Italian School 18th  THE SLAYING OF NESSUS BY HERCULES -

 ネッソスはギリシャ神話に登場するケンタウロスです。
 ある日、ヘラクレスとその妻デイアネイラと息子はエウエノス川を渡ろうとしていました。その川は流れが急で、母子は自力で横断できません。するとそこにネッソスが現れ、「俺が女性を担ぎましょう」と申し出たので、ヘラクレスが息子を担ぎ、ネッソスがデイアネイラを担いで川を渡りました。しかし、早く川岸に着いたネッソスが彼女をさらおうとした為、ヘラクレスはそのケンタウロスを矢で射殺したのでした。
 
 ネッソスは死の間際、彼女に「俺の血は媚薬効果がある。奴の愛が離れた時、服に浸して着せてやるんだ」と言い残します。デイアネイラはそれを信じ、ヘラクレスの心が他の女性の元へ行くと知るや、服にネッソスの血を浸して、ヘラクレスに送り届けます。しかし、それを着た途端、ヘラクレスは想像を絶する痛みに襲われました。その血には毒が込められていたのです。くっついてとれない衣服を自分の皮膚ごと引きはがし、彼は山に登って火葬の準備をして、火に包まれて最期を遂げたのでした。
 ギリシャいちの英雄ヘラクレスの死の原因となったケンタウロス、ネッソスの絵画14点をご覧ください。(といっても、ネッソスがデイアネイラを誘拐しようとするシーンばかりです^^;)

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「中世時代の彩飾写本の挿絵 年代不明」
物凄くゆるーい誘拐現場。楽しそうなデイアネイラに、タクシー
代わりで不満そうなネッソス、服装とポーズが謎すぎるヘラクレスが
弓を構えています。
library-books-medieval-manuscript

ダヴィド・ヴィンケボーンス作  1576-1632年」
デイアネイラが攫われようとした途端、ヘラクレスの矢が川越しから
放たれ、ネッソスに直撃します。一説には矢には毒が塗られていた
そうです。
Hercules Deianira And The Centaur Nessus by David Vinckboons

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1577-1640年」
足を組んで「ちょっと止めてよ~」と言った風の強気なデイアネイラさん。
ネッソスはクピドにも攻撃され、困った表情をしています。
足元のお爺さんと女性はエウエノス川の象徴?
じーっと事の成り行きを見守っております。
Rubens Werkst Centaur

「グイド・レーニ作  1619年」
こちらはいえーい!と言った感じの楽し気なネッソス。デイアネイラは
飛びあがっている風ですね。ケンタウロスは茶や白の馬として
描かれることが多いのですが、この絵画は牛のようなブチ柄です。
Guido Reni (1575-1642) The Rape of Deianira 1619

ノエル・コワペル作  1628-1707年」
なんか物凄い大所帯ですね。ネッソスが本来持っていないはずの
血が塗られた布を掴んでおり、物語を克明にする為に未来の事柄
も挿入していますね。というか、ヘラクレス猟銃持ってるんですけど!
ギリシャ神話なのに猟銃ですと!?

Nessus by Noel Coypel

「ルカ・ジョルダーノ作  1634-1705年」
ケンタウロスは粗暴で好色とされ、ネッソスもその例に漏れませんが、
くるくるヘアーの青年や髭を生やしたちょい悪オヤジ風に表現され、
酷い容姿では描かれていませんね。
Luca Giordano - Rape of Deianeira by Nessus

「Louis De Boullogne 作  1654-1733年」
ネッソスの足元には矢が置かれ、「俺の血を布に浸せば愛のまじないに
効くぞ」と伝えているようです。デイアネイラさんはそれをする気満々の
ようですね。川の象徴のおじいさんが肘を壺に起きながら、
「大変じゃのう」と人事として眺めているようです。
Louis De Boullogne, Nessus and Dejanira

「Gaspare Diziani 作  1689-1767年」
腰辺りに矢が刺さり、ぐえっとなっているネッソス。
おじいさん、こんなところに横たわっているとケンタウロスに
轢かれちゃいますよ~。
Gaspare Diziani, The Rape of Deianeira by Nessus

「Karl Haase 作  1845年」
逃げるネッソスに追うヘラクレス。それにしても、物語だとヘラクレスは
息子ヒュロスを担いで川越えしているのですが、息子の姿らしき人が
描かれた絵画は一枚もありません。構図を描くうえで不要なのは
分かりますが、ヘラクレスよ、放り投げたのか・・・?
Karl Haase  1845

「イタリア出身の画家作  18世紀」
何故かネッソスの肉体美が前面に押し出された絵画。表情も
真面目気味で、格好付けちゃっています。牧神パンもそうですが、
作者によって耳を尖らせて描いております。この尖り耳の由来を
知るのも面白そうですね。
Italian School 18th  THE SLAYING OF NESSUS BY HERCULES

セバスティアーノ・リッチ作  1706年」
ヘラクレスと言えば棍棒だろ!英雄は遠距離攻撃はしない!
という作者のポリシーなのか(?)、ヘラクレスがネッソスを殴って
倒している作品も存在します。背後で薄笑いを浮かべる、
デイアネイラさんが怖いお・・・。
Sebastiano Ricci  Hércules y Neso 1706


「セバスティアーノ・リッチ作  1700年頃」
こちらもお腹を蹴り、打撃攻撃を加えようとしているヘラクレス。
ケンタウロスも棍棒を使うとされ、足元に置かれていますが、
使う暇もないようですね。
Hercules Killing the Centaur Nessus, ca 1700, Sebastiano Ricci

「ロマン主義の画家作  18世紀」
こちらはお尻に矢がぷすっと刺さっており、矢と棍棒のダブルパンチ。
構図がリッチさんの作品に似ているので、参考にした部分も
あったのかな?
Hercules, Nessus, Deianira, by Unknown Roman Artist, 18th

「中世彩飾写本の挿絵より  年代不明」
物語は180度変わり、ダンテ作の「神曲」より。彼は地獄編にネッソスを
登場させています。彼はケンタウロス族の賢者ケイロンに命じられ、
ダンテとヴェルギリウスの道案内をしたそうです。手前で弓を持って
歩いているのがネッソス。遂に、ただの馬と化してしまったか・・・;
The Divine Comedy shows a centaur patrolling the river of fire

 ヘラクレスはネッソスの血を浸した服を着たのが原因で絶命する訳ですが、その血はヒュドラの猛毒が込められていたらしいです。ヒュドラは9つの首を持った大蛇で、その怪物を退治したのはヘラクレスです。彼はヒュドラの毒を塗った矢を用いていたそうです。アキレスの恩師ケイロンは、ケンタウロスとの戦いの際にヘラクレスが誤って射った毒矢が膝に命中し、命を落とす原因になりました。不死であるケイロンは猛毒の激痛に耐えきれず、不死性をプロメテウスに譲って死を選んだそうです。ケイロンさん、飛んだとばっちりや・・・。
 もしネッソス相手に射った矢もヒュドラの毒であったのなら、その猛毒がネッソスに回り、その血をヘラクレスが着て猛毒が回り・・・。
 ・・・あれ、もしかして英雄は自滅したのかな?ヘラクレスを倒したのはネッソスではなく、巡り巡ったヒュドラの猛毒なのかもしれません。 ヒュドラさん最強だ!

→ ケンタウロスについての絵画を見たい方はこちら


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