John William Waterhouse - The Lady of Shalott 1888 -

 シャロットの乙女は、愛の為に外へ出たものの呪いによって命を落とした悲劇の物語です。
 19世紀の詩人アルフレッド・テニスンの詩によると、シャロット姫は外の世界を直に見ると死ぬという呪いがかけられていました。外は鏡を通してでしか見られず、彼女は毎日室内で織物をしていました。そんな生活に飽き飽きしていたある日、シャロットは歌声を聞きます。声に惹かれ、つい彼女は外を覗いてしまったのでした。川のほとりにいたのは、イケメン騎士ランスロット卿。その時、呪いは発動し、鏡は割れ、織物は飛び散って糸がからまってきました。シャロットは苦しみながらもランスロット卿を追って、船に乗って岸を目指しました。しかし、対岸のキャメロット城についた時には、彼女はこと切れていたのでした。

 この物語は「アーサー王物語」のアストラットのエレインの影響があるとされています。
 ランスロット卿と出会い恋に落ちるエレイン。彼は身分を隠して槍試合に参加しようとしていた為、エレインは兄の武具を貸します。その時に「愛の印として赤いスカーフを付けてください」と頼み、彼は変装するには丁度いいと思って付けることにしました。試合で瀕死の重傷を負ってしまったランスロット卿をエレインは看護し、愛は結ばれるかと思いきや。傷が癒えたランスロット卿はエレインを捨て、宮廷へと帰ってしまったのでした。悲しみに暮れたエレインは恋煩いで衰弱し、息絶えてしまいます。エレインの遺骸は悲恋を書いた手紙を持ち、小船に乗ってキャメロットの対岸へと流されたのでした。アーサー王や円卓の騎士らは彼女を発見して涙を流したのでした。
 では、シャロットの乙女とアストラットのエレインについての絵画13点をご覧ください。

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シドニー・メトヤード作  1913年」
シャロット姫は外を直接見たら死ぬという呪いがかかっていました。
窓があっても覗くのはNG。鏡と機織りだけが生活の全てでした。
鏡にカップルが映り、いちゃついているのを見て彼女は呟きます。
「もう、影のような生活には疲れたわ」と。
I am Half-Sick of Shadows Shalott Sidney Meteyard 1913

「ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス作  1915年」
こちらも「影のような生活には疲れた」と感じるシャロットさん。
こちらは生活に倦んでいるというより、外に憎しみすら覚えて
いるように思えます。ずっと機織していたらそうなりますよね・・・。
John William Waterhouse 1915

「ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス作  1894年」
ある日、シャロットは男性の歌声を聴きます。気になった彼女はつ
い窓から覗いてしまったのでした。
川のほとりにいたのは円卓の騎士の一人ランスロット卿。
John William Waterhouse 1894

ウィリアム・マウ・エグリー作  1858年」
シャロットはたちまちイケメンの彼に惹かれたものの、
無情にも呪いが発動してしまいます。命はあとわずかです。
後ろの窓にランスロット卿がいる!と思ったら鏡なのかな?
William Maw Egley 1858

ウィリアム・ホルマン・ハント作 1905年」
こちらも呪いが発動してしまったシャロットさん。
外にはランスロット卿がおり、糸が襲ってくるがごとくからまって
います。それにしても髪の毛がもっふもふ・・・!
William Holman Hunt's The Lady of Shalott (1905)

「アーサー・ヒューズ作   1873年」
シャロットは慌てて外出し、小船に乗ってランスロット卿が住まう
キャメロット城がある対岸を目指します。しかし、彼女は途中で
命が尽きてしまったのでした・・・。白鳥が寄りそっておりますね。
Arthur Hughes. The Lady of Shalott. 1873

「ウォルター・クレイン作  1862年」
こちらは静かに息を引き取るシャロット姫。何故そんな呪いが
掛けられたかは分かりませんが、これは「女性は家にいなければ
ならない」という男尊女卑的なしきたりが関係していそうです。
The Lady of Shalott, 1862  Crane, Walter

「G. E. Robertson 作  1864-1911年」
対岸の街に着いたものの、既に事切れていたシャロット姫。
たった一人で小舟に乗った美女が亡くなっていたとか、発見した
住民は大パニックですよね・・・;
G. E. Robertson

「ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス作  1888年」
シャロットの乙女の作品を三枚描いているウォーターハウス。
最も有名な作品ですが、意外にもこれが一番古いのですね。
シャロットは自らの運命を悲しみつつ、一縷の望みに縋って
小船を走らせ始めたようですね・・・。
John William Waterhouse - The Lady of Shalott 1888

ジョン・アトキンソン・グリムシャウ作  1836-1893年」
この作品はシャロットの乙女とも、アストラットのエレインとも紹介
されていました。頭の下を見ると百合が置かれており、エレインは
「百合の乙女」という表記がある為にエレインなのかなと思います。
ランスロット卿に裏切られた彼女は悲恋の末に川にたゆたう・・・。
The Lady of Shalott elaine John Atkinson Grimshaw19th

ブリトン・リヴィエール作  1840-1920年」
従者と思われる男性がいたわしげに見つめています。
手元には手紙と百合の花が。
天蓋付きの船なので、突然の雨にも安心ですね。

Elaine Floats Down to Camelot” by Briton Riviere

ソフィー・アンダーソン作  1823-1903年」
こちらも立派な布に包まれ、百合を持ってエレインは永遠の
眠りについています。櫂を持つ老人は悲しみのあまりうなだれて
いるようです。
Elaine, or the Lily Maid of Astolat” by Sophie Anderson

ポリー・クラーク作  1864-1917年」
対岸のキャメロットへ着いたエレイン。彼女の死の真相を知った
アーサー王や円卓の騎士らは深く悲しんだのでした。
Elaine” by Pollie Clarke

 シャロットの乙女は「ランスロット卿を追いかけたが、呪いにより命が果てる」というファンタジーな感じになっていますが、アストラットのエレインは「ランスロット卿に置いて行かれ、失恋の末に命が果てる」という男女のすれ違い感がありますね。ランスロット卿にも色々と都合があったかもしれませんが、その気がないなら赤いスカーフつけずに、最初からお断りしようよ。思わせぶりにするからエレインさんの絶望が深くなっちゃったんだよ・・・。と個人的には思ってしまいます。

 男性に冷たくされたが故に、悲しみの末に狂気に陥り命を落としてしまうと言えば、「ハムレット」のオフィーリアが思い浮かびますね。オフィーリアは狂気故に足を滑らせ、溺死してしまうのですが、水辺でゆっくりと亡骸が流れていく場面は、アストラットのエレインに通ずるものがあります。
 もしかしたら、シェイクスピアはアーサー王伝説を参考にしていたのかもしれませんね。(あるいは、ゲルマン系民族(ケルトもかしら?)は水葬(船葬)をしていたので、その関連性によるものかもしれません)

→ オフィーリアについての絵画を見たい方はこちら


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