Giovanni Antonio de Sacchis IL Pordenone. Italian 1535-40 -

 クロトンのミロンは、紀元前6世紀頃の古代ギリシャで活躍したレスリング選手です。
 マグナ・グラエキナ(南イタリア)のクロトン出身で、古代オリンピックなどの競技で連戦連勝し、24年間無敗を誇ったとされています。歴史家のディオドロスによれば、紀元前510年に起こった戦争で活躍し、クロトン側の勝利に貢献したそうです。宴会場の屋根が崩れて哲学者のピタゴラスに降りかかった際、ミロンが屋根を支えて命を救ったという逸話もあります。ピタゴラスは感謝を表し、娘のミラを結婚相手として差し出したそうです。

 牛を肩に担いで鍛え、名声を欲しいままにしたミロン。しかし、彼の最期はなんとも悲しく情けないものでした。ある日、ミロンは腕力だけで木を切り倒そうとし、平手を幹に打ち付けました。木は引き裂けたものの、なんと手が裂け目にハマってしまったのです。木が倒れた音に反応してやってきたのは、獰猛な猛獣(獅子、狼とともされる)。手が抜けないまま、ミロンは猛獣に食い殺されてしまったのでした・・・。
 なんとも悲惨な最期を遂げたクロトンのミロンに関する絵画や彫刻作品、11点をご覧ください。

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「ロンドンのケンジントン・アンド・チェルシー王室特別区にある像」
24年間王座を守り、最強と謳われたレスリング選手クロトンのミロン。
彼は何を思ったのか、木を素手で引き裂こうと試みます。彼の
馬鹿力で木はバリっと割れました。しかし・・・。
(写真提供元)
Sculptures in the Royal Borough of Kensington and Chelsea

「Pietro della Valle 作  1824年」
なんと、手が木の隙間にハマってしまったのです!
木が倒れた爆音に反応してやって来たのは獰猛な猛獣。
取っ組み合いが基本のレスリングにおいて、手がハマっていては
闘いようがありません。脚にガブリ!(葉っぱが気になる・・・)
Pietro della Valle 1824

イル・ポルデノーネ作  1535-40年」
こちらも音を聞きつけてライオンとトラがお出ましです。
脚で「しっしっ!」とやるものの、がぶりと噛んでおります。
百戦錬磨のヒーローがこんな姿になってしまうなんて・・・。
Giovanni Antonio de Sacchis IL Pordenone. Italian 1535-40

シャルル・メニエ作  1795年」
凄く劇的に描かれたクロトンのミロン。これなら「いさぎよく闘って
噛まれてしまった」と言っても通じそうですね。
ライオンの身体が地味に可愛いらしい・・・。
Milo Of Croton Attacked By  Lion Charles Meynier 1795

ジェームズ・バリー作  1741–1806年」
文献ではハマった手が「片手」とされているようですが、作品に
よって両手だったりまちまちです。こちらのライオンは首元を狙って
攻撃しているようですね。野生を感じる。
James Barry 1741–1806

Charles-Michel-Ange Challe 作 1718年」
お尻お尻!
ライオンも恐ろしい所を狙ってきますね。ミロンさんの激痛の表情が
なんとも言えない悲痛な感じになっております・・・。
Milo of Croton Charles Michel-Ange Challe 1718

アレッサンドロ・ヴィットーリア作  1525-1608年」
老人のミロンがライオンの上に座り、一見勝利をしているように
見えますが、足首をハムハムされています。反抗せず、「わしはもう
終わりじゃ・・・」と運命を受け入れているようですね。

(写真提供元)
Sculpture by Alessandro Vittoria

ピエール・ピュジェ作 1620–94年」
お尻お尻!
こちらはルーヴル美術館にいらっしゃるミロンさん。滅茶苦茶痛そう。
(写真提供元)
Pierre Paul Puget  1620–1694

エティエンヌ=モーリス・ファルコネ作  1754年」
躍動感あふれる彫刻作品。上記の彫刻もそうですが、硬い大理石を
どう削ったらこんな滑らかになるのだろうと感心します。
太腿をガジガジと噛んでおりますね。
(写真提供元)
Milo of Croton 1754 Etienne Maurice Falconet French 1716-91

「Jan Alexander Janssens 17世紀」
こちらは珍しくイノシシが描かれています。イノシシも突進されたら
立派な猛獣ですよね。このミロンは木を引き裂けてもおらず、
幹に両手ががっちりとはまっています。悪夢な最期だ・・・。
Janssens  1700-

ジョセフ=ブノワ・シュヴァ作 1763年」
一番王者の風格を感じる、不利な形勢であっても戦うミロン。
野獣は狼で、集団でミロンに襲い掛かっているようですが、一匹は
踏んで倒しているようです。豹の毛皮をまとい、「わしは何歳に
なっても木にハマっても猛者じゃ!」と言っているかのようですね。
Suvée, Joseph-Benoit - Milo of Croton 1763

 ミロンは牛を担いで鍛錬していただけではなく、ピタゴラスの塾に通っていたとされ、肉体だけではなく頭脳も優れた人であったそうです。頭でっかちの詩人に「お前は歳をとったから筋肉も衰えただろうよ。私の頭脳と違って」という嫌みにも、ミロンは「頭脳も肉体の一部だから、若き時から衰えもするはずだ。ただ、肉体よりも誤魔化しが効くだけだ」と言い返したという逸話も残っているそうです。

 そんな文武両道タイプの人なのに、この情けない最期は一体どういう事なのか。確かな事は分かっておりませんが、このエピソードは創作とされ、実際は陰謀の罠にかかって暗殺されてしまったのではないかという説もあるようです。24年間もオリンピックの王座を守っていた人なのだから、こちらの方が真実味があるように感じます。大体、木が倒れた音だけで猛獣が走って来るなんておかしいですよね^^;
 後世の画家達に、木に手がハマって猛獣に喰われる姿の芸術作品を描かれまくるクロトンのミロンさんが、なんだか可哀想に思えてきました・・・。


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