
瀉血(しゃけつ)というのは、病気を治す為に身体に溜まった有害物を排除しようと、血を抜くという治療法です。中世、近世のヨーロッパやアメリカで盛んに行われました。
医学的知識が乏しかった当時、どんな病気であっても「身体から膿(うみ)を出すように、血を出せば治る!」と思う医者が多かったようで、熱や下痢など、なんでもかんでも瀉血を施したそうです。発祥はギリシアからとされており、怪我や打撲、骨折の部分を切開し炎症をなおしたり、頭痛が起こるとこめかみを切開して痛みを軽減させようとしました。衛生的にも不十分であったため、感染症を引き起こしたり、瀉血のしすぎで患者を弱らせ、絶命させる原因になったりしたそうです。
一部の治療法には有益ですが、「瀉血をしたら病気が治る」という医学的な根拠はまったくありません。それでも当時の人々は瀉血を信じ、病気を治そうと医者に血を抜いてもらいに行っていたのです。
では、瀉血に関する絵画12点をご覧ください。
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「作者不詳 1675年の挿絵」
腕を縛って血管を浮き立たせ、勢いよく瀉血を行っています。
小鉢二杯分ですと、相当の血の量ですよね・・・。

「作者不詳 16世紀の木版画」
顔を背けて瀉血を耐えるご婦人。血を入れるお盆を、患者の
膝の上に乗せるなんて、現代では考えられませんよね。
こぼしてしまったらどうするのだろうか・・・(震)

「Jan Baptist Lambrechtsの追随者作 18世紀」
「痛いわねぇ」と不機嫌そうなご婦人。麻酔がない時代に、
血が流れるほどの傷をナイフでつけられるのですから、相当
痛かったことでしょう。

「エフベルト・ファン・ヘームスケルク作 1634-1704作」
血がめっちゃ飛んでます!
素人目から見ても、医者がやぶっぽいし、血出しすぎだし、
衛生悪そうだしで、この治療法はヤバいと思うのですが、
当時は当たり前の光景だったのでしょう。

「英国出身の画家作 1750-90年」
具合が悪そうな裕福な女性が瀉血中。かかりつけの
医者と思われる男性が「瀉血したからもう大丈夫」と言った
感じに微笑んでいます。貧血になっていませんか・・・?

「フランドル出身の画家作」
調度品に囲まれた治療室で、女性が瀉血中。血のお盆を持つ
子供が「いぇい」ってカメラ目線ですねw
後ろにいるのは次の患者でしょうか。

「Jacob Toorenvliet 作 1666年」
カップ二杯分と思われる瀉血を終えた女性。包帯を巻いて
清潔そうな対応に感じられるのですが、わんちゃんがいる
時点で、衛生管理が恐ろしいです。

「Matthijs Naiveu 作 1647-1726年」
他の絵画では女性患者が多い中、肩近くから瀉血を施される男性。
怪我由来の瀉血なのでしょうか。

「エフベルト・ファン・ヘームスケルク作 1634-1704年」
「うちの診療所は繁盛してますよ」というPR絵画である
かのような作品。手前では瀉血、後ろは足の治療を行って
います。また新しく患者が現れ、会計の青年も忙しそうです。

「Quirijn van Brekelenkam 作 1660年」
おばあちゃんから瀉血してもらう女性。二人の表情が真剣で、
「この治療法は効果がある」と双方とも信じ切った感じですね。

「ペルシャの写本の挿絵 18世紀」
西洋やアメリカだけではなく、東洋ペルシャでも瀉血は
行われていたようです。
顔色の悪い人から血をボール一杯分くらい抜いています。

「ジェームズ・ギルレイ作 1804年」
顔が、顔がちょっと面白い・・・^^;(失礼)
瀉血は18世紀以降に廃れていったようなので、これは風刺画
なのかもしれませんね。

「有害なものを取り出せば、病気は治る」という思想の瀉血。言葉だけ見れば、理にかなっていると感じられますが、それを「血」で全て括ってしまったことが暴論になってしまったのでしょう。
瀉血は古代ギリシアの医者ヒポクラテスの唱えた「四体液説」にも影響を受けています。四体液説は人体の基礎は四つの体液で成り立っているという思想で、体液のバランスが崩れると病気になるとされていました。そのバランスを治す為の手段が瀉血なのです。
私達は現在、恐ろしいウイルスに直面しています。現代の医術を以てしても、まだ解明しきれていません。それに対抗があるワクチンも有効性は証明されていても、今後の副作用についてはまだ何とも言えません。瀉血のように身体を弱らせてしまうかもしれない可能性だってあるのです。長い目で見て、身体に優しいワクチンであったらいいなぁ・・・と願うばかりです。
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>> オバタケイコ様へ
石鹸で洗うとしみそう…。
魔法が効いて良かったです(笑)
良くなってきても、いっばい歩くのは控えてください~。安静第一です(´ω`*)