Nicolas Poussin 1635-6 -

 ヴィーナスの誕生は、ギリシャ神話の女神ヴィーナス(アフロディテ)が誕生する場面の事を指します。
 ヘシオドスの「神統記」によると、地母神ガイアは末子クロノスに鎌を渡し、夫である原初の王ウラノスの急所を切り落とすよう命じました。クロノスは父親の部分をざっくりと切り、この時流れ出た血から復讐の女神や巨人、精霊らが生じます。そして海に漂流していたその物の周囲に泡が集まり、泡から生まれたのがヴィーナスとされています。愛と美を司るヴィーナスとはいえ、物凄い産まれ方をしていますね・・・^^;

 漂流していたヴィーナスに西風ゼピュロスは魅せられ、彼女をキュテラ島やキュプロス島に運びました。島に上陸したヴィーナスは季節の女神ホーラ達に見つけられて衣装や飾りを付けられ、オリュンポス山へと行ったとされています。女性美を象徴する女神の誕生という主題は、ボッティチェリの代表作を筆答に何名かの画家によって描かれています。
 では、多くの海の神々に祝福されながら、どんぶらこっこと海を流れるヴィーナスの誕生の絵画13点をご覧ください。

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「ポンペイの壁画  2世紀」
1800年以上も過去のポンペイの壁画に描かれています。
シャコガイのような巨大な貝に横たわるヴィーナス様。
右側の羽が生えた少年はおそらくキューピッド(クピド)。
鎌らしきものを持つ左の人物はクロノスなのかしら・・・?
The Birth of Venus. From Pompeii. Second Century AD

「サンドロ・ボッティチェリ作  1485年頃」
美術の教科書に必ずや載っているであろうボッティチェリの代表作。
シャコガイ(?)の上に立ち、恥じらいを持って手と髪で隠しています。
ゼピュロスが運び、ちょうど島へと到着したようですね。ホーラさんが
衣服を着せてあげようとしています。
Botticelli Birth of Venus

「フィレンツェの工房作  16世紀後半」
コントラポストで貝に立ち、手で隠すという行為はボッティチェリに
似ているものの、あまり隠せられていませんね・・・。
怪魚の顔が可愛いですね^^
Florentine School, late 16th

コルネリス・ド・フォス作  17世紀」
島に上陸した女神様。左の老人は海を司るネーレウス、女性は
ニュムペーなのかな?奥の男性はほら貝で歓迎しています。
この画家さんはルーベンスのお弟子さんだったようで、かなり
ルーベンスに近い作風をしていますよね。
Cornelis de Vos - Nacimiento de Venus 17th

「二コラ・プッサン作  1635-6年」
プッサンのヴィーナス様は数多の神々に大歓迎されていますね。
大パレードを催しているかのような状態です。左側の青いマントの
おじさんは海馬と三又の槍なのでポセイドンでしょうか。
Nicolas Poussin 1635-6

ジャン=バティスト・マリー・ピエール作  1714-89年」
貝に乗ってのんびりと航海中のヴィーナス様。
こちらは誕生したばかりで漂流しているというより、どこかの
女王様が
他国見学へと移動している最中のようです。直射日光が
当たらないよう、キューピッド君は布を懸命に掲げてます。
JEAN-BAPTISTE MARIE PIERRE

ジャン=バティスト・マリー・ピエールの追随者作  18世紀」
こちらは貝と西風ではスピードが足りなかったのか、ヴィーナス様
自らが謎の魚二匹を操縦中のようです。
Jean-Baptiste Marie Pierre (attr) The Birth of Venus 18th

ノエル・ニコラス・コワペルの追随者作  18世紀」
貝だと固くて寝心地が悪かったのか、ベッドにリメイクしてしまった
ようです。操縦はキューピッドに任せ、寝ている間に島に到着です。
(島は噴火している最中のようですね)
attributed to noel nicolas

フランソワ・ブーシェ作  1703-70年」
ロココらしい、華やかさが前面に現れた誕生。
それにしてもヴィーナス様の腰かけ、
岩肌が波に隠れているのか、
はたまた波が椅子として機能しているのか・・・。
François Boucher

ジャン・オノレ・フラゴナール作  1753-55年」
ブーシェに並ぶ、ロココの巨匠フラゴナールもこのテーマを描いて
います。ヴィーナス様はお部屋でくつろぐかのように波間を
漂っております。海の波と泡がもっふもふのお布団みたいになって
いるのでしょうかね。
1753-55  Jean-Honore Fragonard

Eduard Steinbrück 作  1846年」
三位一体を彷彿とさせるような(四かしら?)、一風変わった
ヴィーナスの誕生。美と愛の女神なのでセクシーな感じですが、
人物や天上を見上げる構成など、宗教画のようにも感じます。
1846 steinbruck eduard

ウィリアム・アドルフ・ブグロー作  1879年」
セクシーなお姿を惜しげもなく晒したヴィーナス様。
(載せてもいいか迷ったけど載せちゃいました^^;)
二頭のケンタウロスやキューピッド、ニュムペーらが祝福中です。
- William Bouguereau Birth of Venus 1879

「ギュスターヴ・モロー作  1866年」
モローのヴィーナス様に派手さはなく、静かに上陸したようです。
ただ島の住人のような人々に崇められております。
「豊穣と美のヴィーナス信仰」そのものを描いたという感じでしょうか。
The Birth of Venus by Gustave Moreau 1866

 ギリシャ神話は様々な逸話の複合体であり、時系列を間に受けてはいけないと思うのですが、ヴィーナスが誕生したのはクロノスの幼少期時代ということになります。クロノスはゼウスを含む6名もの神々の父親であり、という事は、ヴィーナスはゼウスやポセイドン、デメテル、ヘラ、ハデスなどの神々よりも年上という事になってしまいます。(もしかしたらウラノスの部分から泡が生じ、ヴィーナスが生まれるまで凄い年月がかかったかもしれませんが・・・。それでも画家達がおじさんのポセイドンやケンタウロスを出現させているのに、違和感を覚えてしまうような気がします)

 これらの絵画を見る限り、画家達はヴィーナスに幼少期は存在せず、いきなり大人の美女の姿で出現すると考えられていたようです。ゼウスやアポロン、アルテミス、ヘルメス、アテネらは様々な誕生の仕方こそあれ、男女の間から生まれて幼少期が存在します。ヴィーナスは他の神と比べてもかなり特殊な産まれ方をしていますよね。(これまた西風が見つける間の漂流中が、かなり長かったという可能性もあり得なくはないですが・・・)
 他の神々より年上であり、更に特殊な産まれ方と成長の仕方をした。これらはヴィーナスの起源がギリシャ神話よりも更に古い女神様であるという名残なのかもしれませんね。

→ パリスの審判についての絵画を見たい方はこちら
→ ヴィーナスの愛人アドニスについての絵画を見たい方はこちら
→ 化粧するヴィーナスについての絵画を見たい方はこちら


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