1325-1340 -

 中世時代、写本は「写字生」と呼ばれる修道院に属する修道士がせっせと書いていました。
 多くの修道院には写字を行う「写字室」が建てられ、君主や教会に依頼された本を手掛けていました。場所によっては羊皮紙の製作から製本まで、彩飾写本の作製の全てを行っていたようです。キリスト教の教義を伝える手段にもなる為、写字は修道院の大事な仕事であったのと同時に 、写本を貴族たちに売ることで貴重な収入源にもなっていました。
 彩飾写本はその名の通り、字だけではなく様々な装飾や挿絵が入れられています。その殆どは物語に関連した挿絵なのですが、中にはどうしてこんな怪物がいるの!?と思われるへんてこりんなモンスターが現れます。
 写字生のストレス発散なのか、趣味なのかは不明ですが、とにかく不思議でキモカワイイ怪物14点をご覧ください!

PR
 


「Luttrell Psalter の彩飾写本の挿絵より 1325-35年」
めちゃめちゃ長ーい鳥足のグリロスの上に乗る道化的な人。
首元のラインと水玉のズボンがいい味を出しています。
margins of the Luttrell Psalter 1325-35

「Luttrell Psalter の彩飾写本の挿絵より 1325-35年」
鳥?犬?虎?山羊?的なハイブリッド感溢れる怪物。
尻尾が装飾の一部と化しちゃっていますね。
the margins of the Luttrell Psalter 1325-35 -

「Luttrell Psalter の彩飾写本の挿絵より 1325-40年」
か、かわいい!カモちゃんが羽生えて獣足になってパンツはいて・・・。
そこまではいいのですが、お尻の猪っぽいのが可愛くない!( ;Д;)
 1325-1340

「フランスの彩飾写本より  1408年」
イケメン風のフルート吹きの怪物。小型ナイフやお花を持っており、
かなりギザなようですね。足は可愛らしいですがw
Grotesque flutist, French illuminated 1408

ジャン・フロワサール著の年代記の挿絵より  1470-75年」
緑の帽子を被ってリュートを引いている、スナフ〇ン風のおじさん。
しかし、その下半身はケンタウロスのようになっており、更にお尻が
ブサイクな人面に・・・!どんないい音楽を奏でてくれても集中できません!
Français Chroniques sire Jehan Froissart1470-75

「Luttrell Psalter の彩飾写本の挿絵より 1325-35年」
獣風なおじさんと、鳥の身体をした牛のモンスター。牛さんの目線が
何とも言えず、この空白感が絶妙な雰囲気を出しております。
こんなメモ帳あったら欲しいな。←
Luttrell Psalter Collage

「詩人ヤーコブ・ファン・マールラントの Der naturen bloeme より 1350年」
お魚激おこ!いやそれよりも腕!腕が二本!

 1350

「大英図書館にある彩飾写本の挿絵より」
むちゃくちゃゆるーい海の怪物さんたち。一番上のケルピーさん
らしき子の顔もナイスですが、個人的には一番下の「大きな魚は
小さな魚を食う」状態の魚がキモ可愛くて好きです。
Fish, British Library, Harley MS 4751, Folio 68r

「Luttrell Psalter の彩飾写本の挿絵より 1325-40年」
凄くやましい事を考えていそうな謎な生物。説明にはドラゴンフライ
と書かれていました。トンボ・・・だって・・・!?
トンボは「魔女の針」と呼ばれ、嫌われていたそうなので、
こんな姿として描かれたのかもしれません。あと、後ろ透けてる・・・。
 1325-1340

「Luttrell Psalter の彩飾写本の挿絵より 1325-40年」
こちらも物凄くやましい事を考えていそうな牛のモンスターさん。
牛サイズのこの怪物が猛スピードで飛んで来たら、全速力で逃げます。
Lutrell psalter

「フランスの彩飾写本の挿絵より」
なんだろうこの絶妙な感じ・・・。様々な食材をぶちこんで食べてみたら、
なんとなくいけるじゃん!?と言うノリ?ギリギリなバランスで成り立って
いる、形容し難い怪物さんですね。え、アウトかな?
Graduel festif à l’usage de Notre-Dame la Riche de Tours 16-17

「詳細不明  彩飾写本の挿絵」
こちらを無表情で見つめる首無し人面怪物・・・。
正直にいってこれはキモい・・・。全然可愛くない・・・。
manuscript monster

「Pierre Boaistuau 著のHistoires prodigieuses の挿絵より  1560年」
肘や膝、脇に人面犬がくっついた鎌的怪物・・・。
怪物の顔より、人面犬が不気味すぎる・・・。
Histoires prodigieuses Pierre Boaistuau first published  1560

「Luttrell Psalter の彩飾写本の挿絵より 1325-40年」
この表情が!シンプルな姿だけどこの表情が!
The Luttrell Psalter, British Library 1325-40

 中世当時は未開の地が沢山ありました。町や都市の遠距離の移動は非情に険しく、更に遠くの未知の土地へは一般人には到底行けないような所でした。そういった場所は冒険家や布教者が命を賭して切り開いていきました。町の人々は未開の地には見たこともない不気味な怪物がいると考え、様々な姿を想像したのです。この写本の不思議な怪物も、そう言った未開の地への恐れ、憧れ、好奇心から産まれた部分もあるのかなと思います。

 現代の私達は未知の領域が少なくなりつつあります。ですが、誰もまだ見たことがない(?)宇宙人は様々な姿形で描かれていますね。にょろにょろな姿をしていたり、灰色のグレイ型をしていたり、虫型をしていたり・・・。1000年後の未来人達が、私達の時代の描いた宇宙人を見て「この怪物シュールで面白いね」と言っているのかもしれません。

→ 彩飾写本の不思議な怪物の【第一弾】はこちら
→ グリロスについて詳しく知りたい方はこちら


PR