
イアソンはギリシャ神話に登場する、女神ヘラの加護を受けた英雄です。
ギリシャのイオルコス国の王の息子として生まれたイアソン。父が他界して叔父ぺリアスが王位を継いだ為、ケンタウロス族の賢者ケイロンの元で育てられました。成人したイアソンは王権の譲与を求めましたが、叔父は「コルキスにあるという黄金の羊の毛皮を持ち帰る」という条件を出します。それはほぼイアソンを殺す口実なのでした。
それを受けたイアソンは仲間に頼んで巨大なアルゴ―船を建造してもらい、乗組員を募集します。集まったのはヘラクレスやオルフェウスなど50名の勇士達。彼等「アルゴナウタイ」は勇んで大海原を出発し、数々の冒険を経てコルキスへ到着します。
しかし、コルキス王は「火を吐く牡牛を駆って土地を耕し、竜の歯をまけ」という無理難題を吹っ掛けます。そこへ救いの手を差し伸べたのは王女メディア。魔女である彼女はイアソンを愛していたのです。(女神様のパワーによるものや、イアソンが口説いたという説もあり) 結婚するという事を条件に、メディアはイアソンに魔法をかけ、無事に黄金の毛皮を入手します。
イアソンはただちにアルゴ―船を出航。黄羊毛皮があるから王位を譲れと言いますが、叔父ぺリアスは断固拒否。メディアはそれを知ってぺリアスの娘達を騙し、ぺリアスを殺してしまいます。そのせいでイアソンは国へいれなくなり、コリントスへと逃れてそこの王女と婚約してしまいます。裏切りに怒り狂ったメディアはコリントスの王女と王を殺し、イアソンとの子供も殺してしまいます。イアソンは失意を胸に放浪し、アルゴー船の残骸の下敷きになって死んでしまったそうです・・・。
栄光から大転落の人生となった、イアソンの絵画13点をご覧ください。
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「ウィリアム・ラッセル・フリント作 1924年」
ケンタウロスの賢者ケイロンに養育されたイアソン。王だった父は
他界し、叔父ぺリアスが後を継ぎました。成人となったイアソンは
王位を得るために、仲間達と共にアルゴー船に乗って黄金の毛皮を
入手する旅に出かけます。

「ジーン・フランソワ・デ・トロイ作 1742-3年」
晴れてコルキスの国へ到着したイアソンは、王女(王の娘とも)である
メディアと出会い、愛し合います。
(ヘラとヴィーナスの力という説と、イアソンが口説いた説があります)

「ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス作 1907年」
黄金の毛皮を手に入れる為には、難題を突破しなければなりません。
「私に任せてちょうだい。最強の魔法をかけるから」とメディアは
何やら調合をしているようですね。こぽこぽ。

「サルヴァトール・ローザ作 1615-73年」
メディアの魔法で絶対に傷付かない身体となり、助言を受けた
イアソンは火を吐く牡牛、武装した兵隊、毛皮を守る竜を次々と
攻略することに成功します。
→ ローザの絵画をもっと見たい方はこちら

「作者不詳 ドイツのデッサウの美術館にある作品 1766-70年」
竜を相手しているイアソンに、眠りの魔法を竜にかけようとする魔女
メディア。本当に致せり尽くせりで、イアソン殆ど何もしていない・・・。

「アンニーバレ・カラッチ作 1560-1609年」
竜が眠っている間に金羊毛皮をこっそりと入手。背後には毛皮を
持ち帰るイアソンが描かれています。

「Erasmus Quellinus 2世作 1630年」
金羊毛皮を持って走るイアソン。ふと銅像を振り返っているのですが、
この方は誰なのでしょうか・・・。
ヘラクレス・・・なわけないか^^;

「ジーン・フランソワ・デ・トロイ作 1742年」
竜を倒し(寝てるけど)、金羊毛皮を入手して「獲ったどー!」と叫ぶ
イアソン。周囲にはメディアだけではなく、アルゴナウタイの方々も
祝福に来てくれています。集合写真みたいな感じですね^^

「Michele Cortazzo 作 1808年頃」
金羊毛皮を持ち、ドヤ顔をする英雄イアソン。
しかし、この時が人生の絶頂で、彼はあっという間に下り坂を
転げ落ちていくのでした・・・。

「ハーバート・ジェームズ・ドレイパー作 1904年」
アルゴー船の逃走を追跡するコルキス側に対し、過激派(?)の
メディアは共に連れていた幼い弟アプシュルトスを殺し、亡骸を
切り刻んで海へ投げました。追手がそれを拾っている間に、
アルゴー船は逃げ延びたのです。怖すぎるわー!

「シャルル=アンドレ・ヴァン・ロー作 1705-65年」
金羊毛皮を持って来ても王権を譲らないぺリアスに対し、メディアは
奸計を案じて彼を殺してしまいます。イアソンは国外へ逃亡し、
そこの王女と結婚しようとしますが、裏切られたメディアの怒りの
矛先は王女へと向かい殺します。もうドロドロすぎます。

「シャルル=アンドレ・ヴァン・ロー作 1705-65年」
同じ作者が同様のテーマを二枚描いておりますね。彼女はイアソン
との子供を殺し、飛竜がひく車に乗って何処かへと去ったそうです。
イアソンは失意の内にアルゴー船の下敷きとなって息絶えました。
イアソンの力はメディアの毛の筋ほども及びませんでしたね・・・。

「ギュスターヴ・モロー作 1826-98年」
象徴派のモローはそんな二人を、幻想性溢れる美しい姿として
描いています。輝く愛は脆く瓦解し、黒く塗り潰されて闇へと
還って行ったのでした・・・。

登場人物の誰もが不幸になってしまったこの物語。人々をかき乱して殺戮したのは魔女メディアでしたが、彼女はイアソンの為を想ってやったことであり、そもそもメディアがイアソンを好きになったのはヘラとヴィーナスが仕向けたからです。女神様のちょっとした運命の操作により人々が死んで行き、守護するはずだったイアソンまで野垂れ死んでしまったのは、「神の残酷さ、運命の無慈悲さ」を物語っていたのかな・・・などとと色々考えてしまいました^^;
話しは変わりますが、イアソンの英語読みはジェイソンという事を知り驚きました。ジェイソン。あの13日の金曜日の彼と同じ名前なのね。なんか、無念を抱えたイアソンの遺体が蘇生し、暴れ回ってもおかしくないような気がしてきました・・・。←ぇ!? ・・・いや、アルゴー船の下敷きになったから難しいですかね^^;
→ オルフェウスに関する絵画を見たい方はこちら
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>> 季節風様へ
こんばんは^^
「私はあなたの為にやっているのよ」と思っていても、相手は迷惑に感じるという事はありますよね…。
自分の価値観だけで判定せず、相手の気持ちを思いやって行動したいですね。
メディアは太陽神の血筋を引いているし、もともとは土着信仰の女神であったようです。
ヘラとヴィーナスにしても手出しができなかったのかもしれません。
原始的な女神としての性質を持つメディアに愛され、嫌われたイアソンは運が悪かったとしか…。