Sir Edward Coley Burne-Jones 1833 – 1898 -

 神と人間の仲介役を務める天使は、預言者や聖人に様々なお告げを伝えています。
 聖書には天使が聖歌を歌ったり楽器を奏でる場面は出てきませんが、天使が歌を歌ったり、楽器を弾いたりする絵画は数多く存在します。それはギリシャの女神ニケがリラの音色で人々を従わせるという伝承に基づいているともされていますが、中世やルネサンスの時代は世俗的な楽器は(バグパイプ、ハープ、手回しオルガンなど)卑しいものとされ、聖なる音楽とは区別されていました。天使達が楽器を奏でる姿を描いたのは、芸術家たちが「神を賛美しているなら、立ったまま褒め称えたりしているより、美しい旋律を奏でる音楽の方がいいだろう」と考えたからなのかもしれません。聖歌やキリスト教音楽の発達も関係しているように思います。教会は音楽に満ちあふれていますしね^^
 では、天使の楽隊についての絵画13点をご覧ください。

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マッテオ・ディ・ジョバンニ作  1474年」
マリアの昇天を描いた作品。巨大なるマリア様を中心に据え、
周囲には楽器を持った天使達が取り囲んでいます。ハープや
リュート、笛など様々な楽器を持っていますね。交響楽団と
言った風情です。

Matteo di Giovanni’s The Assumption of the Virgin 1474

バスコ・ペレイラ作  1535-1609年」
こちらは聖母子像と唯一神の周囲に、天使の楽隊がこれでもか
というくらい密集しています。チェロやヴァイオリン、トロンボーンの
ような楽器がありますね。この至近距離で聖歌を演奏されたら、
なかなかの大音量のような気が・・・。←ぇ

Vasco Pereira Lusitano 1604

「ファン・エイク兄弟作 1427-29年」
ファン・エイク兄弟の代表作「ゲントの祭壇画」の左上部分。
8名の天使達が楽譜を見て歌を歌っています。 この表情で、
ソプラノやアルトなどのパートが分かるそうです。それにしても
全力で歌いすぎて、顔が怖いです・・・^^;
von eyck Singing Angels1427-29

「ハンス・メムリンク作  1430-94年」
横一列に並んで静かに神を称える天使の楽隊たち。
見たことがない楽器もちらほらありますね。左二つはどういう音が
出るのだろう・・・。
Hans Memling  Coro de Ángeles

「Cristovão de Utreque の追随者作  1501-25年」
聖母マリアを称える可愛らしい天使達。吹く楽器ばかりですね。
終末の到来の際、天使はラッパを吹いて告げるとされ、
そのイメージがあるからなのかなぁと個人的に思います。
attributed to Cristovão de Utreque 1501-25

ガウデンツィオ・フェッラーリ作  1534年」
イタリアの都市サロンノにある、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会
の天井画。奏楽の天使達がびっしりと天井を覆い尽くしています。

Gaudenzio Ferrari  The Concert of Angels, 1534
(画像元)

「作品アップ」
聖歌を歌い、笛を吹き、弦を弾いています。左上の笛を二つ持って
いる天使さんが気になる!ダブルで奏でるのだろうか・・・。
Gaudenzio Ferrari

「作品アップ」
こちらは右下のバグパイプのような楽器を持った天使さんが
気になります。こちらもダブルですねw バグパイプやリュートは
地域や時代によっては世俗的な罪深い楽器とみなされますが、
こちらの作品に表れています。天使が持っていればOK!ですね。
Concentus angelorum by Gaudenzio Ferrari

「レオナルド・ダ・ヴィンチの工房作  1506年頃」
岩窟の聖母の祭壇画の両端ともされている、妖艶な雰囲気を
たたえた天使さん。ヴァイオリンを静かに奏でています。
Associate of Leonardo, An Angel in Green with a Vielle -1506

「レオナルド・ダ・ヴィンチの工房作  1506年頃」
こちらも祭壇画の両端に位置する天使さん。物憂げな表情で
リュートを奏でています。あ、上の方は裸足だったのに、
この方はサンダルを履いていますね。
Associate of Leonardo An Angel in Red with a Lute -

「Giovanni Laurenti(?)作  1590年」
受胎告知の場面。天使ガブリエルが聖母マリアに懐妊したことを
告げています。幼い天使達が楽しげに楽器演奏をしていますね。
Giovanni Laurenti’s 1590

ルドヴィコ・カラッチ作  1616年」
ナポリのサンパオロマッジョーレ教会にある作品。バロック的な
色彩の中、少年少女のような天使達が楽器を奏でています。
頭上の天使のカスタネットが巨大ですね。トライアングルもある。
Ludovico Carracci - Chiesa di San Paolo Maggiore 1616

ウィリアム・アドルフ・ブグロー作 1825-1905年」
天使の歌という題名の美しい作品。聖母マリアの腕の中ですやすや
と眠るキリスト。三人の天使が奏でているのは子守歌でしょうか。
この場に居合わせたらぐっすりと安眠できそうです。
William-Adolphe Bouguereau (1825-1905) Song of the Angels

テオドル・アクセントヴィチ作 1859-1938年」
優しいタッチで描かれたヴァイオリンを弾く天使。
楽器は職人さんが丁寧に作るものですが、天使の中にも楽器
職人がいるのだろうか。もしくは聖なる力で一瞬にして生み出
されるとか・・・。←ぇ
Teodor Axentowicz 1859-1938

エドワード・バーン=ジョーンズ作  1833–98年」
個人的に大好きな作品。うつむき加減で静かにフラジオレットを
吹いています。中世写本のような美しい色彩使いですね。
Sir Edward Coley Burne-Jones 1833 – 1898

 音楽には詳しくありませんが、キリスト教音楽の歴史を調べてみると、数えきれないほどの宗教音楽が作られ、奏でられてきたことが分かりました。
 絵画の天使達が奏でている音楽は残念ながら分かりませんが、人類の歴史に則した音楽だったのかなぁと思います。グレゴリオ聖歌とか、アヴェマリアとか、近代だったらきよしこの夜とか・・・。天使を描いた画家たちは音楽を頭に思い浮かべながら描いていったのでしょうかね。天使で構成されたコンサートが催されたら、ぜひ行ってみたいなぁ(笑)

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