Federico Bencovich -

 隠者は世俗との関係を一切断って生活する人の事を指します。
 キリスト教で一番始めに隠者となった人物はテーベのパウロとされ、「初代隠者聖パウロ」と呼ばれています。使徒の聖パウロとは別の人物となります。キリスト教に根差した隠者たちは多くの場合、砂漠や森、洞窟、建物の中に住んでいました。そのような隠遁場所は「隠者の庵(いおり)」と呼ばれ、そこで祈りや懺悔を行って神への信仰を深めたり、神学を勉強して思想を深めたり、聖書の翻訳などを行っていました。
 修道院で飲食や会合して、付近のあばら家で最低限の暮らしをしていた隠者もいたそうですし、貴族の領地にある装飾用の建物に住んでいた隠者もいたそうです。隠者の知恵を求めて訪ねてくる来訪者は多くいたようで、隠居といえども厭世的な孤独とは無縁な人がほとんどだったようです。沢山弟子をとって大賑わいの隠者もいたとか。
 では、隠者に関する絵画13点をご覧ください。


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「二コラ・プッサン作  1637-38年」
初代隠者である聖パウロ。彼はエジプトのテーベで生まれ、
ローマ皇帝のキリスト教迫害から逃れ、砂漠の洞穴で隠者と
しての生活を行いました。
landscape-with-saint-paul-the-hermit-nicolas-poussin 1637-38

「グエルチーノ作  1591-1666年」
裸同然の姿で神への祈りを捧げ続ける聖パウロ。
食事の心配はいりません。カラスが彼の元へ毎日パンを運んで
来てくれたそうです。カラスいい子ですね^^
'St. Paul the Hermit Fed by the Raven after  Guercino

「lorenzo garbieri 作  1580-1654年」
聖パウロが113歳になった時、一人の訪問客が訪れます。
彼は聖アントニウス(90歳)でした。聖アントニウスは修道生活の
父と呼ばれており、悪魔の誘惑を跳ね除けた聖人として有名です。
st anthony abbot buryingsaint paul the hermit lorenzo garbieri

「ディエゴ・ベラスケス作  1599-1660年」
聖パウロと聖アントニウスの元へパンを届けるカラスさん。
カラスは内心で「えっ!なんか違う爺さんがいる!パン一個しか
ないんだけど!?」と焦ったのかも・・・しれませんw
st anthony abbot and st paul the hermit Diego Velazquez

マッティア・プレティ作  1613-99年」
こちらも聖パウロの元へパンを届けるカラスの絵画。
右下をよーく見ると、聖アントニウスがさり気なくいます。

saint paul the hermit mattia preti

「ホセ・デ・リベーラ作  1591-1652年」
またまた聖パウロさんの作品。頭蓋骨を一心に見つめており、
命の儚さやこの世の無常さを感じているようですね。
隠者の傍にはしばしば頭蓋骨が描かれます。
saint-paul-the-hermit jusepe de ribera

「ヒエロニムス・ボス作  1495-1505年」
隠者三名を描いた三連祭壇画。左から聖アントニウス、
聖ヒエロニムス、聖アエギディウスです。アントニウスさんは
怪物さんに虐められているようですね^^;
Bosch Hermit St Anthony Jerome and Giles 1495-1505

「Jan Adriaensz van Staveren 作  1650-68年」
こちらは特定の名を持たない隠者さんが、廃墟にて祈っている
作品です。中世から近代にかけて、修道院が隠者をサポート
しました。食事や集会などは修道院で行い、後は静かな場所で
一人隠者として暮らすのです。
Jan Adriaensz van Staveren hermit praying  ruin 1650 – 68

「ヘラルド・ドウ作  1664年」
十字架を手に持ち、神へ祈りを捧げる隠者。
机には砂時計が置かれ、人生は有限であると語っています。
Gerard Dou A hermit. 1664

ヘラルト・ドウ作  1670年」
ヘラルドさん二枚目。6年後の作品。木が生える廃墟の中で
十字架を持つ隠者というテーマは同様ですが、本やランプ、
頭蓋骨など小物が増えていますね。
DOU, GERRIT Hermit at prayer 1670

フェデリコ・ベンコヴィク作  1667-1753年」
頭蓋骨を手に持ち、メメント・モリ(死を想え)について瞑想する
隠者。孤独での瞑想の時間は、自己や世界を深く考え、悟りを
開くのに重要となるのです。

Federico Bencovich

フランソワ・マリウス・グラネ作  1831年」
読書をする隠者という題名。かなり本から距離があるので、
もしかしたら老眼・・・なのかしら?
うたた寝しているわけじゃないよね?←失礼すぎるw
Hermit reading François Marius Granet1831

カール・シュピッツヴェーク作  1808-85年」
この隠者さんの方が寝てましたw 居眠りする隠者という作品。
地平線が続く青い海。暖かい木漏れ日。そよそよとそよぐ風。
こんな素敵なところで読書していたら、誰だって眠くなりますね^^
the-sleeping-hermit Carl Spitzweg

 古代から現代に至るまで、隠者は「知恵を持ち、人々に忠告を与える賢者の老人」というイメージを持っています。聖パウロは(おそらく)壮年の時から隠者となっているのに、描かれる絵画は老人ばかり。若くして隠者になった者もいたと思われるのに、絵画は老人が殆どです。キリストの復活を見た聖女マグダラのマリアはその後、隠者となっていますが、隠者=若い女性というイメージはほぼありませんよね。
 それはやはり、隠者=悟りを開いた者というイメージがあるからではないでしょうか。タロットの愚者にもあるように、若者は向こう見ずで好奇心旺盛、どんな困難があろうか立ち向かうという「動」としてのイメージを持っています。対する老人は思慮深く慎重、家で思考するという「静」のイメージを持っています。その先入観はいつの時代に出来たかは分かりませんが、大昔の思想が今でも受け継がれていると思うと、なんだか素敵ですよね^^

→ 聖アントニウスの誘惑についての絵画を見たい方はこちら
→ 聖ヒエロニムスについての絵画を見たい方はこちら


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