhilde by Charles Ernest Butler

Gaston Bussière 作 1897年」
しかも、グズルーンが口を滑らせ、自分とグンナルとの結婚はシグルズが
一枚噛んでいたことをブリュンヒルデは知ってしまいます。
誓いを破られて怒る彼女。そして妻を失う事を恐れたグンナルは
かつての恩も忘れ、弟をけしかけてシグルズを暗殺したのでした。
Brynhild 1897 Gaston Bussière

「Charles Ernest Butler 作 1909年」
ですが、シグルズとは結婚を深く誓った中。変わり果てた遺体を見て、
ブリュンヒルデは憎しみを抱いた事を深く後悔することになりました。
彼女は自ら命を絶ち、同じ棺に入れられて最期を迎えたのでした・・・。
Sigurd_and_Brynhild,_Charles Butler  1909

ノイシュヴァンシュタイン城に飾られている絵画 作者不詳」
夫を失ったグズルーンは母に忘れ薬を飲まされ、悲しみや怒りは
忘れたのですが、シグルズの事は一生忘れることはなかったそうです。
女性達に翻弄され、策略によって命を落としたシグルズ。
英雄にしてはなんだか可哀想な最期ですよね・・・。
Death of Sigurd from Neuschwanstein Castle
 
 この悲劇が起こったのは、ギューキ王の妃グリームヒルドが忘れ薬を飲ませたからだと言えますが、根本の原因は「ファヴニールの元から呪われた指輪を手に入れたから」とされております。
 その指輪は「アンドヴァリの指輪」と呼ばれ、強い呪いがかけられていました。かつてアンドヴァリというドワーフが持っていた魔法の指輪を、ロキ神が奪ったことにより「所有する者には不幸が襲うように」とアンドヴァリが呪いをかけたのです。この指輪はロキからフレイズマル&ファヴニール&レギン兄弟へと渡り、シグルズへと渡りました。この指輪は欲望の象徴とされ、所有した者達をことごとく死に至らしめたのです。シグルズ達に不幸が襲った後、指輪の行方はようとして知れません。
 この物語が、J・R・R・トールキンの「指輪物語」のモチーフの一部となったのだと思います。「いとしいしと・・・」と呼んで指輪を必死に捜索するゴクリの姿が印象に強く残っていますよね・・・。

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