Jusepe De Ribera  1591-1652 Ixion -

 ギリシャ神話に登場するイクシオンとタンタロスは、神々の怒りを買って罰を受けることになった人間です。
 ラピテス族の王子イクシオンはデイオネウスの娘ディーアと結婚する事になりました。彼はデイオネウスを殺してしまいますが、その罪はゼウスの取りなしによって許され、神の宴に招待される事になります。ところが、イクシオンは神の宴でゼウスの妻ヘラを誘惑しようとしたのです。
 しかし、その企みは筒抜けで、ゼウスはあらかじめ雲でヘラの化身を作っておきました。雲相手に思いを遂げたイクシオンは、神々の怒りを受けて奈落タルタロスへと送られます。彼はその罰として、燃えさかる車輪に縛り付けられ、空中を絶え間なく回転し続けることとなったのでした・・・。

 一方、タンタロスはリュデイア(トルコ周辺)の王でした。彼は人間にも関わらずゼウスと親しく、不死の身体を得ていました。しかし、タンタロスは神々を国へ招いた時に息子ペプロスを殺して料理し、シチューに入れてしまいました。神々はそれに気付いて食べませんでしたが、デメテルは口をつけてしまったそうです。(その後息子は神の力で復活しました) また、タンタロスは神の食物を盗んで友人に分ける事もしました。
 その行いに怒った神々は彼を奈落タルタロスへ送り、沼の上にある果樹に吊るしました。口が乾いて沼の水を飲もうと身をかがめると直ぐに引いてしまい、お腹が空いて樹の果物を取ろうとすると、直ぐに風が吹いて枝がそれてしまいます。こうして不死であるタンタロスは、永遠に渇きと飢えに苦しみ続けるのでした・・・。
 では残酷な罰を受けるイクシオンとタンタロスの姿13点をご覧ください。

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イクシオン



カルロ・マラッタ作  1625-1713年」
結婚相手の父を殺し、主神の妻を誘惑しようとする、不届き者で
恐い者知らずなイクシオン。しかし、ゼウスは彼の企みを
見抜いており、雲でヘラの化身を作っていました。

Ixion Embracing the Cloud, Carlo Maratta 1625-1713

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1615年」
「麗しのヘラ様だ~!」と化身の頬に口づけしようとするイクシオンに、
「馬鹿ね。それは偽物よ」とポーズを決める本物のヘラ様。
いや、もうその凄い肉体は雲じゃないですって・・・。
Pierre Paul Rubens 1615

「ピーテル・パウル・ルーベンスの追随者作  17世紀」
追随者さんが左右反転のそっくりな構図で描いたんですね。
その雲はネペレ―と呼ばれ、やがてイクシオンとの子を産みました。
その子は雌馬を相手にし、半人半馬のケンタウロスの祖となったと
されています。
After Peter Paul Rubens

「陶器アンフォラに描かれた赤絵式の作品  4世紀頃」
イクシオンはタルタロスへ連れていかれ、恐ろしい罰を受ける事に
なりました。炎が吹きあがる車輪にくくり付けられ、高速で
ぐるんぐるんと回されます。熱い、痛い、目が回るの三重奏です。
Amphora with the myth of Ixion 4th

「ホセ・デ・リベーラ作  1591-1652年」
悪魔のような姿の執行人に車輪を引かれ、イクシオンはよじった
身体で回転する・・・。悪夢のような恐ろしい作品です。
Jusepe De Ribera  1591-1652 Ixion

「Giovanni Battista Langetti 作  1625-76年」
危ないアングルをしたイクシオンが、蛇が絡まる車輪にくくり
付けられていますね。これでどうやって回るんだろう・・・。
足元では冥界の渡し守カロンと思われる者が漕ぎこぎしていますね。
Giovanni Battista Langetti - The Torture of Ixion 17th

アビル・デ・プジョル作  1785-1861年」
火がくすぶる中、蛇で車輪にくくりつけられて回るイクシオン。
炎で攻撃しようとしている女性は・・・。め、メデューサ!?

Ixion Chained In Tartarus by Abel de Pujol

ジュールス・イーライ・ドローネー作  1828-91年」
イクシオンの苦悶の叫び声が聞こえてきそうな、おどろおどろしい
作品ですね。足のよじり方と力の入れ方がリアル感を出しています。

Ixion Thrown Into Hades by Jules Elie Delaunay



タンタロス


「Gioacchino Assereto 作  1600-49年」
下には沼、上には果物。どんなに喉が渇いていても、どんなに
飢えていても、水と食料はタンタロスの元から逃げ、永遠に
手に入ることはありません。
Gioacchino Assereto Tantalus

Giovan Battista Langetti の追随者作  17-18世紀頃」
くくり付けられながら林檎っぽい果物を食べようとするタンタロス。
ですが、その瞬間に果物は風で飛んで行ってしまうのでしょう。
派手な拷問をされているイクシオンと異なり、地味な罰ですが
これが永遠に続くと思うと精神的にキツイです。
Tantalus, attributed to Giovanni Battista Langetti 17th

「ドイツ出身のカラヴァッジョの追随者作  17世紀」
身体がほぼ沼に浸かってしまっているタンタロス。
首を下げれば飲めちゃうように見えるのですが、
多分飲もうとすると水がぎゅーんと激減します。
Dutch Follower of Caravaggio, 17th

Giovan Battista Langetti 作  1625-76年」
なんかもう果物を食べているように見えるのですが。
おそらくこの後、果物が走って逃げます。←ぇ
もしくはタンタロスも長い時を経て、果物を得る方法を編み出したとか?
Tantale - Giambattista Langetti

「ホセ・デ・リベーラ作  1591-1652年」
イクシオンに引き続き、リベーラさん再登場。彼に描かせると、
タンタロスの罰も恐怖の拷問に変化します。
果物を見る視線が痛々しく見えますね・・・。
José de Ribera - Tántalo (serie de las Furias)

 さて、あなたは神の怒りを買ってしまいました。どのような罰がいいでしょうか?

1 イクシオンのように炎の車輪にくくり付けられ、回転させられる
2 タンタロスのように水と果物があっても永遠に食べられない
3 プロメテウスのように永遠に鷲に肝臓をついばみ続けられる
4 シシューポスのように永遠に大岩を山頂へと押し上げ続ける
5 マルシュアスのように全身の皮膚をべろーりと剥がされる
6 メデューサのように恐ろしい怪物に変化させられる

 正直に言うとどれも嫌ですが、個人的に一つ選ぶとしたらタンタロスかな^^; 飢えと渇きでガリガリになるけど、痛くはないし・・・。一番嫌なのはプロメテウスとマルシュアス。(二つですw) 内臓をご飯にされるのをループするなんて恐ろしいし、順番に自分の皮膚がはがされていくのを見るなんて無理すぎます!でも、意識を保ったまま怪物になるのもいただけないなぁ・・・。ちなみに、北欧神話のロキはこんな罰を受けていました。
7 岩にくくりつけられ、激痛がする蛇の毒を顔に垂らされ続ける
 ・・・これも嫌ですね^^;
 まぁ、あれです。どんな罰も受けたくないですと回答する事にします。←ぇw

→ プロメテウスについての絵画を見たい方はこちら
→ マルシュアスについての絵画を見たい方はこちら
→ ロキについての絵画を見たい方はこちら


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