Luciano Nezzo (b.1856) -

 キュイーンと鳴り響く高音。歯に当たる振動と鈍い痛み。何をされているのかが見えない恐怖。うっすらとした血の味・・・。「歯医者は嫌い!行きたくない!」という人は多いのではないでしょうか。かく言う私もできる事なら行きたくありません^^;
 技術や麻酔が普及した現代でも恐いのに、知識が乏しく麻酔もなかった時代の歯の治療には、それ以上の恐怖があります。(氷やアルコールによる苦痛の軽減といった事はあると思いますが、やっぱり痛いと思います)虫歯や歯茎の病気による抜歯の痛みは想像を絶しますね・・・。医師免許がなかった時代なので、理髪師が歯科を代行していたり、抜歯専門で街を渡り歩く医者もいたそうです。その処置はいい加減なものが多かったようで、「無事な歯までもがやられてしまう」という本末転倒な結果になった者がいたとか・・・。
 西洋絵画には、立派な格好をした歯医者もいれば、その恐怖を裏付けするかのようなやぶ医者の如き歯医者も描かれています。
 では、歯医者にまつわる絵画12点をご覧ください。

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ヘラルト・ドウの追随者作  1613-75年」
少年の歯を持ち、得意げにこちらを見る歯医者の老人。
少年の顔も痛々しげではなく、「私の治療は痛くなく上手だよ」と
アピールしているようですね。肖像画&宣伝目的で描いたのでしょうか。
Gerrit Dou, follower of 1613-75

アンドリーズ・ボス作  1611–41年」
「あんた、もうちょっとだよ」「お父ちゃんがんばれ!」と父の治療を
家族が見守っているようです。現代では家族は待合室で待機
ですが、当時は一緒にいれたのですね。こちらの方が安心ですが、
歯医者の表情と手の突っ込み方が安心できませんね・・・。
Andries Dirksz Both 1611–41 (after)

「作者不詳  18世紀頃」
絶対やぶ医者だろう!と思わせる、うさん臭さ満々な歯医者。
患者の前歯を巨大なペンチで引き抜こうとしています。
このままだと彼の歯が全部なくなってしまいそう・・・^^;
18th century Painting of A Blacksmith Extracting a Tooth

「Jan Miense Molenaer 作  1610-68年」
嫌がる少年(?)の歯を調べる立派な衣服を着た歯医者。
外で行っているということは抜歯専門の者かもしれません。
赤い服の女性は母親でしょうか。素手で歯がスポーンされそうです。
Jan Miense Molenaer, Dutch 1610-68

「ヤン・ステーン作  1651年」
こちらも外で公開クリニック中。痛みのあまり靴下が垂れ下がり、
断末魔を上げそうな少年。他の子供達は珍しそうに見守っています。
「これを受けたくなかったらきちんと歯を磨きな!」という親の脅しが
てきめんに効きそうですね(笑)
A Tooth Puller by Jan Steen  1651

「イタリア出身の画家作  18世紀」
貴族のご婦人の前歯だってペンチで治療しちゃいます。
歯医者のエセっぽい表情と、夫人の白目感がじわじわ来ます・・・。
18th Italian Painting Entitled At the Dentist

ヨースト・ファン・カースベーク作 1608-62年」
お婆様の下歯だってペンチで治療しちゃいます。
年齢により歯茎が痩せて歯がぐらついてきてしまう事があるので、
歯医者にかかる年配は多かった事でしょう。痛そうです・・・。
Joos van Craesbeck 1608- circa 1654-62

テオドール・ロンバウツ作  1597-1637年」
バロック的な劇的な配置で歯医者を描きました。
青年の歯の治療をカメラ目線で得意げにアピール。プライバシーが
現代より低かった時代、歯の治療を何名ものギャラリーが
見ていたと思うと、痛いに恥ずかしいも加わりますね・・・。
after Theodor Rombouts 1597-1637

ヘラルト・ファン・ホントホルスト作  1622年」
暗黒主義的な明暗を用いていますね。歯医者は優しく朗らかな
表情をしており「痛くないよ~♪」と言っているようですが、患者は
物凄く痛そうな表情をしています。
痛かったらあげてねという右腕を掴んで阻止している!?←ぇ
Gerrit van Honthorst 1622

「S. Cox 作  19世紀頃」
男性が治療を受けている時に、お迎えの者か次の患者が
来たようです。真面目に仕事をしているようですが、犬が放し飼い
で吠えているし、足元で壺が割れていませんか・・・?
S. Cox (active mid-19th C) (attributed to)

「Luciano Nezzo 作 1856年」
老婆と思われる者がうら若き女性の歯を見ています。
背中に隠しているのは「鍵」。どうやら抜歯器として使うようです。
引っかけて引っぱって抜く気ですか!?痛そう!
Luciano Nezzo (b.1856)

アーネスト・ボード作  1846年」
麻酔なしで行われていた歯科は、19世紀前-中頃に麻酔が登場する
ようになります。彼は歯科医のウィリアム・T・G・モートンさん。
笑気(亜鉛化窒素)麻酔の実験を重ねた後、初めてエーテル麻酔での
手術に成功したとされています。患者は穏やかな表情ですね・・・。 
Ernest Board

 現代では「虫歯」はズボラで不潔という負の印象を与えがちですが、15-6世紀の西洋では虫歯は「金持ち」のステータスであったそうです。この時代に高価な砂糖の需要が増え、虫歯になる貴族が増えました。「高価な砂糖を食べる事ができる=虫歯になる=金持ち」という考えであるそう。金持ちに見られたい者が虫歯になりまくり、歯を痛めて歯医者に駆け込めば、歯医者は大儲けで笑いが止まりませんね^^; 歯医者が「若様は虫歯が多くていらっしゃるから、さぞかし豪華なお食事をされているのでしょうね!」なんてお世辞を言えば、更に調子に乗って虫歯を増やすという悪循環。
 中世~バロックの宮廷と言えば華やかで麗しいイメージを抱きますが、現代の私達がタイムスリップをしたら、あまりの常識のズレと不衛生な状況に絶句してしまいそうです・・・。



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