Buch der heiligen Dreifaltigkeit ale, Beinecke, Mellon 1700

 古代ギリシャやエジプトで興り、中世ルネサンス時代に発達した、卑金属から金を錬成する術を探る錬金術。
 錬金術師の目標は金を生み出すだけではなく、対立している両極性の統合、完全性の入手にありました。男女や善悪、太陽と月。世界の全ては両極性を含んでいるとされ、それを統合して初めて完全を得ると考えられていたのです。

 男女を統合して完全体になった存在は「アンドロギュノス(両性具有)」と呼ばれ、究極の真理とされてきました。錬金術の世界においてアンドロギュノスの姿は半分が男性で半分が女性の姿をした王の姿で描き、一対の翼を持ち、龍を踏み付けたり、定規や蛇、盃などを手に持っています。また、この存在はレビス(Rebis)とも言われ、ラテン語で「2つの部分から成る者」の意味を含んでいます。
 では、錬金術における完全体アンドロギュノスについての挿絵13点をご覧ください。

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Rosary of the Philosophers という書籍の挿絵 1550年」
まだ統合される前の男女。男性の足元には太陽、女性の足元には
月、和平の象徴である鳩が仲介を成し、男女、太陽と月の融合を
物語っています。
The Rosarium Philosophorum, 1550

「彩色写本の挿絵より  年代不明」
そうしたら、完全体としてこんな象徴的な姿になってしまいました。
太陽や月、定規、コンパスなどシンボルがちりばめられています。
龍は悪魔の概念が結びついているので、完全体が悪しき者を
倒すというキリスト教的思想が入り込んでいるのでしょうかね。
rebis

「彩色写本の挿絵より  年代不明」
首がぽこっと分裂しているアンドロギュノスさん。
虹色の翼を持ち、蛇と盃を握っています。
足元には月、右側は鳩・・・なのか?
左側の植物は生命の樹を表していると思います。
ANDRÓGINO

「錬金術に関する文献より 年代不明」
上記の作品と構成はほぼ同じですが、男女は赤と青に塗り
分けられています。現代の私達で考える男女の色とは違いますね。
情熱の赤、神秘の青、的な感じなのかな?
生命の樹の顔がカオ〇シっぽくて不気味ですね・・・。
Alchemical and hermetic emblems 41-80

「錬金術に関する文献「Pandora」の挿絵より  1550年」
ゲームのラスボスに出てきたら絶対に倒せなさそうな完全体。
足元にへばりつくグリロス(頭足人)的な怪物の存在がシュールですね。
いずれも左右対称なので、シンメトリーの完全性を表しているとか?
Acquerello estratto dal manoscritto alchemico Pandora  1550

「彩色写本の挿絵より  1400年頃」
ちょっと足の短さが気になるアンドロギュノスさん。
二つに塗り分けられた姿は気品を感じさせます。
足元は岩場で、龍が巻物的な物をくわえていますね。
Coroado Hermafrodita Andrógino ou Rebis 1400

「聖なる三位一体の書籍より  1400年頃」
男性は黒き鎧に身を包んだ騎士、女性は金のドレスに身を包んだ
貴婦人で表わされています。足元は上記の作品と似たような
グリロスが描かれていますね。ろくろ首が不気味チックですな・・・。
Le livre de la sainte trinité circa 1400  An Alchemy artwork

「聖なる三位一体の本の挿絵より  1700年頃(彩色は1875年)」
丸まっている蛇が可愛らしいですね^^
足元の龍の姿は他の作品とちょっと違うように見えます。尾を噛む蛇
ウロボロス(完全、永遠、不死の象徴)の亜種なのかな?
Buch der heiligen Dreifaltigkeit ale, Beinecke, Mellon 1700 -

「彩色写本の挿絵より 年代不明」
お顔が太陽になってしまったアンドロギュノスさん。
身体もムキムキで、男女の統合にはちょっと見えませんね。
足元の翼が生えた卵のようなものが格好いいです。
alquímica del Andrógino triunfante sobre el dragón

「ロンドンにある書籍の挿絵より 1690年」
左側には竪琴を持ったアポロンと、弓を持ったアルテミスと思われる
姿が。この二神は双子と言われており、二人が融合した事により、
完璧なるアンドロギュノスが生まれたという暗示なのでしょうか。
1690 london

「錬金術に関する文献の挿絵より  1550年」
アンドロギュノスさん、既に人間じゃなくなってしまいました・・・。
ウロボロスのごとく、男女の身体が繋がっているのです。
Mercurius as Man Woman Serpent Alchemy 1550

「ニュルンベルク写本の挿絵より  1530年頃」
他の平面的なイラストに比べ、こちらは奥行きのある作品に
なっていますね。立派な衣服を着たアンドロギュノスが微笑みを
浮かべ、卵と鏡らしきものを持っています。卵は誕生、鏡は
自身の投影の象徴だと思います。
Rebis z Manuskryptu Norymberskiego, 1530

「錬金術に関する文献の挿絵より  1420-30年」
プラトンの文献によると、かつてアンドロギュノスは存在していた
ものの、ゼウスによって男女に引き裂かれてしまったそうです。
それ以来、互いを求めるようになったとか・・・。鷲に変身した
ゼウスがアンドロギュノスを裂こうとしている最中なのでしょうか。
Aurora consurgens About 1420-1430

 一見、錬金術における金の錬成と完全性の確立は関係ないように思われますが、二つは深く結びつき合っています。金は完全なる金属と考えられており、不純物のない純金が「賢者の石」であるともされていました。金を錬成するには、かなり複雑な処置を得て水銀と硫黄が化学反応により結合しなければなりませんでした。それは「化学の結婚」と呼ばれ、男女のアンドロギュノスの結合と象徴的に類似しているように思います。
 相反する存在の結合は富や不死性を与え、あらゆる負のものを打ち消す完全なる存在へと変貌するのです。アンドロギュノスはそんな完全体の象徴的存在なのだと思います。

→ 錬金術師についての絵画を見たい方はこちら
→ グリロスについての絵画を見たい方はこちら


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