Book of the Holy Trinity Late 15th -

 メリュジーヌはフランスの伝説に登場する、上半身が美女で下半身が蛇の姿をしている人物です。ドラゴンの翼が生えているともされています。
 1397年にジャン・ダラスという人が「メリュジーヌ物語」という散文を書き、その数年後にクートレッドという人もメリュジーヌについての散文を記し、メリュジーヌの存在が広く知られるようになりました。それ以前にはメリサンドという名で民話に登場していたそうです。
 物語によると、ポワトゥー伯のレイモンはある日、メリュジーヌと会って愛し合うようになります。彼女は「土曜日に私を見ないで」という事を条件に結婚を承諾します。二人は10人の子をもうけ、富栄えて裕福になりました。しかし、レイモンは悪い噂を耳にしたせいで約束を破り、沐浴中のメリュジーヌを見てしまいます。その時の彼女は下半身が蛇という恐ろしい姿をしていました。メリュジーヌは母親の呪いによって一日のみ蛇の姿となってしまっていたのです。
 秘密を知られてしまった彼女は「もう貴方と共にいられません」と竜の姿になり、城から飛び立っていったそうです。しかし、幼い子供を育てる為に定期的にこっそりと城に戻っていたとか。また、この城の血統の誰かが亡くなる時、メリュジーヌは戻って嘆き悲しむとされています。
 では、メリュジーヌにまつわる絵画13点をご覧ください。

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「作者不詳  彩飾写本の挿絵より」
メリュジーヌとレイモンが結婚している場面。神父らしき人物が
メリュジーヌに金の輪をあげているように見えますが・・・。
結婚の際に指輪の交換をする習慣は14世紀より始まったと
されているので、これは指輪・・・なのかな?
Wedding of Mélusine

「メリュジーヌ物語の挿絵より   1400-50年」
こちらも二人の結婚を描いた作品。お互い手を固く握り合い、愛を
誓っています。「土曜日に私の姿を見ないで」という条件付きで。
Roman de Mélusine  1400-50

「作者不詳 アントワープの写本挿絵より  1491年」
こちらはメリュジーヌとレイモンの出会いの場面を描いた作品。
どうして衣服を着ていないのかとか、ヴィーナスの誕生のような
ポーズなのに隠せられてないとか、おへそが出ているとか
色々気になる部分はありますが、とにかく二人は夫婦となりました。
Legend of Melusine  Antwerp 1491  Melusine and Counte Raymond

「メリュジーヌ物語の挿絵より  1400-1500年」
しかし、兄がレイモンに「彼女は浮気をしている」という事を吹き込み、
彼は疑いのあまり、土曜日に沐浴している姿を覗いてしまいます。
すると、メリュジーヌの下半身が恐ろしい蛇に変化しているでは
ありませんか!
Roman de Mélusine Jean d'Arras 1450–1500

「ベリー公のいとも豪華なる時祷書より  1392-3年」
風呂桶からはみ出すにょろんとした蛇の尻尾。「メリュジーヌは
人間ではなかったのだ・・・!」とレイモンは衝撃を受けてしまいます。
Mélusine in her bath. Book of Hours of Duc de Berry 1392-3

「メリュジーヌ物語の挿絵より  1478年」
「やばい。どうしよう」と言った表情のレイモンに、「みーたーなー」と
いうじとっとした視線を投げかけるメリュジーヌ。しかし、この時は
レイモンが後悔し反省したこともあり、彼女は水に流そうと考えます。
Le livre de Mélusine  1478

「Julius Hübner 作  1844年」
19世紀に描かれたメリュジーヌ。尻尾が蛇ではなく、二股に
分かれていて魚のようですね。メリュジーヌはマーメイドやセイレーン
などと結び付けて考えられ、人魚のような姿で描かれる事もあります。
Melusine  Julius Hübner 1844

「メリュジーヌ物語の挿絵より  15世紀」
しかし、その後に事件が起きてしまいます。息子であるジョフロアが、
弟が騎士ではなく修道僧になった事を怒り、修道院に火を放って
弟共々修道僧を焼き殺してしまったのです。怒ったレイモンは
「お前のような怪物の子はまともじゃない」と言ってしまったのです。
Geoffroy incendiant Maillezais Melusine insultee Raimondin 15th

「ギュスターヴ・ドレ作  1832-83年」
それを受け、メリュジーヌは嘆き悲しみながら竜に姿を変え、
天空へと飛び立ってしまいました。
後悔して悲しみに暮れるレイモンを残して・・・。
Melusine Gustave Doré

「メリュジーヌ物語の挿絵より  1400-1500年」
幼い子供を残し、大空へと旅立つメリュジーヌ。しかし心配は
いりません。我が子に授乳する為に、定期的にこっそりと帰宅
していたのです。
Roman de Mélusine  1400-1450

「メリュジーヌ物語の挿絵より  15世紀」
こちらも幼い我が子にお乳を飲ませている場面。こちらも足が
人魚のような姿ですね。蛇なのか竜なのか魚なのか・・・。
メリュジーヌさんは不思議な存在ですね。
Roman de Mélusine Couldrette Jean d’Arras 15th

「Book of the Holy Trinity (三位一体の本?)の挿絵より 15世紀後半」
細長い槍を手にし、洋服と蛇が一体化してしまったかのような、
神秘的な生物となったメリュジーヌ。
RPGに出てきたら、おそらく強すぎて倒せません。←ぇ
Book of the Holy Trinity Late 15th

「作者不詳  1806年」
フリードリヒ・ユスティン・ベルトゥッヒさんの書籍「Bilderbuch für
Kinder (子供の絵本)」の挿絵。様々な神話上の生物に紛れて、
右上にメリュジーヌさんがいます。かなり奇抜な色合いですねw
Friedrich Justin Bertuch, Bilderbuch für Kinder 1806  Fabelwesen

 娘は「覗いてはいけません」と言い残し、障子の奥へと消えていく。どうしてこんなに美しい布が織れるのかと訝しんだ老夫婦は、誘惑に負けて障子を覗いてしまう。するとそこにいたのは一羽の鶴だった―・・・。
 この物語は、誰でも知っている民話「鶴の恩返し」。童話としての話は老夫婦ですが、民話によって鶴は男性と結婚し、「鶴女房」という題になっています。人間の男性や女性が、動物や異形と結婚する物語は「異類婚姻譚」とされ、全国各地で確認されているのです。

 このメリュジーヌ物語も異類婚姻譚であり、鶴女房と類似点があるのが分かりますね。日本とフランス。二つの国が直接的に邂逅を果たしたのは1615年頃とされているので、その頃にメリュジーヌなどの婚姻譚が日本に伝わっていったのでしょうか。鶴女房は中国より伝わった物語ともされているので、西洋から中国、日本へと物語が伝わっていったのでしょうか。もしくは偶然に似通ってしまったのか。いずれにせよ、似たお話が全国で語られているというのは興味深いですよね^^



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