Luca Giordano -

 ヘラクレスとオムパレーはギリシア神話に登場する、力自慢の英雄とリューディアの女王です。
 ある日、ヘラクレスは女神ヘラに狂気を吹き込まれ、親友イピトスを殺めてしまいます。それ故に病を患ってしまい、ヘラクレスはデルポイに訪れて神託を受けようとしますが、巫女は取り合ってくれませんでした。彼は怒り、三脚台を奪おうとした為、止めに入ったアポロンと戦闘となりました。ゼウスは双方の戦いを仲裁し、アポロンは「三年間奴隷として奉公すれば、殺人の償いとなり病は治るだろう」と予言を残します。

 こうしてヘラクレスはヘルメスに連れられ、リューディアの女王オムパレーの元で奴隷生活を送ることになりました。その間にもヘラクレスは様々な功績を残したされていますが、こんな伝説もあります。オムパレーは尊大な女主人で、ヘラクレスは女装させられた上に糸紡ぎの仕事をやらされました。オムパレーはヘラクレスの獅子の皮を身にまとい、棍棒を持ちましたが、その重さによろめいたそうです。オムパレーの領地が敵に攻撃された時、ヘラクレスが棍棒を持って敵を掃討したので、オムパレーは彼を夫として、三人の子をもうけたとされています。この物語は画家達の興味を引きたてたようで、想像以上の作品が残されていました。
 糸紡ぎをする女々しいヘラクレスに、棍棒を担ぐ勇ましいオムパレー。あべこべな二人の絵画14点をご覧ください。

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「ポンペイのフレスコ画より 1世紀頃」
神話なので歴史は古く、2000年以上語り継がれている物語です。
お尻がプリっとしたヘラクレスの前に鎮座するオムパレー女王。
「奴隷は女装して糸紡ぎがお似合いよ!」と彼に告げます。
POMPEII, ITALY House of the Tragic Poet Roman fresco

「彩飾写本の挿絵より  年代不明」
中世時代の挿絵はシュールですねw
左側は親友を狂気によって殺してしまうヘラクレス。中央には
女装をするヘラクレス、右側にはヘラクレスの衣装を着る
オムパレーが描かれています。騎士の姿にツッコミたくなりますw
Heracles became a slave of Queen Omphale

「ルーカス・クラナッハ(父)作  1531年」
量産画家のクラナッハは幾つものヘラクレス&オムパレーの
作品を描いています。需要があったのかしら?
糸紡ぎをやらされるヘラクレスの表情は何処となく楽しそう。
美女に囲まれて満更でもない感じ?
Lucas Cranach I - Hercules and Omphale  1531

「ルーカス・クラナッハ(父)作  1537年」
こちらのヘラクレスは四人の美女に寄ってたかられ、
女装させられて困り顔。ギリシャの装いではなく、ルネサンス
時代のドイツの衣装と化しています。
Lucas Cranach the Elder Hercules and Omphale 1537

バルトロメウス・スプランヘル作  1546-1611年」
ピンクのドレスを着ておめかししたヘラクレスに、毛皮を肩にかけて
棍棒を担ぐオムパレー女王。全くよろめいていない!
このまま棍棒振り回して殺戮できそう!

Bartholomaeus Spranger

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1602-5年」
侍女らしき老婆と共に、ヘラクレスのメイクアップにいそしむ女王。
「頭にはどんな髪飾りを付けてあげようかしら~♪」と、
耳を掴んで引っ張っています。
Hercules and Omphale, 1602-1605 by Peter Paul Rubens

アンニーバレ・カラッチの追随者作  1560-1609年」
タンバリンを鳴らすヘラクレスと、勇ましさが板についている
オムパレー。楽器は主人を楽しませる道具として、奴隷の象徴に
用いられているのかな?見つめ合う二人の視線は、主人&奴隷
の間柄を飛び越えようとしていますね。
After Annibale Carracci

フランソワ・ペリエ作  1590-1650年」
こちらもヘラクレスが楽しそうにタンバリンを持っていますね。
頭には花輪を付け、すっかり女性達に溶け込んでいます。
Hercules And Omphale by Francois Perrier

ルカ・ジョルダーノ作  1634-1705年」
なよっとした姿勢で糸紡ぎ棒を持つヘラクレスに、「敵は来ぬか」と
棍棒を持ち鋭く目を光らせるオムパレー。逆のままでも、全然
問題がなさそうですね(笑)オムパレーさんがこのまま大英雄に。
Luca Giordano

「Antonio Bellucci 作  1654-1726年」
可愛い花輪を付けて紡ぎ棒を持ち、ぽよんとした表情のヘラクレス。
肉体は立派だけど、乙女に染まってます。
Antonio Bellucci

「Luigi Garzi 作   1700-10年」
こちらも華やかな住いの中、棍棒を持つオムパレーに、
タンバリンを叩くヘラクレス。後ろのご婦人は噂になっている
マッチョ奴隷を見に来たのでしょうかね。
Hercules And Omphale by Luigi Garzi  1700-10

シャルル・グレール作  1862年」
オムパレーとクピドが、真剣な表情で糸を紡いでいるヘラクレス
を生暖かい目で見守っています。とても綺麗で素敵な絵なの
ですが、この図体と格好で懸命に作業に励んでいるヘラクレスを
見ると、じわじわと可哀想に思えてきます(笑)
Marc Gabriel Charles Gleyre  Hercules and Omphale 1862

ギュスターヴ・ブーランジェ作   1861年」
「いえー、ヘラクレス獲ったどー♪」と喜びを露わにするオムパレー。←ぇ
ピンクのスケスケ衣装を着させられたヘラクレスは、何とも言えない
表情。この絵画、間近で見てみたいなぁ・・・。
Hercules at the Foot of Omphale Gustave Boulanger, 1861

ギュスターヴ=クロード=エティエンヌ・クルトワ作  1912年」
他の作品と異なり、ヘラクレスがかなり若い好青年に描かれて
いますね。二人一緒に糸を紡ぎ、これから起こるロマンスを
前面に表しています。
Gustave-Claude-Etienne Courtois  Hercules the Feet Omphale 1912

 ギリシア神話の豪傑ヘラクレスに対応する北欧神話の人物は、雷神トールと考えられています。
 雷を司るトールは農民を守る守護神であり、槌ミョルニルを使ってバッキバキと巨人をやっつけます。そんなトールにも女装をする物語があるのです。
 ある日、トールは巨人にミョルニルを奪われ、ロキに探らせたところ巨人スリュムの元にあると分かりました。巨人は「返してほしくば女神フレイヤと交換だ!」と言ったので、苦肉の策でトールがフレイヤになりすまし、巨人の国へと赴きます。髭もっさーのマッチョなので色々と問題があるにも関わらず、侍女に化けたロキの口実でスリュムを騙すことに成功し、ミョルニルを取り戻して巨人をやっつけることができた、というお話です。
 いや、この物語本当に面白いですw それにしてもヘラクレスとトールの女装には物語的な共通点はあまりなさそうですが、何か関係があるのでしょうかね?強い豪傑は女装をする運命にあるのかもしれませんね・・・。

→ 雷神トールについての絵画挿絵を見たい方はこちら (女装も二枚あるよ!)


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