
聖家族はキリスト教美術のテーマの一つであり、幼子イエス・キリストと聖母マリア、養父ヨセフが描かれている場面の事を指します。彼等以外にもマリアの母アンナや洗礼者ヨハネ、その他の聖人達が加えられている場合もあります。
幼少期のキリストの記述はそれほど聖書上にはありませんが、「キリストの降誕」や「東方三博士の礼拝」、「エジプトの逃避と滞在」等の物語を基盤にして、キリストとマリア、ヨセフの三名は「家族」の理想的な原型として考えられるようになり、聖家族というモチーフは生まれました。また、「エジプトの逃避と滞在」のテーマも聖家族の一体系とみられる場合もあります。聖家族の作品は15~17世紀のルネサンス、バロック時代に描かれ、今日でも数多くの作品が残っています。
では、聖なる息子とご両親、聖人達が集まった聖家族の絵画13点をご覧ください。
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「ラファエロ・サンツィオの工房作 1518年」
聖母マリアに抱き付こうとするキリストを中心にして、幼いヨハネ、
その母エリザベト、天使さん×2名(?)、ちょっと仲間外れ気味で
つまらなさそうなヨセフが描かれています。みんなキリストの
存在を祝福しているようですね。

「ヘラルト・ダヴィト作 1529年」
フランドルのこの作品は息子とご両親のみを描き、「ザ・聖家族!」と
いった感じですね。ヨセフお義父さんはリンゴとお椀を持って、
息子の気を引こうと奮闘中。

「フランドルの画家作 1520年」
マリアのお乳をもらって満足げなキリストと、聖書らしき本を読んで
いる聖バルバラさん。彼女は依頼人の守護聖人だったのかしら?
のんびりとした雰囲気がある中、お義父さんを仲間外れにしないでー!

「アンドレア・デル・サルト作 1529年」
こちらは牧歌的な感じではなく、「世界を担っている」という責任
めいた雰囲気がありますね。キリストとヨハネが持っている球体は
「世界」の象徴です。お義父さんの存在が取って付けた感がある・・・。

「Nosadella (Giovanni Francesco Bezzi)作 1530-71年」
怪しげ(?)な目線を向けるマリア&キリスト。父は天を仰いでいます。
作品によって洗礼者ヨハネの年齢がバラバラですね。
ルカの福音書によると、キリストとヨハネの年齢はわずか6か月
しか離れていないそう。このヨハネさん育ちすぎちゃいましたね!

「アーニョロ・ブロンズィーノ作 1540年」
すやすやと穏やかに眠るキリスト。マリアもヨセフも美しく鮮やかな
タッチで神秘的な家族を描いています。というよりも、洗礼者ヨハネが
気になる・・・!恐らく祝福しているのだろうけど、気になる・・・!

「ピーテル・パウル・ルーベンス作 1609年」
皆が笑顔でほっこりと心温まる聖家族ですね。
和気あいあいとした家族団欒が、「理想的」な家族だという
ルーベンスの考えなのでしょうかね。キリストとヨハネは、
聖霊の象徴である白鳩で遊んでいる・・・訳ではないと思う!(笑)

「ヤーコブ・ヨルダーンス作 1616年」
聖家族と共に羊飼い二名が描かれた作品。羊飼いはキリストが
誕生した時にお祈りに来たという記述があり、その影響だと思われ
ます。作品の依頼人は自らを一般人の羊飼いとなぞらえて、
聖家族と一緒にいたいという思いから描いてもらったのでしょうかね。

「バルトロメ・エステバン・ムリーリョ作 1617-82年」
こちらは世俗的な家族の雰囲気を一切排し、神と聖霊、キリストの
三位一体が表された聖家族となっています。
天上での家族は神と天使達、地上での家族は聖母と義父といった
感じなのでしょうか。

「カルロ・ドルチ作 1630年」
こちらも三位一体が表現された聖家族。キリストを幼子として描く
作品が殆どである中、こちらのキリストは立派な大人になって
いますね。何回見ても、生首と翼のケルビム(セラフィム?)は
ちょっと不気味です・・・。

「Joseph Paelinck 作 1781-1839年」
色が柔らかくて美しい作品でついつい見とれてしまいます。
マリアとヨセフの年齢が離れすぎているのは他の作品でも見られる
現象ですが、ヨハネとキリストの年齢が離れすぎのような!?

「デニス・カルヴァルト作 1590年」
聖家族を祝福したすぎて、天使さん達が大挙して押し寄せてしまった
作品。右側の天使さんの腕がマッチョすぎて、果物を投げ付けようと
しているようにしか見えない私は、罪深き人間なのか・・・。←ぇ

「セバスティアーノ・デル・ピオンボ作 1507-8年」
聖家族を祝福する為に、アレクサンドリアの聖カタリナと、
依頼人(手前の人)、聖セバスティアヌスが縛られて矢に刺さったまま
やって来ました。この二人の聖人は依頼人の守護聖人なのかしら?

イエス・キリストと聖母マリア、ヨセフ、洗礼者ヨハネ、マリアの母アンナにヨハネの母エリザベト。それに羊飼い。彼等は同じ時系列に生き、聖書内には記述はありませんが集まって家族だんらんをしていても現実には違和感ありません。しかし、聖バルバラ、アレクサンドリアの聖カタリナ、聖セバスティアヌスはもっと後の時代の聖人であり、実際に出会うことは難しいです。絵画の依頼人(パトロン)はなおさらそうです。
そのような現実的な目線を排し、時系列も地域も天上も地上も気にせずに作品が描かれているのは、やはり「聖家族」のテーマの根本に、願いや祈りが込められているからなのだと私は思いました。家族の理想形としての聖家族の表現もありましたが、やはり宗教の崇拝の対象として、現世を越えた「奇跡の存在」として彼等を捉えているのだなと感じます。
世俗から離れた神聖さを前面に出した作品なのに、ところどころ突っ込みたくなる箇所があるのは、時代や国による価値観の違いなのか、はたまた画家のお茶目さなのか・・・。そんな気になる部分があるのも、絵画の魅力の内の一つですね!^^
→ エジプトの逃避についての絵画を見たい方はこちら
→ 聖母子像についての絵画を見たい方はこちら
→ アレクサンドリアの聖カタリナについての絵画を見たい方はこちら
→ 聖セバスティアヌスについての絵画を見たい方はこちら
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>> 美術を愛する人様へ
マッチョだし、マリア様の手の向きや腰の捻り方などマニエリスム全開!って感じですよね^^