
二つの長い耳がぴんと立ち、もふもふとした愛らしい姿をした兎。
古代の時代より兎は狩られる運命にある動物でした。自然世界と人間社会、いずれにおいても兎は格好の獲物とされ、肉食獣や狩猟犬、人間の武器に追われて逃げ回るばかりでした。食物連鎖の位置づけはお世辞にも高い方とは言えません。
そんな可哀想で弱い立場の兎ですが、西洋の中世彩飾写本の世界では様子が一変します。ペストや戦争、暴虐、裏切りが横行して混乱していた時代、「皮肉に満ちたあべこべな世界」が写本に描かれました。代表的なのが、「兎が狩猟犬や人間を攻撃し、虐げる」というテーマなのです。狩られる側の兎が狩る側に回る。
いつかは強者と弱者の立場が逆転するかもしれない、という皮肉が込められた、凶悪な兎の作品13点をご覧ください。なお、画像の詳細は判然としなかったので未記入とさせていただきました。ご了承ください。
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寝転んでいる犬の頭上へ振り下ろされる棍棒。
兎さんは日頃の恨みを笑顔で晴らそうとしておりますね。

猟犬に弓矢を持ってまでして対抗するいかつい兎。
「お前らが狩るなら俺も狩ってやるぜ!」という意気込みが感じられます。

犬VS兎の戦争が繰り広げられています。兎は籠城して投石、
犬は陥落させようと弓と槍で応戦。双方の仁義なき戦いは続く。

これはなんか意味の分からないカオス作品(笑)
兎に乗った犬とカタツムリ爺さんに乗った兎が戦闘中。
食物連鎖どころか生態系までぶち壊しております。

完全に猟犬を手懐けた兎。すでに歴戦の勇士の表情です。
それよりも兎の右手にあるカタツムリ?エビ?のような物が気になる。

抵抗する人の頭を踏んづけて憎しみを表現中。
目玉が三白眼になっており、いっちゃっている感が出ていますね(笑)

角笛をぷっぷーと吹いて勝利の凱旋。戦利品として手に入れたのは
人間です。恨みのあまり人間以上に育ってしまった・・・!

人間をひっとらえて、なにやら裁判のようなものを行っている
ようです。この表情からすると有罪確定のような気が・・・。

やっぱり!棍棒を持つ兎に今にもやられてしまいそうです。
心臓を指さして、「ズドンといっちまおうぜ」と会話しているの
でしょうか。剣帯を付けてガラの悪さ100%です。

ぎょろ目の兎さん。人間を木に縛り付けて、枝で暴力を働いている
ようです。ん、ちょっと待って。
右側の兎さん、足を剥いでいませんか!?

遂に殺人事件を犯してしまった兎さん。自分の背丈以上の剣を
使い、人間の首をばっさりです。こんな凶悪兎がいたら怖すぎます。

王冠を被る王のような老人に向かい、斧を持ち飛ぶ兎。
ジャンピングキラーラビットすぎる!

「ヒエロニムス・ボス作 快楽の園の地獄部分 16世紀前半」
奇才の画家ボスもキラー兎を描いています。人間がぶら下がる
槍を持ち、角笛を吹く兎。これらの彩飾写本を参考にして描いた
のかもしれませんね。この兎さん、顔は可愛いです^^

日本に「下剋上」という言葉がある通り、上下関係は儚いものでいつかは覆されます。虐げられた奴隷や農民は自由を求めて蜂起します。自分では「兎」と思っていた弱者に刃を向けられ、地位を壊されるのです。
彩飾写本の兎たちはいずれもシュールで、私はジャンピングキラーラビットの表情の凶悪さに笑ってしまった(すみません)のですが、これらの兎は「いつかは立場が逆転する」という皮肉だけではなく、その裏に虐げられてきた者達の心の叫び、怒り、恨みが込められているような気もしてしまいます。
・・・と書きましたが、やっぱり兎が凶悪すぎて絶妙な面白さを感じてしまいます^^;
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>> 西洋美術好き様へ
こんばんは。
鳥獣戯画も面白いですよね^^
中世美術の魅力を知らないのは、本当にもったいないと思います。
おっしゃる通り、中世=暗黒時代というイメージはつきまとっていますね。私もかつてはそう思っていました…。
中世とひとくくりにされた時代は長きに渡りますし、様々な様式や作風があります。
写本の美しさ、面白さは他にはない魅力に満ちています。フレスコ画やモザイク画も象徴性にあふれて素敵です。
日本のみんなにもっと伝わりますように!