1818 Nicolas Auguste Hesse  -

 バウキスとピレーモーンはギリシャ神話に登場する、善人の老夫婦です。
 ある日、ゼウスとヘルメスは貧しい身なりの人間に変装してフリギア(トルコ中部)を旅していました。夜になると彼等は近くの家の戸を叩き、一晩泊めてくれるよう頼もうとしましたが、不親切にも戸を開けてくれません。やっとの事で二人は迎えてくれる所を発見します。そこはボロボロの家で、貧しい老夫婦が住んでいました。彼等は二人を歓迎し、暖かい火を起こして質素ながらも精一杯のもてなしを行いました。

 食事中、夫婦はある事に気付きました。なんと自然と酒瓶から酒が湧き出ているのです。眼前の者達が神である事を知ると、二人は貧しいもてなしを詫び、守り神のようにして飼っていたガチョウを供物にしようとしました。しかし、ゼウスはそれを止めて「私達はこれからこの村に罰を与える。お前達だけは助けるから、共に来るがよい」と言いました。夫婦は直ぐにそれに従い、神々と一緒に険しい坂道を上ってゆきました。

 そして夫婦が頂上へ着いた時、村はすっかり湖に沈んでしまい、彼等の家だけが残っているだけでした。二人が驚いていると、その家は豪華な神殿へと変貌していったのです。「徳の高い夫婦よ。望みの物を言ってみるがいい」というゼウスの問いに対し、二人は「この神殿の祭司とさせていただき、この世を去る時は同時に逝くようにしてください」と頼みました。この願いは聞き届けられ、年月が過ぎて夫婦がすっかり年老いると、二人の身体は同時に樹木に変化していきました。オークと菩提樹の木はいつまでも神殿に残っているとされています。
 親切な者は救われる。バウキスとピレーモーンの絵画14点をご覧ください。

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ウォルター・クレイン作 書籍の挿絵より 1983年」
貧しい旅人に変装して各地を旅するゼウスとヘルメス。夜になって
宿を探すも、何処の家も固く戸を閉ざしています。この作品だと
子供と犬にめちゃ虐められていますねw
ヘルメスのパンチラが・・・!
A Wonder Book For Girls & Boys  Houghton, Mifflin (1983)

「ヤーコブ・ヨルダーンス作  1593 - 1678年」
唯一、ボロボロの家に住む老夫婦が宿を提供してくれました。
暖かい食事や身体を洗う為の湯や寝台が準備され、貧しいながらも
かいがいしくもてなしてくれました。
Jacob Jordaens (1593 - 1678)

「ヤーコブ・ヨルダーンス作  1593 - 1678年」
ヨルダーンスさん二枚目。どの絵画もそうですが、ゼウスとヘルメス
全く人間に変装する気がありませんね。ほぼ全裸の姿で現れた
客人を、もてなしてくれるご夫婦凄すぎます。
House Of Philemon And Baucis by Jacob Jordaens

ヨハン・カール・ロス作  1659-62年」
日頃のストレスが溜まっているのか、ヘルメスがゼウスに「そもそも
見境なく女に手を出そうとするからいけないんですよ」と言って、
口喧嘩が始まっているようです。←違うと思いますw
そんな事が起こったら老夫婦困っちゃいますよね・・・。
Johann Carl Loth 1659-62

アンドレア・アッピアーニの工房作  19世紀頃」
ギリシャ彫刻を見て描きました!と言わんばかりのゼウスと
ヘルメスの姿ですね。肉体凄すぎですって・・・。
何気にお婆さんの風格が神並みにある。

Philemon And Baucis by Circle of Andrea Appiani

ウォルター・クレイン作 書籍の挿絵より 1983年」
お食事中、お酒を注いでも注いでもなくならず、むしろ増えている事に
気付いた老夫婦は、接待をしている相手が神だと言う事を知ります。
このお婆さんはびっくりする余り酒を零しまくっていますね。
しょうがないな~とニヤリと笑うヘルメスが個人的にツボww
A Wonder Book For Girls & Boys  Houghton, Mifflin (1983)2

