1503 Type  manuscrit Langue  Français Format  Vélin -

 フォルトゥナはローマ神話における運命の女神です。ギリシャ神話ではテュケーに相当し、幸運の女神ともされています。
 フォルトゥナは元々豊穣を司る女神で、ローマの東にあるプラエネステという土地で信仰されていたそうです。ローマ王がその信仰を自国へと持ち込み、フォルトゥナはローマ神話に組み込まれる事となりました。通常、フォルトゥナは巨大な車輪を持ち、不安定な球などに乗った姿で描かれることがありますが、中世時代になると、運命の女神は神話の枠を超えて様々な姿で表現されるようになります。想像の翼は広がり、元々の形式から外れたとんでもない姿の女神様も・・・。
 老若男女、貧富、身分も見境なく、全人類の運命を操る運命の女神の中世絵画12点+αをご覧ください。

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「フランスの国立図書館にある彩色写本の挿絵より  15世紀」
まず、フォルトゥナ女神を表現する上で最も多いのが、人間を
あしらった車輪を持つお姿。車輪は人間の人生を表し、頂点に王、
真下に貧困者らしき人物が描かれています。
Bibliothèque Nationale de France 15

「ボッカチオの書籍の挿絵より フランス 1467年頃」
こちらも人生の車輪を回転させる女神様。王冠を被った若い男が
下の王冠の老人から服を貰おうとしているので、王位継承を
表しているのでしょうか。人々は神妙そうに事態の成り行きを
見守っているようです。
Lady Fortune in a Boccaccio manuscript french 1467

「Coëtivy の親方作  1460-70年頃」
この運命=車輪と言う構図はタロットの10番目の大アルカナ
「運命の輪」に影響を与えたとされています。
女神様は車輪を気まぐれに回し続けているのです。
Coëtivy Master french 1460-70

ジャン・ド・マンの書籍の挿絵  1250-1305年」
ゆるーく車輪に掴まる人々がゆる可愛いく思えて来た・・・。
運命=この世を動かす女王といったイメージがあるのか、王冠を
被った姿で描かれる場合もあります。
De Consolatione Philosophiae Translated by Jean de Meung

「フランスのパリにある彩色写本の挿絵より」
こちらは車輪がコンパクトなのか、女神様が巨人なのか・・・。
運命の女神が目隠しをしている姿はしばしば見られ、「行先が全く
見えない」という運命の特性を表しているそうです。
Harley  L Epitre Othea Origin France Central (Paris)

「フランスの国立図書館にある彩色写本の挿絵より」
こちらのフォルトゥナさんは教皇風の帽子を被り、顔が白黒に塗り
分けられていますね。これも「運命は光も闇も内包し、幸せと不幸の
どちらも訪れる可能性がいある」という事を示しています。
目隠しもして、不安定な運命Maxです。
Bibliothèque Nationale de France

「フランスの国立図書館にある彩色写本の挿絵より 1460年頃」
こちらのフォルトゥナ様は顔が分裂してしまっています。左が幸運を
与える優しい顔、右は不幸を与える悪鬼のような顔をしていますね。
人生の車輪に椅子が付いていて、なかなか座り心地が良さそう・・・。
Bibliothèque nationale  France Département  Français 1460

「フランスの国立図書館にある彩色写本の挿絵より」
顔どころか頭ごと分裂してしまっている女神様。幸運と不幸の
二面相は、何だか日本の能面を感じるような気がします。
それにしても、凄い形の帽子だ・・・。
Bibliothèque Nationale de France -

「フランスの彩色写本の挿絵  1503年頃」
顔の半分が黒塗りタイプのフォルトゥナ様。この絵画は女神が一人で
人間を操っているという訳ではなく、人間同士で争ったり愛し合ったり
蹴落としたりして、人間の運命は変わっていく、という事を伝えて
いますね。様々な運命が絡み合う人生は複雑なのです・・・。
1503 Type  manuscrit Langue  Français Format  Vélin

「フランスのパリにある彩色写本の挿絵より 1410年頃」
と、ここで千手観音のような、手だらけの恐ろしいフォルトゥナ女神様を
紹介します。中世ではこのような姿でも描かれていたのです。
人々の運命を操る為に数多くの手が表され、横縞のカラフルな服は
運命の多様性、気まぐれさを示しているそうです。
1410  Fortune and the author

「フランスの国立図書館にある彩色写本の挿絵より  15世紀」
こちらも手だらけタイプのフォルトゥナ様。運命を司っているという
より、怪奇!蜘蛛女みたいに見えるような・・・(ぇ
司祭らしき人物の元に現れ、これから起こる運命を伝えている
ようです。この状態だと不幸ですよね・・・。
Bibliothèque Nationale de France 15th

「フランスのアーセナル図書館にある彩色写本の挿絵より  15世紀」
もうなんかゲームのラスボスに出てきそうな感じの存在感。
絶対強すぎて倒せない奴や・・・。人間の運命は、気まぐれで善悪が
表裏一体の女神様にがっちりと握られているのです。
Bibliothèque de l’Arsenal 15th

「エドワード・バーン・ジョーンズ作  1883年」
かなり時代が飛び、いきなり近世のラファエル前派のジョーンズさんの
作品です。セピア調の色彩の中、運命の女神様が苦悶する人々が
乗った車輪を回しています。中世の様式を踏襲しておりますが、
人々の肉体が気になりすぎる・・・。
Edward Burne-Jones  The Wheel of Fortune 1883

 そもそも運命とは何でしょうか。運命は「人間の意志をこえて、幸福や不幸を与える力のこと。または天によって定められた、人の身の上に起きる幸せと禍い」と考えられています。
 少し話は変わりますが、北欧神話において、主神オーディンはあらかじめ巫女から「神々の死」を予言されます。その「運命」をオーディンはあらゆる手段で変えようとしましたが、ラグナロクの勃発によってほとんどの神々は死に絶え、結局その運命通りとなりました。古代北欧だと、運命は神々よりも強力であると考えられていたのです。

 また、ギリシャ神話に登場するモイラは運命を司る三女神とされています。彼女たちはゼウスに従う存在ですが、モイラの決定をゼウスですら覆すことができないそうです。ここにも運命が神より勝っているという思想が感じられますね。

 現代の私達だと、運命は「運命の糸」という肯定的なイメージが先に来るような気がして、「運命に操られている」という感覚を持つ人は比較的少ないような気がします。しかし、過去の時代の人々は運命をもっと凄まじいもの、神より巨大で抗う事のできない存在として考え、恐ろしい運命を本気で信じていたように思います。それが、これらの絵画作品に表現されたのではないでしょうか。

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