Abraham Bloemaert 1564-1651 -

 キリストとサマリアの女は、新約聖書のヨハネの福音書に記されている物語です。
 ある日、キリストと弟子達はサマリア地方の町のはずれにあるシカルへと訪れていました。お昼時にキリストが一人で井戸のそばに座っていると、水がめを持ったサマリア人の女性が来たので、キリストは「水をください」とお願いしました。彼女が「ユダヤ人はサマリアを良く思っていないのに、どうして水を飲む事を頼むのですか?」と尋ねると、キリストはこう答えます。
「水を欲しいと言った者が誰であるかを知っていたら、あなたの方から願い出ている。その者は生ける水をあなたに与えただろう」と。そしてキリストは彼女に神の教えを説き、自分自身がメシア(救世主)であると伝えました。

 サマリアの女性は町の人々のところへ行ってその事を伝えたので、メシアを信じた者はキリストの元へ駆けつけ、シカルの村のサマリアの人々は神の信者となったのでした。この出来事は、キリストの教えが異邦人の世界へと広まった最初のきっかけだったとされています。
 水をくださいと頼み、サマリアの女性に神の教えを説くキリストの絵画13点をご覧ください。


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「作者不詳  シリアの彩飾写本挿絵より」
水がめを置き、井戸にロープを垂らしているサマリア人の女性に
信仰を伝えるキリスト。背後には岩肌と可愛らしい家々が並んで
いますね。
Syrian manuscript

「Southwest German? 作  1420年」
金箔をふんだんに使った美しい中世の作品。ただ、サマリア人の
女性のポーズがかなりワイルドですね。キリストが指をびしっと
させて説いているのに、力仕事の真っ最中です。
Southwest German 1420

Rutilio di Lorenzo Manetti 作  1571-1639年」
「ユダヤであるあなたがどうしてサマリアの私に話しかけるの?」
という問いに対し、
今度はキリストの態度がちょっと気になります。
「水を欲しいと言った者が誰であるかを知っていたら、あなたの方から
願い出ているのになぁ~」という感じの態度なのかな?
Jésus et la Samaritaine by Rutilio di Lorenzo Manetti

ジョヴァンニ・ランフランコ作  1582-1647年」
こちらも日本人の私から見たら、少し態度が大きめなキリスト。
サマリアの女性は「この人が本当にメシアなのかしら・・・?」とまだ
不審げな表情をしていますね。

Giovanni Lanfranco 1582-1647

Giovanni Biliverti 作  1585-1644年」
足を組むキリストって、始めて見たような気がする・・・。
なんというか、井戸に座っているのに玉座のように感じます。
サマリアの女性も負けじとのけ反り、視線を合わせます。
そして、中央の少年は一体誰なのでしょうか?^^;
Christ and the Samaritan Woman at the Well  Giovanni Bilivert

パオロ・ヴェロネーゼ作  1528-88年」
こちらのキリストは謙虚気味ですね。水を汲み中の女性に
「水をください」とお願いしています。向う側の人達は異時同図法で、
女性が人々にキリストの教えを伝えているのかもしれません。
Christ And Samaritan Woman by Paolo Veronese

アンニーバレ・カラッチ作 1560-1609年」
こちらは既にサマリアの女性が村人に広めた後なのでしょうか。
救世主を見に、人々ががやがやとやって来ています。
Annibale Carracci - Samaritan Woman at the Well 1560-1609

アンニーバレ・カラッチ作   1595-97年」
カラッチさん二枚目。キャンバスの向きは変わりましたが、
構図的にはよく似ています。背後のおじさんが一人増えたことと、
キリストの動きがよりダイナミックになった気がします。
Christ Samaritan Woman Painting by Annibale Carracci 1595-97

アブラハム・ブルーマールト作  1566-1651年」
牧歌的で穏やかな感じの作品で、二人ともポーズが控え目です。
フェルメールの描く女性の雰囲気に似ていますね。
Abraham Bloemaert 1564-1651

「グエルチーノ作  1619-20年」
他の作品とは異なり、二人がクローズアップされていますね。
井戸の水汲みは取りやめ、神の教えを懸命に聞いています。
Guercino (Giovanni Francesco Barbieri) 1619-20

「作者不詳  18世紀」
近代の作品ですが、古典的な風情がありますね。
サマリアの女性は微笑みながら、落ち着いた様子で話を聞いています。
Christus und die Samariterin am Brunnen anonymous 18th

ベネデット・ルティ作  1715-20年」
謎の手の動きをするキリスト。恐らく、サマリアの女性はかつて
五人の夫がおり、六人目の男性がいるという事をキリストが言い
当てたので、そのシーンを描いているのだと思います。

Christ and the Woman of Samaria  Benedetto Luti 1715-20

フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラー作  1793-1865年」
こちらのキリストもなんとなく意味ありげなポーズ。これも女性の
男性遍歴を言い当てているところなのかな?
サマリアの女性は気にすることなく、静かに水を汲んでいます。
Ferdinand Georg Waldmueller  Christ Good Samaritan Well

 サマリア人が登場する他の物語として、「よきサマリア人」という話があります。
 「隣人を愛す。では隣人とは何ぞや?」と問う学者に対し、キリストはこのようなたとえ話をしました。「強盗がある人を襲って半殺しにした。瀕死の人が倒れているも、祭司とレビ人は無視をした。しかし、サマリア人は彼を介抱し、宿屋へ連れて行ってお金を払った。彼にとっての隣人とは誰か?」その問いに対し、学者は「それはサマリア人でしょう」と答え、キリストは「なら貴方もそのようにしなさい」と返したのです。
 ユダヤ人から嫌われているサマリア人は、この話でも良人として表現されています。サマリアの女の物語でも、よきサマリア人の物語でも、人種や性別、身分を問わず、善行を行って神の教えを信じた者のみが救われると説いているのです。
 信仰については異なる私達でも、隣人愛の思想は共感できるように思います。この世から差別や偏見がなくなればいいのになぁと祈るばかりです。

→ よきサマリア人についての絵画を見たい方はこちら


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