Follower Of Ludwig Hofman 1832-95 -

 へーローとレアンドロスは、ギリシャ神話に登場する悲劇の恋人たちです。
 アフロディテ(ヴィーナス)を祀る女官へーローは海峡付近のセストスにある塔に住んでおり、海峡の対岸に住む青年レアンドロスと愛し合っていました。しかし、レアンドロスは彼女に会う為、毎晩海峡を泳いで渡っていました。へーローはその間、彼が迷わないよう松明を灯していたのです。
 しかし、ある夜は嵐が起こり、波が荒れました。松明は消え、レアンドロスは目印を失って力尽きて溺れ死んでしまったのです。流れ着いた彼の死体を発見したへーローは深く絶望し、塔から海に身を投げて彼の後を追ったとされています。
 大海原へと消えていった二人、へーローとレアンドロスの絵画13点をご覧ください。

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「イングランドにあるタペストリー  1630年」
女官へーローの元へ根性で泳ぎ切ったレアンドロスの図。
彼が泳いだ海峡はダーダネルス海峡。ほぼ真っ暗闇の中、
松明の光だけを頼りに毎日泳いで渡って来たのです。
TAPESTRIES FROM ENGLAND  1630

ピエール・クロード・ドロルム作 1814年」
会えた事が嬉しくていちゃつく二人。へーローは女官なので
恋愛禁止のような気がしますが、愛の神ヴィーナスに仕えている
から大丈夫!のようです。頭にかけているのはシャンプー・・・?
Pierre Claude François Delorme 1814

「ウィリアム・ターナー作  1775 – 1851年」
二人の逢瀬は続き、ある日の晩は激しい嵐になりました。
へーローが松明を振るも、強風にかき消えてしまいます。
ターナーはそんな不気味な夜を巧みに描いていますね。
Joseph Mallord William Turner 1775 – 1851

Jean-Joseph Taillasson 作  1789年」
一向に恋人が訪れない事に不安を抱くへーロー。「きっと、嵐だから
諦めたのよね・・・」という考えで納得しようとしても、不安は募ります。
そして翌朝、へーローは砂浜で変わり果てた無惨な恋人の姿を
発見したのです。

Hero and Leander. 1789. Jean Joseph Taillasson

フェルディナント・ケラー作  1842-1922年」
強風吹く中、恋人の遺体を発見して絶句するへーロー。
背景の荒波やカモメで、悲劇の雰囲気が助長されていますね。

Hero Finds Leander by Ferdinand Keller

ヤン・ファン・デン・ヘッケ作  1635-37年」
こちらは愛の神キューピッドも現れ、彼の死を嘆いています。
こっそりとヴィーナス様も二人の愛を応援していたのかもしれません。
Hero laments the dead LeanderJan van den Hoecke 1635-37

ヒリス・バッケレール作  1640年」
こちらはお付きの乳母のような老女と、キューピッド二人が
描かれていますね。そして気になる部分はレアンドロスのポーズ。
上の作品とほぼ同じでは!?年代も近いので参考にしたのかな?
Hero mourns the dead Leander Gillis Backereel 1640

ウィリアム・エッティ作  1787-1849年」
くず折れるようにレアンドロスに抱きつき、全身で悲しみを表わす
へーロー。ギリシャの恋人達は相手の後を追いますが、彼女も
その例に漏れず、塔の上から海へと身を投げてしまったのでした。

Hero And Leander by William Etty

ニコラス・レニエ作  1591-1667年」
両手を大きく広げ、嘆き悲しんでいるというより「どうして愛する人を
奪ったの?」と神々に疑問を投げ付けているかのような表情。
神は時に残酷なのです・・・。
Hero and Leander - Nicolas Regnier

「サルヴァトール・ローザ作  1615-73年」
物語では自然とレアンドロスが打ちあがったような感じなのですが、
作者は「それはおかしい」と思ったのか、背後には船があり
漁師のおじさん達が彼を運んでいます。確かに現実的ですね。
Hero And Leander by Salvator Rosa

ドミニコ・フェッティ作  1621-22年」
海のニュムペーであるネレイド達がレアンドロスを回収中。ネレイドは
時に男を破滅させますが、この時は故意ではなく事故だったの
かな。もしかしたら、漁師ではなくネレイド達が彼をへーローの元へ
届けたのかもしれませんね。
Domenico Fetti  1621-22

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1605年」
こちらもセクシーなネレイドに囲まれるレアンドロスの遺体。
なんかわざと溺れさせているように見えるのは気のせいか・・・?
右側にいる赤青の服の人はへーローかな?
レアンドロスを取り戻すのはちょっと大変そうです。
Peter Paul Rubens - Hero and Leander 1605

Ludwig von Hofmann の追随者作  20世紀」
冷たくなった唇にそっと接吻するへーロー。現代では飛行機や
大型船など移動手段が優れておりますが、当時は海難事故も
多かったことでしょう。ターナーも魅せられて描いた通り、
荒れた海は本当に怖いですね。
Follower Of Ludwig Hofman 1832-95

 レアンドロスが渡ったとされるダーダネルス海峡は、アジアとヨーロッパを隔てる海峡です。へーローが西洋側、彼がアジア側だったそうで、二人は人種を越えた愛を育んでいたのですね。ダーダネルス海峡の長さは70kmで、幅は1.2〜6.5kmとされています。都合よく一番短い場所とは限らないので、レアンドロスは約3㎞、往復で約6㎞くらいを毎日泳いでいた事になります。6㎞歩くだけでも大変なのに泳ぐとか。愛って凄いですね・・・。

 このレアンドロスの偉業は誰にも真似ができないとされていましたが、それをやってのけた人がいます。詩人バイロンです。彼は片足が不自由であっても泳ぎは得意であったようで、「私がレアンドロスの愛を証明してやる!」とたった1時間10分程度で泳ぎ切ってしまったそうです。その後にも何人かがダーダネルス海峡の横断に成功していますが、毎晩女性に会うという理由の為に何度も海峡を渡る男はレアンドロスだけです。
 現代の水泳大会に出場したら、ぶっちぎりで優勝できるかもしれませんね^^;


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