「Antonio Zanchi の追随者作  18世紀頃」
あらま~気付かれちゃいました。と言った感じのヘルメスに、
お前のせいだぞ!という風のゼウス。また喧嘩気味のようですw
老夫婦は恐縮しており、お婆さんは結構な剣幕でガチョウを
捕獲しようとしています。
Antonio Zanchi, 1631 - 1722, attributed  HOUSE OF PHILEMON

ジェイコブ・バン・オースト(父)作  1603-71年」
守り神的なガチョウを供物にしようと、老夫婦は頑張って追いかけ
ますが、逃げ回ってしまいます。絵画だとガチョウを捕まえようと
するのはかなりの確率でお婆さんです。鳥を絞めて羽をむしって
料理をする所まで女性がやっていたのでしょうかね・・・。
Jakob van Oost the Elder

ダフィット・リッケール3世作  1612-61年」
ゼウスはガチョウを絞める事を制し、「我々は今から不誠実な村に
罰を与える。お前達は救われるから、儂等と共に来い」と伝えます。
ヘルメス寛ぎまくってるし、よく見るとお婆さんナイフ持ってます。
Rickaert David III, Philémon et Baucis

「Nicolas Auguste Hesse 作  1818年」
「村を滅ぼすから我らについて来い!」というゼウス達に、ただただ
恐縮して頭を垂れるご夫婦。素朴で牧歌的な二人から見たら、
「ひいぃー!?」な展開ですよね。それよりも、どうしても
お尻に目が行ってしまう・・・^^;
1818 Nicolas Auguste Hesse Philemon and Baucis

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1620年」
険しい道を登り、夫婦は神と共に山頂へと向かいます。
頂上へと着いた時には、村はすっかり湖に呑み込まれていました。
自分達の家を除いて。夫婦が隣人達に起きた不幸を悲しんでいると、
彼等の家は立派な神殿に変わってゆきました。
Stormy Landscape with Philemon and Baucis, 1620 by Rubens

オレスト・キプレンスキー作  1782-36年」
「お前達の望みは何か?」というゼウスの問いに、夫婦は「神殿を
見守る事と、天へ召される時は二人同時にしてください」と
願いました。
これぞ真実の愛ですね・・・。
Orest Adamovich Kiprensky 1782-36

Giulio Carpioni 作 1613-78年」
ゼウスとヘルメスはその願いを聞き入れ、去っていきます。
あれ、ちゃっかりガチョウもらってない?お土産!?
jupiter and mercury with philemon and baucis by giulio carpioni

「アーサー・ラッカム作  1867-1939年」
年月が過ぎ、神殿の中で二人はすっかりと年老いました。ある日、
お互いの身体が樹木へと変わっていったのです。最期の時を悟った
夫婦は、別れを惜しみながら口が聞けるまで会話をしました。
そうして彼等はオークと菩提樹の姿へと変わったのでした。
Arthur Rackham - Philemon and Baucis

 夜更けにピンポーンとチャイムが鳴り、あなたは玄関へ行って扉を開けます。こんな遅くに誰だろうと思いながら。そこに立っていたのは、偉そうな爺さんと翼の付いた帽子を被った青年。爺さんは「一夜だけ家に泊めてくれ」と頼んできました。さて、あなたはどうしますか?
 私だったら間違いなく断ります^^; 夜更けに男二人が来て「泊めてくれ」とか怪しすぎますって!怖すぎる!現代日本と神話の物語を比較するのはあれですが、知らない人をいきなり家に入れて泊めてあげる人は極少なのではないでしょうか。
 しかし、古代や中世の人は旅人を家に泊めるのがセオリーであったようで、ゼウスとヘルメスの物語だけではなく、北欧神話のオーディンも「訪ねて来た旅人は快く迎えてやれ」と箴言を残しています。(オーディン自身も放浪癖があり、よく人間に化けて訪問していました) 土地の開拓が充分にできておらず、旅人が多かった時代ならではの箴言なのかもしれませんね。
 もしかしたら、今夜あなたの家に老人と青年が訪問するかもしれませんよ・・・。


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