
キュベレーはフリギア(トルコ中部)で崇拝され、ギリシャローマにも信仰が広まった豊穣を司る地母神です。その信仰は古く、起源は新石器時代までさかのぼるとされています。
キュベレー崇拝は男性の去勢に深く結びついています。両性とも考えられていたキュベレーは、ある日去勢されてそこから樹木が生じ、その実に触れた女性が男の子を産み落とします。アッティスと名付けられた息子は王女と婚約しますが、恋したキュベレーがアッティスを忘我状態にさせて彼を去勢させてしまいます。なんと、その光景を見た王様が自らに同様の処置をした為に、キュベレーの熱狂的な崇拝者と男性の去勢が関連付けられるようになったとされています。なんというか、恐ろしいですね^^;
また、キュベレーは二頭の獅子(ライオン)を引き連れているとされており、それはアタランテとヒッポメネスの夫婦の物語が関係しています。ヒッポメネスは徒競走に勝利してアタランテを妻とする事に成功しますが、キュベレーの神殿で情事をしてしまった為に、女神は怒って二人を獅子に変えてしまったそうです。(男女の愛は怒るんですね女神様・・・)
では、古代の地母神キュベレーについての絵画13点をご覧ください。一部閲覧注意の作品がありますので、ご了承ください。
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「フランスの彩飾写本の挿絵より」
アタランテ&ヒッポメネスと思われるライオンに車を引かせ、
景色を眺めているキュベレー。鶏は警戒、用心深さ、金運などの
シンボルとされていますが、この作品では雄鶏と雌鶏、ヒナが
沢山いるので豊穣や繁殖という意味で描かれているように思います。

「アメリカのフィラデルフィア美術館にある版画より」
立派な衣服を着て、ライオンを従えているキュベレー。
ヘレニズム時代のギリシャでは、キュベレーの信奉者の男性は
去勢を行って社会的に女性とみなされ、女神を崇拝する為に
野性的な音楽演奏や飲酒などを行っていたそうです。

「死のマスター(Master of the Die)作 1530–60年」
世界や動物、ライオンを足元に従えているキュベレーは、どう見ても
男性のような容姿をしていますね。キュベレーの原型の神は
両性具有のアグディスティスとされている為、両性的な容姿として
描いたのだと思われます。

「デン・バーグにある写本「Maître François」」より 1475年」
キュベレー信仰における儀式を行っている作品。
男性三名が剣を手に持ち、やっていることは・・・。あわわ。

「デン・バーグの王立図書館にある挿絵より」
キュベレーをお連れするこちらのライオンさんは四頭もいますね。
太鼓やカスタネット(?)を奏でる楽隊と、手前ではキュベレー
信奉者がおります。手にはナイフ。そして・・・あわわ。

「フランソワ=エドゥアール・ピコ作 1832年」
「ヴェスヴィオ山からスタビエ、ヘルクラネウム、ポンペイ、レシーナを
守るキュベレー」という題の作品。地母神のキュベレーは、火山から
守ってくれる存在と考えられていたようです。火山の猛威から
町の擬人化を守ろうとしていますが、右側のポンペイらしき女性は・・・。

「ルカ・ジョルダーノ作 1634-1705年」
子供から動物、植物に囲まれるキュベレー。左手には世界を
象徴する球体を持っています。左側にいる男性は肩身が狭い
想いをしているように見えますが・・・。「女性におなりなさい」と
キュベレー様は仰っているのでしょうか。

「ピエロ・ダ・コルトーナ作 1633年」
神々の会議の中のキュベレーとされる作品。ゼウス達の母親である
レアは、キュベレーと同一視されることもあった為、レアを描いた
ものなのかな、と思います。

「フランチェスコ・アルバーニ作 1578-1660年」
豊穣神ケレス、花の女神フローラ、酒の神バッカスなどに囲まれた
キュベレーの王国という作品。キュベレーは神々の中心的な母親、
という立ち位置だったのだと思われます。

「ヤン・ブリューゲル(父)作 1618年」
画面いっぱいのお野菜や果物で豊穣を表現する作品。
画面中心のキュベレー(?)のポーズは、コレッジョのダナエの
ポーズにそっくりのような気がします。参考にしたのでしょうかね。

「イギリス出身の画家作」
勇気や運、自然を操る地球の擬人化としてのキュベレー。
地母神=地球という連想により、地球を司るまでになりました。
頭上には都市が建ち、手にはラッパや鍵のようなシンボリックな
道具を持っていますね。

「パオロ・ヴェロネーゼの追随者作 17世紀」
こちらは世界を総べる地母神というよりも、一人の女性として描かれて
いるように感じます。右側の尻尾はライオンなのかな?詳細は
分かりませんが、もしかしたら「女性は一人一人が豊穣神だ!」
というメッセージなのかもしれません・・・。

「Albert Welti 作 1894年」
衣服を着ずにライオンに乗り、荒野を疾駆するキュベレー。
この作者にとっての地母神のイメージは、恵み深き美女ではなく、
野性味溢れた荒々しい姿だったのかもしれませんね。

フリギアからギリシアローマへと伝わり、信仰されたキュベレー。男性の性剥奪と深く関わっていたキュベレー信仰は、女性の熱狂的崇拝者が数多くおり、陶酔や性を重視するデュオニソス信仰とも関連して考えられていたようです。ローマ皇帝たちはキュベレーを最高の女神として考え、かのアウグストゥスも妻をキュベレーの化身とし、敬意を払っていたそうです。
しかし、キリスト教の神父たちはキュベレーの事を「みだらなデーモン(悪魔)達の母」と呼び、信仰を否定していました。大地を司るキュベレーの力を借りる魔女は地面から力を得るとされ、魔女疑惑を駆けられた人は籠に入れられて地に足をつかせないようにしたこともあったそうです。
ですが、これらの絵画作品を見る限り、キュベレーは悪魔や魔女の母というレッテルは貼られておらず、古代から連綿として受け継がれた豊穣の女神としての姿が描かれていますね。女神は強しです。
→ アタランテとヒッポメネスについての絵画を見たい方はこちら
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>> ハマーン様を愛する人様へ
こんばんは^^
これは失礼しました。ハマーン様は厳しく気高いお方だったのですね。
家柄と地位を背負い、男性社会の中で生きることは並々ならぬ努力と強い精神や信念が必要で、男性を総べるキュベレーと通じるものがありますね。
シャアが初恋の相手だったとは!しかも嫌われちゃうのですね…(> <)
「女らしい幸せな生き方」とはなんだろうと思ってしまいます。
結婚して子を産むことが「女の幸せ」であるなら、否定したい気持ちもあります。
ハマーン様の立場は複雑で、主人公を追いかけて抵抗されるのは可哀想ですが、男性を押しのけて国を背負い戦う姿は格好いいと思います。
もしかしたらキュベレー様は「子を産む」だけが幸せではない、という意味合いも象徴しているのかもしれませんね…。